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15歳からのリーダー養成講座

2024.07.31 公開 ポスト

結論を出すのはNG! あなたのブレストが失敗する理由工藤勇一(横浜創英中学・高等学校前校長)

「いいリーダー」には誰でもなれます。生まれつきの才能はいりません。人気者でなくても大丈夫です。でも、リーダーになる人が必ず知っておかなくてはならない、とても大切なことがあります。それは……。数々の大胆な学校改革を実現し、各界からその手腕が注目される工藤勇一さん。生徒たちに自ら「リーダーシップの基本」を講義した特別授業を書籍化した『15歳からのリーダー養成講座』から一部を抜粋します。

「ブレスト」で大量のアイデアを集める

アイデアは、一人で悩んでいてもあまり出てきません。だからこそ、手段を考えるときは、できるだけ多くの人からアイデアを募ることが大事です。そうすると、リーダーが想像すらしていなかった、いいアイデアが出てくることがあります。

では、どうやってチームのメンバーからアイデアを引き出し、それをどうまとめたらいいのでしょうか。

学校では、「いいアイデアがあったら手を挙げて発言してください」といった形になりがちですが、もっと効果的な方法を覚えましょう。「ブレスト(ブレインストーミング)」と「KJ法」です。

アイデアを集めるときに使うのがブレスト。出てきたアイデアを整理するときに使うのがKJ法。基本的にセットで使うことがほとんどです。

 

実際の講座では、グループに分かれて何か発表してもらうときは、毎回この方法を使っています。ちなみにこれは、アイデア集めに限らず、チームが抱えている課題を洗い出そう、といったときも使えます。

 

ブレストのやり方は簡単です。

まず付箋ホワイトボードを用意します。付箋は参考書などに目印をつけるときに使う小さいものではなく、正方形のメモ帳サイズのものを用意してください。

そこに、その場にいる全員にアイデアを書いてもらいます。アイデアひとつにつき1枚。一人何枚でもいいです。5分や10分と時間を区切ると、みんな集中して書いてくれます。

書き終わったら、各自でホワイトボードに貼っていきます。どこに貼ってもかまいません。

ここまでは超簡単ですが、ブレストには4つのルールがあります。リーダーの役割はそのルールを全員にちゃんと伝えること、そしてルールが守られるように、その場をコントロールすることです。

 

ブレストのルールは次の4つです。

1 結論厳禁。人のアイデアを否定しない

2 自由奔放。何を書いてもOK!

3 質より量。とにかく多く!

4 結合改善。相乗り・付け足しOK!

2、3、4で共通しているのは、とにかく何でもアリで、できるだけ多くのアイデアを集めるのが大事ということです。考えが深い浅いは関係なし。善も悪も関係なし。実現できるかどうかも関係なし。少しでも多くアイデアを集めるのがブレストの目的です。

その場で何となく思いついたことでもかまいません。それを見た人が何かひらめいて、もっといいアイデアを思いつくかもしれないからです。それが4ですね。「このアイデアいいな」と思ったら、そこにどんどん乗っかってアイデアを付け足していっていいのです。

ブレストは「結論を出す場」ではない

はじめてブレストを経験すると、多くの人は、「ああ、アイデアを出さないといけないのか」と焦って、ものすごく真剣な表情で考えた末に、「うーん……このアイデアはやめておこう」と、アイデアを引っ込めてしまいます。

それはブレストを、「結論を出す場」だと勘違いしているからです。「ここで出されたアイデアのどれかが選ばれるんだ……」みたいにかしこまって考えると、完成度の高いアイデアを出さないとマズいと思いがちです。

 

だから4つのルールで一番大事なのが1です。結論を出さないし、出そうとする行為も禁止することです。ブレストがあくまでもアイデアを集める場であることを、メンバーに繰り返し伝える必要があります。

結論を出さないというのは、人のアイデアを否定しないという意味でもあります。結論を出そうとすることは、それ以外のアイデアを切り捨てようとする行為だからです。出されたアイデアは、どんなものでも絶対にそのまま受け入れてください。

実際にブレストをしていると、司会役が「否定しないでください」と言っているのに、「誰が書いたんだよこれ!」と怒り出すなど、人のアイデアにケチをつける人はいます。

そんな光景が普通になると何が起きると思いますか。みんな、自分が否定されたり、その場の空気が悪くなったりするのが怖くなって、アイデアを出さなくなるのです。

 

でも実は、現実の会議はそれが普通だったりします。僕もいままで、いろいろな会議に出席してきたのでわかります。

ブレストの仕組みを導入せずにアイデアを募ろうとすると、みんな会議とは物事を決める場だと思っているので、ほとんどの人が黙ってしまうこともあります。そして残念なことに、一部の声の大きい人のアイデアだけが通っていきます。

こうした事態に陥らないようにする仕組みが、ブレストなのです。

 

もしそれでも、ブレスト中に人のアイデアを否定する人が出てきてしまったら、そこは司会役の人がぜんとした態度で、「反対意見があるなら代替案としてそれを付箋に書いて、ここに貼ってください」と伝える必要があります。

僕の経験上、意見対立が起きそうな雰囲気があったら、ブレストをはじめる前に、「反対意見の後出しも全然OKです」と言っておくと、感情的な反応を見せる人が減ります。

関連書籍

工藤勇一『改革のカリスマ直伝! 15歳からのリーダー養成講座』

結果を出せるリーダーになるための「基本の〈き〉」を身に付ける。 初めて部下を持つ人・チームを率いる人必読! 数々の大胆な学校改革を実現し、教育関係者だけでなく、経営者やビジネスパーソンからもその手腕が注目されるカリスマ校長・工藤勇一氏。工藤校長が、生徒たちに自ら「リーダーシップの基本」を講義した全8回の特別授業がついに本になりました。

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15歳からのリーダー養成講座

初めて部下を持つ人・チームを率いる人必読!
人はどうしたら動いてくれるのか。
迷ったときは、どう決断したらいいのか。
メンバーの対立はどう解消したらいいのか。
言いたいことはどうしたら伝わるのか。

数々の大胆な学校改革を実現し、教育関係者だけでなく、経営者やビジネスパーソンからもその手腕が注目されるカリスマ校長・工藤勇一氏。工藤校長が、生徒たちに自ら「リーダーシップの基本」を講義した全8回の特別授業を公開します!

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工藤勇一 横浜創英中学・高等学校前校長

横浜創英中学・高等学校前校長。1960年山形県鶴岡市生まれ。東京理科大学理学部応用数学科卒。山形県公立中学校教員、東京都公立中学校教員、東京都教育委員会、目黒区教育委員会、新宿区教育委員会教育指導課長などを経て、2014年から千代田区立麹町中学校長(~2020年3月)。教育再生実行会議委員、内閣府規制改革推進会議専門委員、経済産業省産業構造審議会臨時委員など公職を歴任。麹町中学校では、宿題廃止・定期テスト廃止・固定担任制廃止などの教育改革を実行し、教育関係者だけでなく、経営者・ビジネスパーソンの間でも注目を集める。初の著書『学校の「当たり前」をやめた。生徒も教師も変わる! 公立名門中学校長の改革』(時事通信社)は10万部を超えるベストセラーに。他に『麹町中学校の型破り校長 非常識な教え』(SB新書)、『学校ってなんだ! 日本の教育はなぜ息苦しいのか』 (鴻上尚史氏との共著/講談社現代新書)、『子どもたちに民主主義を教えよう 対立から合意を導く力を育む』(苫野一徳氏との共著/あさま社)など。

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