好書好日連載「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」が話題の清繭子さん、初エッセイ『夢みるかかとにご飯つぶ』刊行記念の特設ページです。
「小説家になりたい人~」の第1回でインタビューをした、芥川賞作家・市川沙央さんからのメッセージをどうぞ。
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清繭子を知っているか?
ある時は刺繍作家。またある時は雑誌の敏腕編集者。コップに1センチ飲み物を残す癖のある人(私もおんなじ癖がある)。毎日いつも力いっぱい家族を愛する2児の母。それから、そう、あの大人気連載の「小説家になりたい人」…… はたしてその正体は!?
清繭子なる人物から人生で初めてのインタビューを依頼された日、私は少しだけ、ためらっていた。新連載企画「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」の初回に文學界新人賞受賞者をとりあげるそうで、受賞者はたまたま私なんだけど、第一回目が私でいいのだろうか。私のプロフィール、ちょっと重くない……? だけど清繭子は私に話を聞きたいという。取材当日、シャカシャカしたフリルのきれいな装いで(私の小説の主人公が「シャカ」なのだ)現れた彼女は、朗らかな雰囲気であっというまに私をつつんだ。そして彼女は今まで誰にも語ったことのない私の話を、丁寧に一言も漏らさず聞いてくれた。とても自然で楽しいその時間が、彼女の手で一つの記事になって公開されると、私の背中には一夜にして羽が生え、バズバズと羽音を震わせて不思議な飛翔をはじめたのだった。
この業界で発売前重版という言葉にときめきを覚えない者はいない。市川沙央に初めてのときめきをもたらした彼女の名は、清繭子。デビューほやほやのウブな新人こと市川沙央を、一夜にして発売前重版作家へと押し上げた凄腕のライターこそ、清繭子だ。
本書を読むと、私に起きたすべてのことにも得心がいく。清繭子はそもそも市川沙央を重たがる人間じゃなかった。ずっと昔から、今も変わらず、清繭子は優しくてかっこいい人で、彩りゆたかな人生の中で生まれて育まれた柔らかくて真摯で軽快な文章の力が、読み手の心を何度もときめかせる。バズるべくしてバズる羽を、清繭子はたくさん持っている。その羽音は本書に綴られたエピソードの一つ一つでふくふくと笑わせられてしまう私たちの声に、とてもよく似ているだろう。
清繭子を知っている? まだ知らないなら今すぐ彼女のエッセイを読んでみて。するする読めて疲れなくて、むしろ疲れが飛んでいくほどおもしろいから!
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市川沙央
小説家。「ハンチバック」で第128回文學界新人賞受賞。同作で第169回芥川龍之介賞受賞。
夢みるかかとにご飯つぶ
好書好日連載「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」が話題の清繭子さん、初エッセイ『夢みるかかとにご飯つぶ』刊行記念の特設ページです。
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