1. Home
  2. 生き方
  3. アウトドアブランド新入社員のソロキャンプ生活
  4. スマホなんていらない

今回は新潟県の上方に位置する村上市へ行くことに。

かねてから訪れたかった瀬波温泉がある夕日の名所です。

 

久しぶりのプライベートキャンプに心が躍っていました。

お気に入りのキャンプ道具をパンパンに詰め込んだ、新潟でもっともダサいと噂されるボロボロの愛車でキャンプ場へ。運転席に乗り込み、ドアを閉めます。

 

ばん。

 

いつもとは違う、鈍い音。ドアに上着が挟まったようでした。

布が挟まれたにしては、音が大きいような気がするけど。おそるおそる上着のポケットに手をいれると、そこから出てきたのは……。

 

バキバキに割れ散らかしたiPhone。
 

iPhoneを破壊したボロボロの愛車。
 


リンゴが見事に下から齧られています。

もういやだ。もうキャンプへ行くのはやめよう。もう家で寝てよう。もういやだよ。

とはいえ、キャンプ場は予約してしまっているし、キャンプ飯の食材も買ってあるし、やめるわけにはいかない。

 

壊れかけの心をそっとはたいて、どうにか瀬波へと向かうことに。

 

おしりを齧られたリンゴが頭をぐるぐる。

放心状態でハンドルを握っていると、気づいたときにはキャンプ場に着いていました。チェックインを済ませ、設営地に足を踏み入れたときでした。

 

きらきらゆらぐ七色の青。

YUIの『SUMMER SONG』と、燦々とふりそそぐ陽光が水面でリフレインする。

 

齧られつくしたリンゴは水平線の向こう側へと飛んでいきました。

キャンプ場近郊の漁港で手に入れたのどくろを炭火で炙り、キンキンに冷えた地ビールで流し込む真っ昼間。

 

もうスマホなんていらない。

バキバキになったiPhoneを忘れさせてくれた日本海。


ちょうどいい機会だから、自然と共に生きよう。

スマホなんてなくても生きていけるでしょ。

 

日本一の夕日と言っても過言ではない瀬波の夕日を眺めながら、なんどもビールを流し込む。

 

時間の経過と共に、空の青と太陽の赤が溶け合い妖艶な紫が広がっていく。まさに魔法がかけられた夕空。

 

唇をつたい、喉から身体の内側へと流れ込んでくる冷たい感覚だけを、ただただ感じていた。

 

そうだ。

神奈川に住む母ちゃんに写真おくってあげよ。

 

あっ……。

LINEではなく、AppleのECサイトを立ち上げる。

新型のiPhoneをショッピングカートへ。ああ楽しみだな、新しいスマホ。

思わず母にも見せたくなった幻想的な夕空。

{ この記事をシェアする }

この記事を読んだ人へのおすすめ

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP