「VUCA(ブーカ)」の時代と言われる昨今。社会が急速に変化する中で、わが子を「頭のいい子」に育てるにはどうすればよいのでしょうか? 首都圏トップクラスの難関校合格率を誇る進学塾・VAMOS(バモス)代表で、新刊『AIに潰されない「頭のいい子」の育て方』を上梓した富永雄輔さんが、子育てでもっとも大切なことを教えてくれました。
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私たちは「大きな変化の時代」にいる
──本書の帯に「あなたの成功体験が子どもを不幸に陥れる」と書かれていますが、ドキッとするキャッチコピーですね。
子どもを幸せにしたいということは、保護者も、先生方も、つねづね思っていることだと思います。でも、はたしてこれまでと同じやり方でよいのでしょうか? 子どもとの接し方やマインドもふくめて、僕は同じではいけないと思っています。
今は変化が目まぐるしく、未来の予測が困難な「VUCA」の時代と言われています。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった言葉ですね。
このような時代にあることを、まず親自身が認識する必要があります。
ただし、これはネガティブなことではありません。自動車が発明されたとき、それまで馬に乗っていた人が焦ったのと同じで、何百年かに一回、必ずこういうことは起こるんだと思ったほうがいい。
日本でいえば、明治時代の文明開化や、昭和時代の敗戦のときと同じです。それに匹敵するような変化が、今まさに訪れている。だとしたら、これまで正しいとされてきた考え方をガラッと変えなくてはいけません。
──とはいえ、答えを見つけるのは難しいと思います。どこを目指していけばよいのでしょうか。
僕がこの本で言っていることは、絶対的な正解ではありません。ぜんぶマネしろと言うつもりもありません。ただ、こういう考え方の人も世の中にはいるんだなと知っておくことは大事だと思います。
何もかも否定から入るのではなく、とりあえずぜんぶ受け入れてみる。そして、その中から自分の子どもに合うもの、自分たちの家庭環境に合うものを選んでいくのがいいと思います。
──本書には、凡庸な子ほど一つのことを極めるのではなく、あれこれやらせることが大事だと書かれていますね。
その子が何に秀でているのか、簡単にはわかりません。数字に秀でているかもしれないし、音楽に秀でているかもしれない。もしかしたら、味覚に秀でているかもしれない。
だから、子どもにはいろんなことをやらせたほうがいいと思うんです。やっているうちに、きっと自分の秀でているものと出会えるはずです。
それは子育てだけでなく、仕事でも同じだと思います。僕らの職場にも、教えるのは得意だけど保護者と話すのは苦手な先生、授業のクオリティはそこまで高くないけど子どもの笑顔をつくるのがうまい先生、いろんな先生がいます。
いろんな人がいいんです。いろんな人がいるからこそ、チームは成り立つからです。だから、僕はみんなにできるだけ多くのチャンスを与え、その中から本人が秀でているものを見つけてもらうようにしています。
若いうちは誰もが「ダイヤの原石」
──逆に、すでに秀でた何かを持っている子は、それを突きつめたほうがよいということでしょうか。
たとえば、すごく算数ができる子に対して、国語もやらないとダメだとか、スポーツもしないとダメだとか、バランスを要求することで壊れてしまう子もいると思うんです。他のことを何もしなくていいわけではありませんが、とりあえず、伸ばせるだけ算数を伸ばしたほうがいいと僕は思っています。
大人だって、嫌いなことをやるよりは、好きなことをやったほうが伸びるものです。突出した能力を伸ばすことで、その子が幸せになって、いつかその子の能力が僕たちを幸せにしてくれることになるかもしれません。
ただし、僕は必ずしも秀でた能力を職業に結びつけなくてもいいと思っています。うちの子は算数が得意だから数学者になるべきだとか、決めつけないほうがいい。
算数が得意だったら、銀行へ行ってシステムをやってもいいし、保険会社へ行って商品設計をしてもいい。デイトレーダーになってもいいですよね。得意なものと職業をイコールでつなぐのではなく、いろんな可能性を探してあげることが大事だと思います。
──それは子どもだけでなく、社会人も同じですね。
おっしゃる通りです。とくにアンダー30の人たちなんて、僕はみんな「ダイヤの原石」だと思っています。
でも、意外と頭の固い人たちが多いんです。就職活動ではよく、「あなたの得意なことは何ですか?」とか、「あなたの弱みは何ですか?」と聞かれるので、みんな自己分析をしますよね。でも、22~23歳で、そんなのわかるはずないだろうって思うんです。
だから、自分の長所や短所には固執しないほうがいい。自分が短所だと思っていることが、他人から見たら長所の場合もあるし、自分が長所だと思っていることが、他人から見たら短所の場合もあります。
「これは自分には合わない」なんて決めつけないで、どんなことも「面白いチャンスをもらった」くらいの軽い気持ちでやってみるといいのではないでしょうか。
そして上司も、「こいつはこれが得意だから」といった思い込みにとらわれず、部下にいろんなチャンスを与えることが大事だと思います。
※本記事は、 Amazonオーディブル『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』より、〈【前編】富永雄輔と語る「AIに潰されない『頭のいい子』の育て方〉の内容を一部抜粋、再構成したものです。
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武器になる教養30min.by 幻冬舎新書
AIの台頭やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進化で、世界は急速な変化を遂げています。新型コロナ・パンデミックによって、そのスピードはさらに加速しました。生き方・働き方を変えることは、多かれ少なかれ不安を伴うもの。その不安を克服し「変化」を楽しむために、大きな力になってくれるのが「教養」。
『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』は、“変化を生き抜く武器になる、さらに人生を面白くしてくれる多彩な「教養」を、30分で身につけられる”をコンセプトにしたAmazonオーディブルのオリジナルPodcast番組です。
幻冬舎新書新刊の著者をゲストにお招きし、内容をダイジェストでご紹介するとともに、とっておきの執筆秘話や、著者の勉強法・読書法などについてお話しいただきます。
この連載では『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』の中から気になる部分をピックアップ! ダイジェストにしてお届けします。
番組はこちらから『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』
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