ボルダリングは、どうやら宮田さんと相性がいいようですが、一方、健康診断の結果は…。
* * *
ところで突然話は変わるのだが、先日定期健診でエコー(超音波検診)を受けたのである。そのときドキッとするようなことを言われた。
膵臓が見えないというのだ。
え、膵臓がない?
肝臓の持病があるので毎年1回エコーを受けているのだが、肝臓がある右腹部だけでなく、左の腹部とかあっちこっち検査されるので、肝臓以外も診ているんですか? となんとはなしに検査技師の人に聞いたところ、
「肝臓以外にも、胆のう、胆管、腎臓、膵臓を診ています」
と教えてくれた。
どの臓器であれ、ついでに診てもらえてありがたいと思ったら、
「でも宮田さんは膵臓が見えないんですよね」 と言われて、ゾッとした。おれ、膵臓ない?
「まあ、膵臓は奥にあるせいで、誰でもガスで見えにくいものなんですが」
なんだ、びっくりするではないか。でも、
「ガスで見えにくいって、どういうことですか?」
「人間のお腹の臓器の間にはガスが溜まっていて、それで画像が曇るんです」
内臓の間のガスって何だろう。オナラガスのことであろうかと思ったが、あれは腸内に溜まっているはずだから、違う話なのかもしれない。
「私のお腹にはガスが多いんですか?」
「宮田さんの場合は、ガスというより、内臓脂肪かも」
内臓脂肪が多い人は膵臓が見えないらしい。私は膵臓が隠れてしまうほど内臓脂肪が多いのか……。
「膵臓は、エコーやCTではよく見えないので、ガンなどの異変が見つかりにくいんです。膵臓をちゃんと見るならMRIで調べないとだめですね」
エコーの結果は、これまでと変化なしという診断だったのだが、膵臓にはほんとに異常はなかったのであろうか。見えなかっただけじゃないのか。病院を出てからも釈然としなかった。
内臓脂肪のせいで膵臓の異常が見逃されているのでは、という懸念もさることながら、お腹の中にガスだの内臓脂肪だの、お呼びでないものがいろいろ溜まっているところを想像すると、自分の肉体が腐敗しているかのような嫌な気持ちになった。たとえ髪とか肌とかに気を遣っていても(遣ってないが)、内臓の隙間にガスや脂肪が溜まっているようでは、いろいろ台無しではなかろうか。
それで家に帰って、体重計で測ってみたのである。
以前筋トレジムに行った際、いろいろな数値を測ってもらった。あれからもう1年以上が過ぎている。
うちの体重計がどれだけ正確かはわからないものの、意外にも数字上は前回より改善されていた。比較すると、以下の通り。
体重 63.0キロ → 62.9キロ
筋肉量 50.3キロ → 51.7キロ
体脂肪量 9.7キロ → 項目なし
体脂肪率 15.4% → 13.1%
BMI 20.9 → 20.9
問題は内臓脂肪で、うちの体重計で測ることができた。
内臓脂肪 項目なし → 8.5
たゆまぬトレーニングのおかげで、というかボルダリングしかしてないが、筋肉量が少し増え、体脂肪率も改善されている。内臓脂肪が増えたのか減ったのかはわからない。ただ前回体脂肪量が9.7キロあって、今回内臓脂肪が8.5って、内臓脂肪の占める割合多すぎやしないか。
しかも、今回の筋肉量と内臓脂肪を足すと、60.2になり、これを全体重から引くと、残りは2.7キロしかない。ということは、筋肉と内臓脂肪以外の私の成分、骨や内臓そのものや脳の重さを合わせても2.7キロしかないということになる。
ちょっと軽すぎやしないだろうか。
脳と骨と内臓で、たった2.7キロ?
人間の頭はボウリングの玉ぐらい重いって聞いたことがあるんだけど、全然そんな重さはない。
おれの脳、軽っ!
おまけに内臓脂肪が、脳と骨と内臓を合わせた重さの3倍以上ある。この数字を見る限り、私はほぼ筋肉と内臓脂肪だけでできていると言っても過言ではない。
この数字ほんとに合ってる?
トリセツをよく読むと、8.5は内臓脂肪の重さではなく内臓脂肪レベルを表す数値だった。おかしいと思った。
この数値は1から9.5の間であれば標準値のようだ。つまり私はギリギリ標準値内だったわけだが、もう少しでオーバーしそうな数値でもある。
やっぱり内臓脂肪をちゃんと減らしたい。
内臓脂肪を減らすには、有酸素運動と食事という話は前にも書いた。そして日々散歩しまくっているのに、全然減らない話も書いた。その後も体形に何の変化もないところをみると、散歩だけではなく、さらなる有酸素運動と、食事制限が必要だ。最近ボルダリングを始めたが、あれは有酸素というより無酸素運動のような気がする。
だとすれば、私は散歩以外の有酸素運動と、これまで以上の食事制限を行なう必要がある。
とりあえずできることから、というわけで好きなバターをやめることにした。
以前詳しく書いたが、私は食パンにバターをたっぷり滲み込ませて食べるのを朝の習慣にして
きた。パンの表面に黄金色の海ができるぐらいバターが滲みたパンが好きだ。
そんなパンを1度に2枚食べていることから、いつも家族にバター多すぎと指摘されていた。
今までは聞く耳をもたなかったが、心を改める。
さらばだ、愛しのバター滲み滲みパンよ!
おお、ジュリエット。君のいない人生なんて、果たして生きる意味があるだろうか。
バター滲み滲みジュリエットパンなしで僕はどうやって生きていけばいいのだ。
でもやめる。バターの代わりに、きな粉をかけて食べることにする。きな粉もバターに匹敵するぐらい好きだから、それならやっていけるだろう。きな粉が飛び散らないようにあらかじめはちみつをパンに塗って、そこにきな粉をかけたら、さらに飛散防止にとろけるチーズをのせる。
今後はそれを1枚だけ食べることにしよう。
あと先日は夕食に出た生姜焼きの端っこの脂のところも残した。
そのほか、私は焼き鳥のなかで鳥皮が一番好きなのだが、今後居酒屋に行ったときは、なるべく注文しないことにする。
そんなわけで、今後は散歩+ボルダリング+はちみつきな粉パンで勝負をかける。運気はまだあがらない。
(連載は「小説幻冬」でも掲載中です。次号もお楽しみに!)
衰えません、死ぬまでは。
旅好きで世界中、日本中をてくてく歩いてきた還暦前の中年(もと陸上部!)が、老いを感じ、なんだか悶々。まじめに老化と向き合おうと一念発起。……したものの、自分でやろうと決めた筋トレも、始めてみれば愚痴ばかり。
怠け者作家が、老化にささやかな反抗を続ける日々を綴るエッセイ。
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