日本に帰国して早二年。
いろんなキャンプ飯をつくってきました。スコーン、ハンバーグ、フレンチトースト、ビーフシチュー、たこめし。
しかし、未だにルワンダでつくったキャンプ飯を超えることはできていません。
ルワンダにいた頃、フットサルコートほどある自慢の庭で、週末にキャンプ飯をつくるのが楽しみのひとつでした。
スパニッシュオムレツ、ポトフ、オニオンリング、どれもおいしかったです。その中でも、群を抜いておいしかったキャンプ飯があります。
それがピザ窯で焼いた「じゃがいも」。
最高に美味しいキャンプ飯を作りたくて、庭にピザ窯を自作しました。
その窯に、じゃがいもを放り込んだだけ。まさか人生No.1キャンプ飯になるなんて。
皮を剥いたじゃがいもをアルミで包み、燃え盛るピザ窯に放り込みます。
数分待ち、焼き上がったじゃがいもを窯から取り出します。アルミを開け、驚きました。
おまえはいつ油にダイブしたのだと、尋問したくなるレベルでカリカリになっています。
いざ実食です。
箸を使い金色の衣を優しく脱がそうとすると、「パリッ」と軽快なサウンドを奏でる。あらわとなった身は自ら「ほっろほっろ」と艶やかに囁いている。
高鳴る鼓動を抑えつけ、塩をふり、バターをこれでもかと抱かせる。黄金になったじゃがいもを口へと運びます。舌に触れた瞬間でした。
皿ごとルワンダの空にぶち上げそうになる。
人智を超えた旨さに、生命を脅かされると思ったのでしょう。
脊髄反射のごとく、脳に情報が届く前に身体が反応してしまった。それほどの桁違いのインパルスが体内を駆け巡ったのです。
輝くじゃがいもを口へと運ぶたび、「いつもよく頑張ってるね」と舌を熱く抱擁してくれる。塩がじゃがいも本来の旨味と甘味を最大限まで引き出し、バターの甘美な香りが鼻へと抜けていく。
そのハーモニーは、ぼくの手を引いて幸せの向こう側へと連れていってくれました。
食べ終えた容器から目を離した瞬間でした。
カラスが空っぽの容器を我が家の屋根まで持ち去っていきました。カラスは脇目も振らず、屋根の上でじゃがいもの幻影をむさぼっています。
ルワンダのカラスも、その残り香にがっつくほどの旨さ。やはり、シンプルこそが至高。ありのままでもう完ぺきなのです。
じゃがいもも、ひとも、ありのままでいいのだ。
ありのままで完ぺきなのだ。
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