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夢みるかかとにご飯つぶ

2024.09.07 公開 ポスト

【夢ごは日誌】察しない結婚記念日清繭子

夢みるかかとにご飯つぶ』でエッセイストデビューした清繭子の、どちらかといえば〈ご飯つぶ〉寄りな日々。

ロマンティックあげるよ

何回目かの結婚記念日だった。
記念日は二人でちょっといいレストランに行くことにしている。
なにもロマンティックな話ではない。そのように私が仕向けている。

数週間前から「今年はどこいくー?」とけしかけて、夫がお店の候補を出し、私がセレクトする。お互い仕事を調整する。

夫は永遠の思春期ボーイなので、素直に愛情を表現することができない。ありがとうやごめんねすらほぼ言わない。私のことを名前で呼べない。照れるから。だからこうやって段取りをつけないと、夫婦っぽい時間は永遠に訪れないのだ。

そのことに不満はもちろんある。結局ぜんぶ自分仕切りの虚しさはある。でも、ステーキを食べて、二人して胃もたれし、「私たちもう、いいお肉を食べられる年齢じゃないんだね……って、コレ、去年も一昨年も言ったね」と苦笑いし合うのは、やっぱり楽しい。今年はアニバーサリープレートも出てきて、夫も牛の歩みで進化している。

帰宅まで少し時間が余ったので「なんかピアスとか買ってよ。千円くらいのでいいからさ」とデパートを見ていたら、ガラスで作られたつぶつぶが3つ並んだネックレスがあった。「わー! これ、ご飯つぶっぽくない!? これがいい!」と買ってもらったら七千円くらいだったので「だまされた……」と夫がすねている。私はとても機嫌がいい。察してもらうのをそわそわ、イライラしながら待っていたときより、ずっと機嫌の効率がいい。

ロマンティックはむずかしい。ひねり出さなきゃむずかしい。でも年に一回くらいはさ。
諦めずやってこーぜ。

関連書籍

清繭子『夢みるかかとにご飯つぶ』

母になっても、四十になっても、 まだ「何者か」になりたいんだ 私に期待していたいんだ 二児の母、会社をやめ、小説家を目指す。無謀かつ明るい生活。 「好書好日」(朝日新聞ブックサイト)の連載、「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」が話題のライターが、エッセイストになるまでのお話。

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夢みるかかとにご飯つぶ

好書好日連載「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」が話題の清繭子さん、初エッセイ『夢みるかかとにご飯つぶ』刊行記念の特設ページです。

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清繭子

エッセイスト。1982年生まれ、大阪府出身。早稲田大学政治経済学部卒。

出版社で雑誌、まんが、絵本等の編集に携わったのち、小説家を目指して、フリーのエディター、ライターに。ブックサイト「好書好日」にて、「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」を連載。連載のスピンオフとして綴っていたnoteの記事「子どもを産んだ人はいい小説が書けない」が話題に。本作「夢みるかかとにご飯つぶ」でエッセイストデビュー。

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