夫、義母を見送り67歳で一人暮らしが始まったイラストレーターの本田葉子さん。さみしい。心細い。と思いながらも、楽しみな気持ちがいちばん大きかったといいます。いつもの朝ご飯と欠かさない晩酌。なんでもないけど好きな服。暮らしをサイズダウンしながらも心が明るくなる工夫が満載の『ワクワクする!67歳からのはじめての一人暮らし』より「はじめに」と目次をお届けします。
前しか見るところはない!
夫が亡くなって三ヶ月後、東京から小田原に引っ越してきた。高齢の義母と老犬、そして息子と一緒に二〇一七年の秋に初めての街に移り住んだ。
生活の縮小が主な目的だったけれど、何より義母と愛犬スーが安らかに最期を迎えられる場所、そして私が楽しめる場所を! と選んだのが小田原の海辺の街だった。
義母の母親の故郷だったことは偶然だったけれど、やはりどこかで?がっていたんだなあと思う。義母は一年目からデイサービスに通い、楽しみをいくつか見つけていたけれど、小田原での四回目の春に九十七歳で元気に逝った。
翌年の春、同じくスーもホッとした顔をして旅立っていった。同年の夏、息子は独り立ち、家を出た。
そう! 小田原に移り住んで六年目、とうとう私は一人暮らしとなったのだ!
六十七歳からのはじめての一人暮らしってどんなものなのでしょう? 寂しいのか? お気楽なのかな? 心細いものなのか? 全部含めて一言で言うと、私はワクワクの気持ちが一番勝っていた。今までしたことのない生活の始まり。なんでも初の体験や新しい生活のスタートの時に感じる高揚感に胸が躍った。
前しか見るところはない! と思うと振り返ったり懐かしんだりする時が惜しいような気がして、新しい住処探しを始めたのだった。
「もう一回りの生活の縮小」は一人暮らしには必須! とまずはお引っ越しの鉄則である持って行けない物の処分を手始めに心の整理もついでにしていった。思い出の家具だって今度の家には入らないから手放し、大きいテレビもいらないと判断。今度の住処はコンパクトにできている公営の集合住宅だ。昭和レトロ感漂うアパート。
引っ越しを終えて、今やっと本当の一人暮らしが始まったのだと強く実感している。カーテンを開け、窓から眺める新しい風景に、お楽しみはこれからだ! と声に出して言ってみる。
ますますこれから先が楽しみになってきた。
『ワクワクする!67歳からのはじめての一人暮らし』目次
- はじめに
- 一人で迎えたはじめてのお正月「赤いノート」に書き込む大事なこと
- 二度目の引っ越しで少ない部屋数、家賃は三分の一に
- 夫、義母、愛犬、六年で見送ったそれぞれの最後
- 「ヘイ、シリ!」と使いこなしていた義母を見習いパソコン接続に挑戦!
- 簡単に、でもズボラになりすぎない見栄えのいいご飯作り
- トマト缶ひとつを四日で使い切るいい加減な一人前クッキング
- あると安心。「しょうがオイル」とアボカドの使い切り方
- 「白菜はえらい!」スープ、浅漬け、炒め物……干してもおいしい
- セイロで野菜も豆腐も蒸すと「一人のおいしいもの」がかなう
- 七十歳、八十歳でも「おしゃれの壁」はバーンと乗り越える
- よそ行き服よりも、普段着おしゃれで自分のスタイルを極める
- 「一日機嫌よく過ごせる」春と夏のなんでもないけど好きな格好
- 「慣れ親しんだ安心感」秋と冬のなんでもないけど好きな格好
- なんでもないことへのときめきは日々積み重なれば山となる
- ヒョウ柄、派手な柄パンツ 苦手がどんどん得意になる!
- 食器セットは二枚、客用布団は処分ステップを踏んでモノを減らす
- モノのベストテンを決めておくのが片付けのルール
- 小さな部屋で表現するクリスマス、お正月、季節のイベント
- 新聞紙、雑巾が大活躍 ささいなことの効果を実感する二段階掃除術
- 四月に真っ白Tシャツを買って私の新学期が始まる
- 「ゾウ時間」「イヌ時間」「アリ時間」で介護も乗り切った アバウトでメリハリある時間割
- 出かける時は夫のモノを身につけて 思い出に押し込めず大いに活用
- 日めくりカレンダーは見るのも便利 破ったあとも大活躍
- 解決できない悩みが頭に浮かんだら手芸で「無になる時間」に入り込む
- お気に入りのギャザースカートを解体 これぞゲームの手芸、リメイクの醍醐味
- 動くものが部屋にあると小さな活気が生まれる
- 古希に向けて希望満々 サップとボディーボードにも挑戦
- 一人になって得た「自由」という翼 その使い方は自分次第
- 「それ前にも聞いたよ」を怖がらない 重複トークは相手も自分も傷つけず笑いに変えて
- お中元、お歳暮は卒業 プレゼント交換はほどほどに方向を変えて
- 「去る者はもちろん追わない。来る者も少しは拒む」これからのお付き合い
- 老いに抵抗しない、でも諦めない「今の自分」を活かしてとことん楽しむ
- 「明日死んだら」を考えるより、毎朝の目覚めに「サンキュー!」と感謝し続けたい
- おわりに
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続きは、本田葉子『ワクワクする!67歳からのはじめての一人暮らし』をご覧ください。
ワクワクする!67歳からのはじめての一人暮らし
2024年9月4日発売『ワクワクする!67歳からのはじめての一人暮らし』について