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月が綺麗ですね 綾の倫敦日記

2024.09.10 公開 ポスト

結婚式に一人で出席し午前3時まで盛り上げた「35歳の私」が感じる“年齢”と“自意識”の微妙な変化鈴木綾

結婚式で友達がみんな帰っちゃたら寂しいよね?

歳をとる女性は、なぞのダブルスタンダードに直面する。歳をとる男性は「Silver fox」(魅力的な老紳士)に変身するのに、歳をとる女性は単に透明人間になる。女優キャリー・フィッシャーの言葉を借りると、「男性は女性より老いがいい効果を発揮すると言われているけど、それは男性の老いが許されているだけ」。

 

35歳の私は微妙な立場にいる。社会的に「透明人間」になる年齢にはまだ遠い。「歳に見えないね」と言われたり、学生と間違われたりする。

しかし、この数ヶ月間で、私が新しいライフステージに入ったのを実感している。周りの人たちと私の間の関係は、「年齢」という理由で若干変化した。

私が変わったのか、それとも彼ら、社会が変わったのか。答えは、おそらくその両方だろう。

22歳で社会人になった時、自分の年齢をあまり気にしなかった。会社の上司や同僚との関係は、学校の先生との関係とよく似ていた。未熟者の私は年上の彼らからできるだけ学びたかった。自分の若さは一種の盾で、自分が若さによって社会で有利に扱われている現実に気づかなかった。

今、「大人」としての最初のステージが終わろうとしている。読書会の参加者の中で何と3人が同時に妊娠している。私の友達のほとんどは会社で上司になっている。同世代の私たちは、自分たちが職場で最初の年齢世代じゃなくなっていることに気づき始めた。

6月に、友人の結婚式に出た。この友人は私と同い年だが、同い年の人たちの間では結婚が若干遅かった。結婚しそうな、あるいは結婚願望を持っていた私の友人たちは大体30歳直後で既婚者になった。その結果、この結婚式の参加者――家族以外の参加者、要するに新婦の会社、学校仲間――は全員「plus one」を連れていた。私以外。

西洋の結婚式はマナー上、全ての招待客に「plus one」が一人許されている。つまり、もう一人を連れていてもいい。結婚式に一人で参加するのは寂しいとみんなが考えているからだろうが、このルールはかなり濫用されている。まだ真剣に付き合っていない、あるいは別れる寸前のパートナーを「plus one」で連れてくる人がかなりいる。一生支えてあげたい友人の結婚式に、明日には別れている人を連れてくる考え方が理解できないけど。私は一人でも全然大丈夫。

スピーチやパフォーマンスのせいで、夕飯が終わってパーティが始まったのは夜11時ぐらい。しかし、たくさん食べてたくさん飲んだお客さんたちはすでに疲れていた。女性たちは隣に座っているパートナーの方に頭をもたれかけてわからないようにイビキをかいていた。少しずつ、カップルは一組一組帰った。カップルの方が早く帰りやすい。パートナーは疲れているから帰る〜〜という言い訳が使えるから。

それまで、なかなか起きていられなかったのはいつも私だった。普段、私は10時半に寝る。しかし、今回は数少ない「若者」の一人として、ちゃんと最後まで新郎新婦と踊る、不思議な責任を感じた。だって、人生に一度(のはず)の結婚式で友人たちがみんな早く帰っちゃたら寂しいよね。

だから私は朝3時まで新婦に付き合って踊った。20代の私はパーティでとてもシャイだったのに、今の私はパーティを盛り上げるチアガールになっている。

(写真:Unsplash/Omar Lopez)

今年になって初めて、仕事で自分の「年齢」を感じた。1月に投資会社とコンサル契約をして働き始めた時、私より一回り年下のアナリスト(男性)と一緒に仕事することになった。前職でマネジャーだったけど、これほど若い人と仕事をするのは初めて。

休憩時間に二人でよくコーヒーを飲みに行ったり、あるいはオフィスの近くの公園でちょっとだけ散歩をする。そういう時は仕事だけではなく、家族、趣味、そしてメンタルヘルスなど、かなりプライベートな話もする。「干支」のことを知らなかった彼にそんなことも教えてあげた。二人ともが「龍」で今年が年女・年男なのはちょっと嬉しい。私は彼の上司ではないが、ある意味彼のメンターになっている。

私が彼と同じぐらいの年だった時、仕事上のメンターたちは全員男だった。私が尊敬していたこの大先輩たちは、惜しみなく自分が蓄積してきた知恵を分かち合ってくれた。しかし、女性部下とそうやって仕事上で親しくなることを、彼がどう見ていたのかはいまだに気になる。年上男性と年下女性の間には微妙な権力勾配があるから。彼らはセクハラで訴えられることを心配したことがあったのか? もちろん彼らからセクハラされたことは一度もなかったが。

その時の上司たちが私に自分のキャリア苦労話を語っていたと同じように、私はこの20代のアナリストに自分のキャリア初期の話をよくする。彼が私をどう見ているか、私は話が長いと思っているのか、年上のお姉さんからメンタリングされることをどう感じているか、気になることが多すぎる。

私が社会の圧力から自由になったこと、子どもが産めるタイムリミットですらも気にしていないことを、彼がわかっているのだろうか?私は自分が満足しているかどうかで自分の人生を測っている。年齢じゃなくて。

この間、アナリストくんとアナリストくんの彼女を、洒落た会員制クラブに連れていった。そんなところに足を踏み入れたことのない二人は、豪華な内装を見て目がキラキラしていた。複雑なカクテルを飲むのに慣れていないので飲み物を決めるのに15分もかかった。可愛かった〜〜

結局話が盛り上がりすぎて、朝3時――クラブ終業時間――まで話していた。

「この先輩、歳にしては元気だなー」と考えてくれたら嬉しい。

*   *   *

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月が綺麗ですね 綾の倫敦日記

イギリスに住む30代女性が向き合う社会の矛盾と現実。そして幸福について。

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鈴木綾

1988年生まれ。6年間東京で外資企業に勤務し、MBAを取得。ロンドンの投資会社勤務を経て、現在はロンドンのスタートアップ企業に勤務。2017〜2018年までハフポスト・ジャパンに「これでいいの20代」を連載。日常生活の中で感じている幸せ、悩みや違和感について日々エッセイを執筆。日本語で書いているけど、日本人ではない。

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