夫、義母を見送り67歳で一人暮らしが始まったイラストレーターの本田葉子さん。さみしい。心細い。と思いながらも、楽しみな気持ちがいちばん大きかったといいます。いつもの朝ご飯と欠かさない晩酌。なんでもないけど好きな服。暮らしをサイズダウンしながらも心が明るくなる工夫が満載の『ワクワクする!67歳からのはじめての一人暮らし』より、一人で迎えたはじめてのお正月の様子をお届けします。
お正月は死後へ向けた情報を赤いノートに書き込む
初めて一人の年末と年始を迎えたのは二〇二二年の年越しだった。
いつもは家族全員揃って過ごした日々だったけれど、ワンコもなしのとうとうおひとり様に。娘一家四人で来る……という案もあったけれど辞退した。それぞれにやりたいことも出てくる歳の孫ら(九歳と二歳)。それに年末年始の「食事のご用」から私自身が解放されたいという気持ちが強かった。
もともときちんとお節料理を用意していた訳じゃなかったけれど、それでも三度三度用意する数日はなかなかなもの。孫らと楽しもうとゲームなどするも時間を持て余すのが本音です。お互いのために別々にと提案しはじめての一人年越しとなったのだ。
年末は普通よりちょっと気を入れた掃除をし、自分が好きなお節だけ用意した。伊達巻、かまぼこ、煮しめ程度で充分。もちろんお雑煮の用意は抜かりなく。ワインやビールもちゃんと買い置きね。除夜の鐘を聴きながら一人うとうとするソファーの上。
元旦は赤いノートへの書き込みから。一年の計は赤いノートにあり。私の死後のために書いているノートだ。例えばSNSのパスワードとか、銀行の諸々もろもろの番号ね。夫が亡くなった時に「聞いときゃよかった!」と思うことがいろいろ多くて困ったので、ノートに記すことにしたのだ。
親しい友人のアドレスも書いてあるけれど、亡くなったりすると書き換えが必要。
「書いておいてよ」と言われたので、お頼みしたい埋葬方法も記してある。
お正月にするのは上書きするのを忘れないためと、今年も変更なしと書き込めて良かった、これからもまた一年元気でいこうと思えるから。
死後のための赤いノートは、めでたいノートでもあるのだ。
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続きは、本田葉子『ワクワクする!67歳からのはじめての一人暮らし』をご覧ください。
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