誰かを待つ時間、その人が来たときの第一声を考えたり、そのあとの時間に思いを馳せたり、あるいはメールチェック、SNS、携帯ゲームなど、過ごし方はさまざま。
そんな「待つ時間」にそっと寄り添う音楽をモチーフに、DJ、作詞、音楽演出など幅広い活動をしているカワムラユキさんに言葉を綴っていただきます。
適当につけたイニシャルのあだ名を引きづり、傍に連れ添って、気がつけば四半世紀
定まらない夢や目的は、魂にへばりついていた熱で若さを燃やして、時に気を失ったりした
五感だけをを頼りにして、風の吹く方角が意味あるものであるようにと、願掛けしては当てが外れて
項垂れてなお差し伸べられる手を、上手に握り返すことも出来ずに傷口に酒を吹きかけ
君はいつの間にか駅に向かって歩き出していて、スクランブル交差点で信号が変わるのを待っている
変わりゆく価値観、暗黙の了解のリストたち、ストレスに耐えた証の宝石の粒
僕は両手にあまるほどの愛には見向きもせずに、勢いで毒を喰らうような生活を細かく代謝してゆく
執着で飾り立てたドレスと、悪趣味な化粧、大切に胸のペンダントへと仕舞い込んだイニシャルは
昨夜のプロポーズで粉々に飛び散って、天へとゆっくり召されてゆくような、イメージだけは寛大だ
君は概念の外へと逃げ出したくて、脱走犯のごとく血走った目で、ここじゃない何処かを探していて
僕はイニシャルの導きだけを頼りに、今でも触れたことのない優しさを追い求めている
あの時何処へ何を目指して、満員電車に揺られて、何を手にしたのだろう? 全く思い出せないまま、時だけが過ぎてゆく
きっと答えはイニシャルの中に潜んでいるのだけど……
MariMari『J』(1998年、フォーライフ ミュージックエンタテイメント)
渋谷で君を待つ間に
誰かを待つ時間、あなたはどんな風に過ごすでしょうか。
その人が来たときの第一声を考えたり、そのあとの時間に思いを馳せたり、あるいはメールチェック、SNS、携帯ゲームなど、過ごし方はさまざま。
この連載では、そんな「待つ時間」にそっと寄り添う音楽を、DJ、作詞、音楽演出など幅広い活動をしているカワムラユキさんに毎回紹介していただきます。
- バックナンバー
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