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僕の不幸を短歌にしてみました(エッセイつき)

2024.09.19 公開 ポスト

実家で飼っている亀の名前で、ひともんちゃく!?岡本雄矢( 主に“トホホ短歌”を詠む「日本に(たぶん)ただ1人の歌人芸人」)

世の中の #トホホ を拾い集めては披露してくれる、歌人芸人の岡本雄矢さんも、さすがのプロの仕事に大感激!
全員がサラダバーに行ってる時に全部のカバン見てる役割』『センチメンタルに効くクスリ トホホは短歌で成仏させるの』絶賛発売中!

*   *   *

カメ吉と名付けたカメは久々に実家に帰るとカメ太になってた

 

 

知り合いの方から聞いた話。

不幸なのかどうなのか僕には判断しかねたのですが、あなたはどう思うでしょう?

 

彼は実家で亀を飼っているそうで、そのカメはカメ吉という名前だったそうです。

彼が何年かぶりに実家に帰ると、カメ吉は元気にしています。

母親に「カメ吉元気だね」と言うと、母親は「カメ吉? カメ太でしょ?」と言ってきます。

彼が「え? 名前変えたの? なんで?」と聞くと母親は「なんでって、知らないけど」と答えます。

知らないけどってことないだろ。大事な名前だよ。と彼は疑問に思いながらも「誰が変えたの?」「いつ?」と質問を続けます。

しかし母親は「わからない」と繰り返すばかりです。

どういう意味なんだろう?

彼がそう思っていると母親は言います。

「というか、昔名前なんてあったっけ? カメ吉? そんな名前だった?」

え? そこから? と彼は思います。

「カメ吉だよ」と彼が言っても、母親は「そうだったっけ」と言うだけです。

なんで忘れてんだよ、と思った彼ですが、ふと思います。

たしかに「カメ吉」と声に出して呼んだ経験はあまりなく、家族全員で「こいつはカメ吉」だと確認し合ったことも、よく考えたらなかったような気がします。

自分がカメ吉だと思っていただけで、家族は名前のないただの亀だと思っていたのかもしれません。

それを不憫に思いカメ太と名付けたのかもしれません。

彼は、そんな気すらしたきたようです。

「お前の名前はなんなんだ?」

そう聞いても、亀はゆっくり歩くだけだったそうです。

 

これは不幸話ですか? 違うような気もしますがあなたはいかが思いますか?

亀の歩みのように、ゆっくり考えてみてくれると幸いです。

*   *   *

新刊『センチメンタルに効くクスリ トホホは短歌で成仏させるの』に続き、
全員がサラダバーに行ってる時に全部のカバン見てる役割』が文庫に!
読めば読むほど、なぜか幸せな気持ちにしてくれる短歌&エッセイをお楽しみください。

 

関連書籍

岡本雄矢『センチメンタルに効くクスリ トホホは短歌で成仏させるの』

今日も世界の片隅で、ひとり膝を抱える僕とあなたのために。 不幸に愛された、トホホ名人……歌人芸人が身を切って綴る、“せつなさとおかしみ”、“短歌とエッセイ”のマリアージュ。

岡本雄矢『全員がサラダバーに行ってる時に全部のカバン見てる役割』

昨日もトホホ、今日もトホホ。憂鬱だらけの毎日も、短歌に詠めば何かが変わる!「あの数ある自転車の中でただ1台倒れているのがそう僕のです」「さっきまで順調だったレジの列 急にもたつきだす僕の前」「ものすごい数のハトが集まっているおじさんに人は集まらない」他、105首の短歌とエッセイで綴る、ほろ苦さとおかしみに満ちた愛すべき日々。

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僕の不幸を短歌にしてみました(エッセイつき)

著者は、主に”不幸短歌”を詠む「日本にただ1人(たぶん)の歌人芸人」。
よく失敗する、言いたいことが言えない、反論したくても返せない、なぜ自分だけこんな目に合うのかといつも思う、自分には劇的なことが起こってくれないと嘆いて生きている……。
そんな著者から見える”世界”を、フリースタイルな短歌(&ときどきエッセイ)にしてお届け。
もしあなたが自分のことを「不幸だ」と思っているなら、「もっと不幸な男」がここにいると思ってください。

バックナンバー

岡本雄矢 主に“トホホ短歌”を詠む「日本に(たぶん)ただ1人の歌人芸人」

詠み始めるとなんでも”トホホ短歌””不幸短歌”になってしまうという特徴を持つ、「日本にただ1人の歌人芸人」。1984年北海道生まれ。吉本興業所属。コンビ「スキンヘッドカメラ」で活動中。YouTubeで「芸人歌会」を開催。北海道新聞等で連載も。

短歌とエッセイを収録した初の著書『全員がサラダバーに行ってる時に全部のカバン見てる役割』には、俵万智さん、穂村弘さん、板尾創路さんからアツい推薦文が寄せられた。

最新刊は『センチメンタルに効くクスリ トホホは短歌で成仏させるの』。

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