探求心の鬼、片山晋呉プロ
片山晋呉プロは、2004年から3年連続賞金王となり頂点を極めると、08年の「日本オープン」でツアー25勝に到達して、JPGA史上7人目の永久シード選手となった。同年には5度目の賞金王獲得も果たしている。
2009年のマスターズでは、当時の日本人最高成績の4位に食い込み、グリーンジャケットに迫った。リオデジャネイロ五輪に出場した2016年には、「マイナビABCチャンピオンシップ」で史上6人目のツアー30勝目を挙げた。2024年、「すまいーだカップ」で、シニアプロとしてもシニアツアー初優勝を果たしている。
現在51歳だが、シニアツアーだけでなく、レギュラーツアーにも挑戦を続けている。今年、2024年のフジサンケイクラシックでは、7番アイアンの代わりにロフト31. 5度の7番ユーティリティを投入し、好成績をおさめたことで話題になっている。表題の言葉は、その時の記者のインタビューに応えたものだ。
片山プロといえば、ロングアイアンを使う200ヤード前後の距離で、ボールをグリーンに止められないことに悩み、7番ウッドを採用してから賞金王やマスターズでの好成績をおさめたことで有名だ。
プロの場合は、ボールがグリーンに落下する角度が40度以上あれば、スピンでボールを止められるといわれている。しかし、片山プロのヘッドスピードでは、ロングアイアンでその落下角度を出すことができなかったのだ。
そのため、グリーンに直接落とすと転がり出てグリーン奥へ行ってしまい、奥からのアプローチショットは難しくなり、しばしばボギーにしてしまっていた。グリーンオーバーを避けるには、花道から転がし上げるしかなく、的が狭くなるのでバンカーに入れることも多くなる。もちろん、バーディチャンスに付けることは更に至難の業だ。
7番ユーティリティの衝撃
プロ仲間でも探求心の強さが群を抜いていた片山プロは、落下角度を確保するために、いろいろと試した挙句、当時は珍しかった7番ウッドにたどり着いたのだ。現在も、片山プロの使用ウッドは1・4・7番の三本で、7番ウッドは健在だ。
そして、今回は7番ユーティリティの採用だ。片山プロ自身が「7番ウッドを初めて入れたときの衝撃と同じです」というほど、その効果の大きさを実感しているようだ。これもまた、レギュラーツアーに参戦するプロでは、初めての試みのようだ。
51歳となった片山プロのヘッドスピードでは、5番・6番のアイアンで狙うような距離もグリーンで止めにくくなり、既に5番・6番ユーティリティを導入していた。どうやら7番アイアンで狙う160ヤードぐらいの距離も「止めにくい」と感じていたのだそうだ。
そこで、シニアツアーで使っていた人から借りて、試し打ちさせてもらったのが7番ユーティリティで、一発目から「何これ!」と驚くほどよい球筋のボールが出たらしい。探求心のかたまりのような片山プロだから、即座にフジサンケイクラシックで投入したのもうなずける。7番アイアンを抜いてレギュラーツアーを戦う男子プロは、海外を含めても片山プロだけではないだろうか。
ユーティリティのラインナップには、31~2度の次には35度ぐらいのロフトのクラブもある。表題の言葉のように、その内8番アイアンも抜いて35度のユーティリティを採用する日も近いのかもしれない。「すると、アイアンは9番だけになっちゃうね」(ウェッジはアイアンとは違うようだ)と笑う片山プロだが、年齢による体力の衰えに対抗するための飽くなき工夫には敬服するしかない。
レギュラーツアーで使用されるグリーンは、固く締まっているがゆえの工夫なのかもしれないが、きちんとしたダウンブローでスピンの効いたボールを打てるはずの片山プロでさえ、クラブをチェンジすることでグリーンをとらえやすくしようと工夫しているのだ。
体裁よりもスコアを優先
ならば、私のような高齢の一般ゴルファーならば、なおさら片山プロのように大ロフトのユーティリティを導入し、アイアンの本数を減らすべきではないかと思う。実際のところ、スピン量も少なめで球筋も低い私のボールでは、春先の固いグリーンでボールが止められず苦戦しているのだ。
すでに、4・5・6番アイアンの代わりに、22度・25度・28度のユーティリティを導入し、アイアンより高い球筋を得ていたが、片山プロのコメントを聞いた今では、7番アイアンも抜いて31~2度のユーティリティを導入したい気持ちになってきている。
さらに、片山プロよりも先に、8番アイアンも抜いて35度のユーティリティを導入してもいいのではないかとさえ思いはじめている。この際、スコアアップを図るには、体裁に構っている場合ではない。70歳を過ぎた今では、体力は日々衰えていくのを止めようがないからだ。
もちろん、トレーニングで衰えを抑制したり、多少なりとも筋力をアップさせたりすることも可能だし、そういう努力も必要だろう。しかし、クラブをより使いやすいものへ変更することも、大きな意味があるにちがいない。
アイアンとユーティリティの性能差
一説によると、ドライバーのヘッドスピードが40m/秒の人が6番アイアンとロフト27度のユーティリティを打ち比べると、総距離は同じでもボールの落下角度はユーティリティの方が4度ほど大きく、ランが10ヤードほど減少するのだそうだ。すると、ドライバーのヘッドスピードが40m/秒程度の一般ゴルファーでも、充分グリーンに直接ボールを落として止められるわけだ。
私の場合、6番アイアンはキャリーが145ヤードでランが15ヤード、総距離で160ヤードというところだが、28度のユーティリティだとキャリーが154~5ヤードでランが5~6ヤードほどになる。総距離は同じでも、ランが少ないユーティリティのほうが、スコアメイクに効果的なのは間違いない。
すると、7番アイアンの場合では、キャリー140ヤードでラン10ヤードぐらいだが、これをユーティリティに替えれば、キャリー146~7ヤードのラン3~4ヤードぐらいになるのではないかと期待できる。
これならば、少し固いグリーンでも直接グリーンに落として、止めることができそうだ。試してみても、損になることはひとつもないから、やらない選択肢はなさそうだ。
私は今年70歳になったので、グランドシニア選手権に出場できるようになった。春のシニア選手権では予選通過し、決勝のマッチプレー2回戦で今年のチャンピオンになった方と19ホールの接戦をして敗退したが、グランドシニア選手権は予選・決勝ともストロークプレーだ。
ストロークプレーでは、できるだけボギーを打たない安定したプレーをするのが肝要だ。楽にパーオンさせられて、2パットでパーを重ねていけるのなら、7番ユーティリティはきっといい武器になるにちがいない。
グランドシニア選手権は、11月に予定されている。早めに31度ロフトの7番ユーティリティを手に入れ、使い慣れておきたいと思う。
参考資料:
「片山晋呉 プロフィール」ゴルフダイジェスト・オンライン
「ウソだろ!? 片山晋呉は7番アイアンも抜いちゃったの? レギュラーで戦うために7Uを投入「最高の球が打てる」」ALBA Net GOLF、2024年9月4日
「片山晋呉は7Iを抜いて7Uを入れたけどアナタは!? 160Yを狙う6Iの代わりにロフト26度以上のUTを‼」ALBA Net GOLF、2024年9月9日
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