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豆柴センパイはおばあちゃん ヨロリゆるゆる、今日もごきげん

2024.09.19 公開 ポスト

【弟猫コウハイ日記】「はじめての絶叫」の頃石黒由紀子

ニャー!『豆柴センパイはおばあちゃん』が出版になったということで、「コウちゃんも何か言うことニャい?」って……。 まぁ、ありますよ。弟猫として、ずっと近くで見守ってきたからね。

なので「本に書いてあること、ボクから見たらこんな感じだったよ」とか、「あのとき、ボクはこんな気持ちだったんだ」なんてことを少しずつ書くね(ボクになったつもりで飼い主が)。

今回は「センパイの絶叫」について。なんたってすごい声なんだもん最初はものすごく驚いた……。

急に大きな声を出すセンパイに「ギャ!」ってなってるボク。センパイは何をしても笑っているように見てて、トクだと思う。

2020年、センパイが15歳になる頃のこと。検査の話がひと区切りついたタイミングで、「ところで……」と先生から切り出された内容に私は驚きました。「センパイちゃん、家で吠えて止まらなくなるようなこと、ありますか」

じつは、病院のバックヤードで過ごしている間、ソワソワとあちらこちらを動き回り、壁に向かって吠えて、興奮して失禁したり、看護師さんたちが手に負えない状態になった、と言うのです。そして疲れ果てて眠り、少し落ち着いたかと思うとまたソワソワ歩き出して……と。

にわかに信じがたく「え? センパイがですか」と聞き返してしまいました。そのようなこと、これまで1度もありません。「吠えるって、絶叫って感じですか」再び尋ねると、「えぇ、そうです」。答えにくそうにする先生や、横にいる看護師さんのげっそりと疲労が滲む表情からも、「これはとても大変な状態だったんだな」と理解できました。

先生は「家でもこのような状態になると、近所にも聞こえるだろうし、困っているだろうな」と私たちを心配してくださっていたよう。犬も高齢になってくると家の中をグルグル歩き回ったり、夜中に吠えたりすると聞いたことがありました。詳しくはわかりませんが、特に日本犬にその症状が多く見られるとか。「認知症でしょうか」と聞くと、「一概には言えません。認知症というよりは、神経系の何かによる症状かな。不安感からのストレスかもしれませんね」。

「これは大変なことになったぞ」私は緊張しながら、センパイを覗くといつもと同じ顔。

真っ黒な瞳で私を見上げ「早く帰ろうよ」と言っている。

病院からの帰り道は夕焼けの中を歩く。ご機嫌で足取り軽やか、いつもは苦手な登り坂もさっさかさっさか。元気に歩くセンパイの背中を見ていたら、どんよりとした暗い気持ちも夕日に溶けていくよう。気をつけながら見守るしかないな。もし、家でもそんな状態になったら、そのときは慌てないように、先生の言葉を覚えておこう。

本にもある通り、センパイが大きな声を出すようになったりして「あれ?」って思ったのはセンパイが15歳になった頃だった。そうなる前から、ひんぱんに病院に行くようになっていたから「どっか悪いのかな」とは思っていたけど、センパイはモリモリごはんを食べていたし、おさんぽも楽しそうだったから、ボクはあまり気にしていなかった。

でもね。突然、大きな声を出すようになったんだよね。鳴き声もね、いつもの「ワン、ワン!」じゃなくてさ、「オオオオーン!」って感じ。もう、なんだかびっくりしちゃってさ、固まったよね、ボク。「あれれれ、いつものセンパイじゃなーい」って思って、何か怒ってるのかな? って。

それでね、少ししたら鳴くのをやめるときもあるし、ずっとずっと鳴いていることもあるんだよ。なんかね、センパイはすぐそばにいるのにすごく遠くに感じてしまって、ボクはどうしていいかわからなかったんだ。

周りのみんなはボクが「怖がっている」と思っていたみたいだけど、そうじゃないのよ。ボクはセンパイを助けたかっただけなんだ。ボクができることは何? って。いつもそう思っていたわけなの。

関連書籍

石黒由紀子『犬のしっぽ、猫のひげ 豆柴センパイと捨て猫コウハイ』

食いしん坊でおっとりした豆柴女子・センパイが5歳になった頃、やんちゃで不思議ちゃんな弟猫・コウハイがやってきた。コウハイの緊急手術、突然やってきた老猫を看取ったこと、センパイのダイエット、2匹だけでの2泊3日のお留守番、震災への備え......。2匹と2人の、まったり、時にドタバタな愛おしい日々を綴るエッセイ。

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石黒由紀子

エッセイスト。栃木県生まれ。日々の暮らしの中にある小さなしあわせを綴るほか、女性誌や愛犬誌、webに、犬猫グッズ、本のリコメンドを執筆。楽しみは、散歩、旅、おいしいお酒とごはん、音楽。著書に『GOOD DOG BOOK ~ゆるゆる犬暮らし』(文藝春秋)、『なにせ好きなものですから』(学研)、『さんぽ、しあわせ。』(マイナビ)など。『豆柴センパイと捨て猫コウハイ』、『犬猫姉弟センパイとコウハイ』(ともに小社刊)は、幅広い支持を受け、ロングテールで人気。

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