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豆柴センパイはおばあちゃん ヨロリゆるゆる、今日もごきげん

2024.09.25 公開 ポスト

【弟猫コウハイ日記】「深夜のグル活も安心」の頃石黒由紀子

ニャー!『豆柴センパイはおばあちゃん』が出版になったということで、「コウちゃんも何か言うことニャい?」って……。 まぁ、ありますよ。弟猫として、ずっと近くで見守ってきたからね。

なので「本に書いてあること、ボクから見たらこんな感じだったよ」とか、「あのとき、ボクはこんな気持ちだったんだ」なんてことを少しずつ書くね(ボクになったつもりで飼い主が)。

今回は「深夜のグル活も安心」の頃について。深夜にスイッチオン! して部屋中をグルグル歩き続けるセンパイの警備をしていたよ。

ニャルソックしてたボク。「はーい、進んでねー」しっぽでの誘導もうまくなったよ! 

センパイが部屋中をグルグル歩き続けることを、我が家では「グル活」(グルグル活動)と呼んでいる。センパイは「グルマー」。本当によく歩く。「脚腰が鍛えられていいね!」と言っているけれど、本当のところはどう?「歩く」と「ハマる」がセットの今日この頃。

部屋の隅や壁とソファの間、立て掛けてある大きな鏡の裏、椅子やテーブルの脚……。あらゆるところにハマる。センパイは「グルマー」で「ハマラー」。ハマったらずっと立ちすくんでいるので、救出するのが私たちの役目。最近は、オットか私のどちらかは必ず在宅するようにして、ふたり揃って長時間の外出はできなくなりました。困るのは、ひとりで在宅していてお風呂に入るとき。それから深夜。

深夜、ふたりとも眠っている間にセンパイが目を覚ましグル活をはじめます。そしてハマって、助けを呼ぶ声で起こされるのでした。ソファや小さなスツールを片付け、棚を壁にぴったり付けて、リビングや寝室を広い空間だけにしたつもりでも、「ここに?」

と、思いもしないところにハマる。箱と箱の間、積んである雑誌と壁の角、ベッドからはみ出した毛布、キッチンに立つ私の右足と左足の間にも。天才的なハマりに泣き笑い。本犬は大真面目。

センパイがひたすら歩き続けるのを、家の人たちは「グル活」って呼んでいたよ。グルグルとまあるく円を描くように歩き続けていたからね。もうね、延々と、なのよ。それでね、ふとね、軌道がずれてどっかへ行っちゃうこともあったの。そうするとさ、ほら、椅子にハマったり、思いがけない場所に潜り込んでしまうことがあって……。ボクたちだけでお留守番することがあったから、ふたりだけのときにハマっちゃったらまずいじゃん? それで、八角形のサークルというのを導入したわけなのよ。

以前はさ、「子ども用のプールがいい」なんて言われていたみたいなんだけど、こんなサークルができて、本当に助かるよね。犬連れでキャンプに行くときに便利らしいよ。それでね、この中でもまあるく歩けるように、家の人が、真ん中に椅子を置いの。真ん中に椅子があると、椅子に寄りかかるように進むからスムーズに歩けるのよ。

「これはいい!」って思ったね。だってさ、椅子の上にボクがいれば、センパイの近くにいられるからね。何かあったら、すぐに助けられるし、ボクとしても、センパイのトレーニングコーチみたいで気分がいいもの。ときどきは一緒に歩いたりもしたよ。

もうこの頃には、センパイ、目もあまり見えていなかったし耳も聞こえていなかったと思うんだ。それでも、気配はわかるみたいでね、「ボクが近くにいるってわかると安心なんじゃないかな」って、そう思っていたから、なるべく近くにいることにしていたんだ。センパイはなかなかプライドが高いところがあってさ、必要以上に心配されたりするが、嫌だったみたい。だから、そう悟られないようにさりげなくしてたってわけ。

関連書籍

石黒由紀子『犬のしっぽ、猫のひげ 豆柴センパイと捨て猫コウハイ』

食いしん坊でおっとりした豆柴女子・センパイが5歳になった頃、やんちゃで不思議ちゃんな弟猫・コウハイがやってきた。コウハイの緊急手術、突然やってきた老猫を看取ったこと、センパイのダイエット、2匹だけでの2泊3日のお留守番、震災への備え......。2匹と2人の、まったり、時にドタバタな愛おしい日々を綴るエッセイ。

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石黒由紀子

エッセイスト。栃木県生まれ。日々の暮らしの中にある小さなしあわせを綴るほか、女性誌や愛犬誌、webに、犬猫グッズ、本のリコメンドを執筆。楽しみは、散歩、旅、おいしいお酒とごはん、音楽。著書に『GOOD DOG BOOK ~ゆるゆる犬暮らし』(文藝春秋)、『なにせ好きなものですから』(学研)、『さんぽ、しあわせ。』(マイナビ)など。『豆柴センパイと捨て猫コウハイ』、『犬猫姉弟センパイとコウハイ』(ともに小社刊)は、幅広い支持を受け、ロングテールで人気。

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