みなとみらいは遠かった
宮本浩次「ソロ活動5周年記念ツアー 今、俺の行きたい場所」
に行ってきました。
この連載の初回で書いた、布施明のコンサートを観終わった後、あまりに良かったので、歌の上手い人のライブにもっと行きたい! と気持ちが昂まり、あれこれ探してみたところ、ミヤジのソロコンを見つけたのでした。
ツアーはこの2024年10月、ミヤジが育った東京は北区にある北とぴあさくらホールからスタートし、全国11か所14公演の予定、となっていました。その関東最終公演になる、横浜みなとみらいの、ぴあアリーナMM2DAYS。
と、しれっと書いてみたものの、「みやじ」と声に出して呼んだことはありません。内輪で話題になるときは「エレカシの宮本」一択で、そこに「ひろじね」「ひろじな」と誰かしらが被せてくる、そんな感じの宮本浩次(でも「エレカシ宮本」は自分の周囲ではめちゃくちゃ一目置かれていて、否定的な話を聞いたことがない。好感度とか愛され指数とかともまた違う何かがある)。
前々から興味と関心はあったのです。その昔、エッセイも買いました。『明日に向かって歩け』と『東京の空』。
でもその頃は、ライブに行ってみたい気持ちはあったものの、エレファントカシマシのFCに入る、という考えはなく、というか、例の(前回ここでも書いたジョニーの)一世風靡セピア以来、ファンクラブというものに入る気になれず、さりとてエレカシが出演するようなロックフェスは更に敷居が高かった。なんかあの頃(かれこれ四半世紀前?)男性ファンもすごく多かったし。
そんなわけで、以来、テレビの歌番組などの出演情報をキャッチすればチャンネルを合わせ(って今いう?)、録画したものを見返しては興奮し、できる限りの公式動画なども追い、近年は公式SNSもフォローして、「やっぱり歌上手だなー」「そもそも声がいい」「顔もいいしな」「体型も絶妙」「あとこの佇まいな。威圧感ないのに存在感あるの凄い」「味のある字書くよねー」「そうだよ小説書けばいいのに」「でも内に向かう作業増えるのもしんどそうか」「いやーもう、健やかに歌を唄っていてくれればそれだけでいいわ」などと思っていたのです。謎目線で。
つまり客観的にいえば、いわゆる「茶の間」レベルのファンという感じ。
それが今回、気が付いたときにはツアーの関東ファイナルになる、ぴあアリーナMMでの2日間のチケットが普通に一般のチケットサイトで売っていて、じゃあ行ってみようかなーと気軽に申し込んでみたところ無事購入でき、初ミヤジ(まだ書きたい)となったわけです。いやー、これはもの凄く楽しみだった!
迎えた当日。
寒かった。雨も降った。
ぴあアリはこれまでにも何度か訪れたことがあり(Travis JapanのツアーとAぇ! groupのライブで)、場所もわかっているつもりだったのに、その時はホテルに宿泊していて、駅からの道とは全然違うじゃん! と歩き出してから気付き、冬の夜は日が落ちるのも早く、え? ここどこ? もう開演20分前だけど! と彷徨い歩いた果てにようやく着席したのは5分前。
ぴあで購入した一般チケということもあり、下手(ステージに向かって左側)スタンド3階4列でした。
トラジャのオーラスはあの辺だったなーとアリーナ席を見下ろすなどしながら周囲も見回すと、思っていたより男性客は少なく、男女比は3対7くらいか、2対8くらい。これまた思っていたより年齢層も高く、40~50代がメインで上下に多少振れる感じ。私の左隣は30代と思われるカップルで、右隣は小柄で白髪の70代くらいのおひとり様。チケットが4枚まで取れたこともあるのか、家族連れや学生時代の仲間的なノリの観客も見かける。
ステージ構成ビジョンはメインステージの両端のみ。そのメンステ中央から花道がまっすく伸びて小さめの四角いセンターステージという構成で、旧ジャニ関係ではお馴染みのバックステージはなし。
チケットはコンビニ発券で、最初から3階席だと分かっていたので、持参した防振双眼鏡のピントを合わせていると、すぐに暗転し、歓声があがって曲が始まりました。
そして早々に気付かされたのです。
これは……もしや……立たないと何も見えないのでは……!!!
見えずとも感じる、ソウルフルな歌声!
正直、油断してました。だって3階席だし。エレカシじゃなくてミヤジのソロだし。みんな宮本浩次の歌を聴きに行くんだろうなと。ソロでカバー曲のアルバムも出してるから、さほどエレカシの曲は知らなくても、宮本浩次を浴びてみたい勢も多かろうと。軽率にチケットも買えたことだし。ホールの2階席だった明(布施)はもちろん、国技館2階スタンドだった民生(奥田)だって周囲もほぼほぼ着席だったので。アリーナは別として、スタンド席は落ち着いて観れるだろうなーなんて呑気に思っていたのに!!
その予想はまったく外れたわけでもなく、でも半分は当たっていました。
……半分は。でもこれが、実に厄介なことで。
オープニング早々、私の前方で(つまりスタンド3階の1~3列)立ち上がった人は4人。席が下手なので、ステージを見ようとすると、常に左斜め前に目を向けることになるわけですが、幸いにもその時は自分より右手前方の人しか立ってなかったので無問題。
しかーし、2曲目でロックアレンジされたカバー曲『ロマンス』(岩崎宏美)のイントロが流れると、左手前方の人々が半分くらい「うわーっ!」と立ち上がったのです。私の左横のカップルも。
するとどうでしょう。視界は見事に遮られ、着席したままだとミヤジの姿は確認できない状態に。特に左横のふたりが立つと、それはつまり座席の前に立つことになるので、座っている人間はその背中を見ることになるわけです。
じゃあ自分も立てばいいじゃないか、と思うじゃないですか。
でも、全員が立つならともかく、立ってるのは4割~5割程度。残りの半分は明らかに「宮本浩次をじっくり聴きに来た」層なのです。しかも、右横に座っていた銀髪のお姉さまは、ドリンクホルダーに杖をたてかけていて、私は開演前にそれを認識してもいて。つまり自分が立ったらこの人は見えなくなるな、と分かっていたので、なおさら立ち上がり難かった。
♪あなたお願いよ~席を立たないで~♪と唄うミヤジの声を聴きながら、いやみんな立つんかい! と心のうちで突っ込んだりして。
その後も、7割方「見えない時間」でした。別に着ブロ指定されているわけではないので、立って観たい人がいるのは当たり前だと思うし、座っているのも自分の都合だと分かっている。なのでその事に不平不満はなく。ただ、本来エレカシ&そのボーカリストである宮本浩次のファンな方々は、ロック系畑のノリなので、のってくれば拳も突き上げるし、頭の上で大きく手を振るし、同じく頭上で拍手もされる。見えないよねー。そりゃもう後ろは全然見えない。
<ペンライトもうちわも胸の前で。頭より高く上げるのダメ、絶対!>と刷り込まれている推し界隈とは明らかに風習が違う。これはもう部族が違うからしょうがない。
結果、視界はほぼ左隣のカップルの背中と、前方の謎に横揺れするノリの方の頭と腕に遮られた2時間半。
実はこの日、ミヤジ(まだ言いたい)は明らかに喉の調子が良くないようで、高音が出ておらず、正直、おや? あら? え? と思ったのです。最初のうちは。これがただの公演疲れなのか、風邪や何かしらの体調不良所以なのか、ライブに初めて来た身では分からないし、何しろ姿が見えないので、集中して声を聴いてしまうため尚更「これ、大丈夫?」とざわざわして。
でも、それでも! やはり宮本浩次は素晴らしかった。
声が出てなくても、下手で聞いてられない、ってことではなく。不調を補う技術があって、何より歌うことへの熱量と気迫がものすごく伝わってきて、胸を打たれる感じ。「魂」とか安易に使いたくないけど、ソウルフルな歌声とはこれまさに! だった。
なんでか不思議と泣けてきた『悲しみの果て』。情景が目に見えるようだった『Woman』(薬師丸ひろ子)。盛大に歌詞飛ばして歌いなおした『喝采』(ちあきなおみ)は、むしろライブの醍醐味だと嬉しくなってしまったし、新曲も、とても良かった。今日、この場所に来れたことに感謝するほどに。
実際ライブを観た発見&感想としては、椅子に座ったりスタンドマイクじゃない、動きなから歌う曲では、頻繁に中腰になりがちで、時にはシコも踏みはじめ、なんて強靭な足腰! と驚き、その足腰がものすごく細いことにも驚いた。テレビで見ても細いんだからそりゃ細かろうが、上半身の 幅も厚みもほそっ! うっす!! だった。推し界隈でいうなら、田中樹か矢花黎か今野大輝くらいの衝撃。
センターステージから、まさかの客降りもあって、アリーナの通路を歩いて周回するのにもビックリ。意外に投げチューとかバンバンしていて、ファンサするんだ!? という意外性も。
でもそんなことより、声が出なくても、体調がイマイチそうでも、歌い続けて感謝を言葉にして、どうにか少しでも伝えたいと足掻きながらステージに立つ姿がめちゃくちゃカッコ良かった。そりゃみんな惚れるよこんなの!
総じて、行って良かった宮本浩次。
機会があったらまた行きたい。気になって調べたFCが破格的に安かった(界隈でいえばジュニアの年会費と同じくらい)ので、今度は総立ちのアリーナに降りられるよう、入会する予定です。万全のミヤジも「見たい」し。
追記:今日も靴は尖りめでした。
だらしなオタヲタ見聞録
20年以上、毎日300~500歩程度しか歩いていなかった超絶インドアだらしな生活だったのに、突然フッ軽オタ道を走り出したこの数年。もう「いつかそのうち」なんて言ってられん! 見たいものは見ておきたい! 寄る年波を乗り越えて、進め! ヨタヨタオタヲタ見聞録。