『夢みるかかとにご飯つぶ』でエッセイストデビューした清繭子の、どちらかといえば〈ご飯つぶ〉寄りな日々。
夢みる幹事
飲み会の幹事に、できるだけなりたくない。
お店を気に入ってくれるだろうか。会費は妥当だろうか。当日みんな来てくれるだろうか。お付き合いで仕方なく参加させちゃってないだろうか。盛り上がるだろうか。
心配が尽きない。それなのに、私は割と幹事になる。
思いついてしまうのだ。「この人とこの人、絶対気が合う」「あの人とあの人が喋ってるところ見たい」。幹事をしたくない気持ちより、その会を開きたい気持ちがいつも上回って、それで気づいたら幹事になっている。
先日、連載「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」でつながった小説家のみなさんと集まった。
以前、関東近郊に住む連載メンバーでご飯会をしたことがあり、赤松りかこさんが「今度はうちでぜひ!」と言ってくださったのだ。会場もみんなの参加意欲も確定済みで、今回は幹事というより連絡係なので気が楽だ。
でも私は思いついてしまった。
「この会に朝比奈秋さん呼んだら面白くない!?」
なぜなら、りかこさんは獣医師で秋さんは外科医。それぞれの作品にも「身体とはなにか」「命とはなにか」が深く描かれている。この二人のコラボ……、見たい!
会の日の二週間前に秋さんに取材する予定があった。初対面である。厳粛な仕事の場である。もっと言えば、秋さんは今をときめく芥川賞作家である。
いけるか、自分? 誘えるか、自分?
りかこさんに「秋さんを誘おうと思って」と話したら「いいですね~、推しの内臓の話とかしたいですね~」。なにそれ、ますます見たいぞ!
そして取材当日。取材は盛り上がって、お約束の倍の時間、話してくださった。よし、この流れで切り出せ!
「それでですね、〇日、連載のみなさんと赤松りかこさんちでご飯食べるんですけど、よかったら朝比奈さんも来ませんか?」
なにが「それで」なのか我ながら不明のまま、切り出す。ポイントは日時がもう決まっていること。もし、秋さんが来たくなかったら日時を理由に断れるだろうし、断られた私も気まずくない。
すると秋さんはちょっと考えて「あ、じゃあ……。ちょっと前に用事があるので遅れますが行きます」と答えた。やったあー!
そして当日。りかこさん、大田ステファニー歓人くん、小泉綾子ちゃん、タカノシンヤくんと盛り上がるなか、約束どおりちょっと遅れて秋さんが到着。
りかこさんと秋さんは推し内臓の話で盛り上がり、ふぁにちゃんと秋さんはともに三島由紀夫賞受賞、綾ちゃんと秋さんはともに林芙美子賞受賞なので盛り上がり、タカノくんは秋さんにラジオ番組出演のオファーをし、私は小説の相談を持ち掛け、いつの間にかみんなが秋さんを「兄貴」と呼び始め、気づいたら終電まで喋り続けていた。素晴らしく楽しい会になった。
帰り道、みんなからの「楽しかった!」メールにニヤニヤしながら、「次はあの人も呼んだら面白くない!?」と思いついている自分がいた。
夢みるかかとにご飯つぶ
好書好日連載「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」が話題の清繭子さん、初エッセイ『夢みるかかとにご飯つぶ』刊行記念の特設ページです。
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