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夢みるかかとにご飯つぶ

2024.09.29 公開 ポスト

【夢ごは日誌】時々会いたくなる家族清繭子

夢みるかかとにご飯つぶ』でエッセイストデビューした清繭子の、どちらかといえば〈ご飯つぶ〉寄りな日々。

時々会いたくなる家族

39度の熱が出て、子どもたちにはレンチンのエビグラタンと納豆とヨーグルトというありあわせにもほどがあるご飯を出し、自分は一階の寝室でマスクをして伏せっていた。

下の子が階段をどんぐりが転がるように駆け下りて来て、「もうおなかいっぱいだから、さきによーぐるとたべていーい?」と聞きに来た。

どのくらい食べたの? と聞くと、「ぐらたんをたべたよ、なっとうたべないの。くちがべたべたになるから」と言う。

じゃあいいよ。もう今日は栄養とかどうでもいいや。

しばらくすると、またどんぐりの音がして、下の子が駆け込んでくる。一応自主隔離のつもりなんだけどな……。

「もっとおやつたべたいきぶんなの。たべていーい?」

グラタンは全部食べたんだよね?

「たべてない。ちょっとのこってる」

全部食べなきゃダメ。

「はぁーい」

しばらくすると、またどんぐりがやってきて、

「たべたよ。おやつなにがある?」

いつもの引き出しにグミがあるよ。

「グミあるって~!」

その後2人でキャッキャ言い合っている声が上から聞こえてきた。

上の子は全然降りてこないんだなあ、もう小学生だもんなあ。

と、ちょっと寂しく思っていたら、

どどどどっと大太鼓と小太鼓が転がり落ちる音がして、二人してやってきて布団の上で相撲を取りだしたので、前言撤回。ガラガラ声で叱って追い出した。

同じ家の中でも時々会いたくなるのが家族だな。時々でいいけどさ。

関連書籍

清繭子『夢みるかかとにご飯つぶ』

母になっても、四十になっても、 まだ「何者か」になりたいんだ 私に期待していたいんだ 二児の母、会社をやめ、小説家を目指す。無謀かつ明るい生活。 「好書好日」(朝日新聞ブックサイト)の連載、「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」が話題のライターが、エッセイストになるまでのお話。

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夢みるかかとにご飯つぶ

好書好日連載「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」が話題の清繭子さん、初エッセイ『夢みるかかとにご飯つぶ』刊行記念の特設ページです。

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清繭子

エッセイスト。1982年生まれ、大阪府出身。早稲田大学政治経済学部卒。

出版社で雑誌、まんが、絵本等の編集に携わったのち、小説家を目指して、フリーのエディター、ライターに。ブックサイト「好書好日」にて、「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」を連載。連載のスピンオフとして綴っていたnoteの記事「子どもを産んだ人はいい小説が書けない」が話題に。本作「夢みるかかとにご飯つぶ」でエッセイストデビュー。

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