それでも新しく生まれ変わるのならば - LISA『New Woman feat. ROSALÍA』カワムラユキ（DJ/作家/作詞家/プロデューサー）

誰かを待つ時間、その人が来たときの第一声を考えたり、そのあとの時間に思いを馳せたり、あるいはメールチェック、SNS、携帯ゲームなど、過ごし方はさまざま。
そんな「待つ時間」にそっと寄り添う音楽をモチーフに、DJ、作詞、音楽演出など幅広い活動をしているカワムラユキさんに言葉を綴っていただきます。

 

あらゆる正解がすべて不正解として、見慣れた景色を通過するタイミングがある

不正解は時に正解の側面を個別に見出し、それぞれの闇に一条の光を授けることも

 

器量を越える行動は己の首を絞め、美しく着飾ったドレスの裾からゆっくりと汚して

君は僕の朽ちてゆくメランコリアを目に焼き付けることはなく、自ら暗示にかからぬようにだけ手を差し伸べる

 

すんなりやれていた手仕事には、作戦を考えたり伏線回収に躍起になるほど、戸惑いだけが宿り

繰り出せていたデフォルトの神技は遠のいて、流れの綺麗な詰将棋みたいな仕事へと仕上がってしまう

 

焦がれた静寂が散らかった頭の中では、想像力を掻き消すノイズとなり、疲労感だけを漂わせ

君は真っ直ぐな眼差しで言い訳や迷いのない世界へと、冴え渡る決断だけを放り込むのに、僕は途方に暮れて

 

神泉の裏通りに蔓延する大きな声はあげてはいけないという、勘の鋭い人にだけ共通する認識とか

逆に何もルールブックの存在には触れずに、適当に与えられた享楽に動物然として対峙する彼らの存在とか

 

世界は秩序を気にする人だけを置いてきぼりにする

 

それでも新しく生まれ変わるのならば、真理や宿命にとらわれる事なく、ただ自由に

あっけらかんと軽やかに、負の波動だけを駆逐して、真っ白なシャツに着替えて外に出かけてゆきたい

 

だから僅かでも微笑みを誘い出す契機を掴める術をイメージして、気まぐれな君の怒りや我儘でさえ

スイーツを頬張るように、僕の中でエネルギーに変換して、俗世間へとパッと放ってしまおう

 

先ずは目的だけを定めずに歩いて、そして愛して、そこに佇んで

 

 

LISA『New Woman feat. ROSALÍA』（2024年、Lloud Co./RCA Records, MXM Music, Wolf Cousins）