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おっさんだって、やりたいよ!

2024.10.03 公開 ポスト

振り付けの練習、感動押し売りMC…老害ミューシャンが共感できない、若手バンドあるある3選スギム(クリトリック・リス)

職業を聞かれたら、「一応……ミュージシャン」て答える。頭に「一応」を付けて「一応ミュージシャン」。

胸張って「ミュージシャン」と名乗りたいけど、ドームツアーなんて夢の夢だし、麦焼酎と芋焼酎の違いは分かっても、格付けチェックの高級ワインなんて口にしたことも無い。世間がイメージするミュージシャン像からかけ離れ過ぎてるので申し訳ない。

子供に「ミュージシャンの絵を描いて」と言うと「楽器を持った細身のロン毛」を描くでしょ?

「中年太りしたパンツ一丁のハゲおやじ(クリトリック ・リス)」をもし描いたら「上手に描けたわね、だけどハリウッドザコシショウはミュージシャンじゃなくて芸人よ」て笑うでしょ?

 

 

ライブハウスに通うようになって30年以上が経つ。1度も行くことなく一生を終える人も多いんだろうなぁ? 世の中でライブハウスに行ったことのある人は3割程度だと言われているので、日常的に通っている人はそこから更にふるいにかけられた激レアさんだ。

昔と比べて出演者の感じも随分と変わった。ソバージュでベルボトムジーンズを履いてジャックダニエルのボトルをステージに持ち込んで、へべれけになりながら演奏するタイプは絶滅してしまった。今のバンドマンの多くは街を歩いてる人と同じようなカジュアルファッションでステージに立ち、酒も飲まず、精算が終わると打ち上げに出ず帰ってしまう。

イラスト:スギム

往年のロックスターはみんな破天荒だった。悪態をついて他バンドに喧嘩を売り、パーティとドラッグに明け暮れ、物を破壊する。バカッター並みにレベルの低い素行だけど、ロックンローラーとしてのアイデンティティを保つために頑張っていたんだと思う。

今は、顔出しをせずライブもしない、配信リリースだけといったアーティストも多い。キャラクター先行型は終わりを迎え、バンドマン像は「破天荒な不良」から「音楽にストイックなオタク」へと変化した。まわりを見渡せば、目が隠れるぐらいのパッツン・ボブのカリメロ野郎だらけだ。

CD販売は不調だけど、音楽フェスは増加傾向にあるらしい。そのためかフェス映えするバンドが増えた。彼らはライブにギミックを加えて、客を巻き込むパフォーマンスを行う。

ではライブハウスでみる最近の「若手バンドあるある」を3つ紹介しましょう。

(1) 曲を始める前の練習

「次やる曲のサビを一緒に歌ってください」とか「一斉にジャンプしてください」とか「振り付けはこうです」など、曲を始める前に練習させられる。

野外フェスで有名アーティストがそれをするなら従いましょう。だけど大してお客が入っていないライブハウスで、好きでもない無名バンドの聴いたこともない曲でさせられるのは正直キツいです。

更に「全員やるまで続けますよ!」と連帯責任を課せられ参加しない者は晒される。自由や個性が尊重されるライブハウスで協調性の押し付け。これは演者としての立場を利用した立派なパワハラです!

(2) 感動の押し売りMC

照明が落ち、ボーカルがペットボトルに口をつけ、ギターがゆっくりとアルペジオを弾き出すとMCタイムの始まり。

「はぁ。はぁ。」とマイクにわざとらしい荒い息を乗せて喋り出す。その一生懸命アピールはいるか? 耳障りや。喋って無い時ぐらいマイクを離して荒い息をカットしろや。我の場合は体力が無いと思われるのが嫌だから、疲れていても鼻の穴をめっちゃ膨らませながら鼻呼吸して息切れしてないように見せてるけどね。

MCのテーマは、大体「夢」「感謝」「応援」のどれかだ。我も経験あるけど、ステージの魔力によって、身の丈に合わないデカイことや臭いセリフも平気で言えちゃう。あと自分が影響受けたミュージャンに曲だけでなくMCまで寄せがち。方言を強調して喋ったり、客のことを「あんたら」とか「オメェら」と言う。

「今はまだこんなんだけどよぉ、やってやっからよぉ! いつか武道館やってやっからよぉ! オメェらも付いて来いよな!」

出会って数十分しか経ってないめっちゃ年下の奴に「オメェら」扱いされて、夢語られて、説法をとかれて、「付いて来い」は無いわ。いいこと言って感動させようとしてんのかもしれんけど、普段はフリーターかニートやろ? 武道館の前に国民年金保険を満額自腹で払えるように頑張ろうや。

イラスト:スギム

(3) 無茶苦茶した後の「ありがとう」

「この後もいいバンドが続くので最後まで楽しんでいってください」

昔からある定型MCだけど、初めて対バンするバンドもいるのに「いいバンド」って適当な事を言うなて。「最後まで楽しんでいってください」て客に言っときながら自分らの出番が終わったら楽屋に閉じこもって共演者のライブを観ない奴だって居る。

「それじゃあ……次が最後の曲です。PAさん! 今日イチの、デッカイ音で、お願いします」

見てみぃ! そんなことを急に言い出すからPAさんが慌てとるやろ。どうせ毎回言うてんねやろ? リハーサルで事前に伝えとけよ!

そしてここぞとばかりの激しい曲がスタート。ヘドバンしながらギターをかき鳴らし気分はカート・コバーン。最後はギターを振り回し、そのまま叩き壊すか……と思いきや……床にそっと置いて(狂ったように見せかけて実は冷静)、「ブーーーーーン」というギターノイズの中、無愛想に「ありがとう」と吐き捨ててステージを去る。

おーーい! 散々暴れ回ってやりたい放題して、君は気持ちええかもしれんけど、こっちは長時間うるさい音に付き合わされたんやぞ、そこは「ありがとう」じゃなくて「申し訳ございませんでした」と謝れ!

イラスト:スギム

これらのパフォーマンスが当てはまった若手バンドマン、気を悪くしないでね。心が荒んでしまった哀れな老害のたわごとだと思って流してください。本当は純粋で真っ直ぐな君達が羨ましいのです。打ち上げに出て欲しいのです。仲良くなりたい、ほんでお願いします、女性客を少しはこっちにまわしてください。

 

ライブハウスには多種多様な人が出演している。多くの人を感動させることのできるメジャー・ミュージシャンは本当に素晴らしいと思う。だけど一般受けしないコアな部分を追求し続けている人だって凄いんです。

下手くそで荒いけどこれから成長していく姿を間近で観測しながら応援できるのもライブハウスの醍醐味だ。不良が溜まる危険で怖い場所とは過去のイメージで、フロアは禁煙、子供連れの客も珍しくない、想像以上に健全です。無名ミュージシャンがあなたの心の奥深くにあるコアを射抜くことだってあると思う。人生が変わった人、救われた人を何人も見てきた。先入観を捨てて、ちょっとの勇気を出して、雑居ビルの階段を降り、重い防音扉を開いてみてください。そこはマイノリティが集うニッチな楽園。太陽の光が差し込むことは無いけど、ゆっくり自転するミラーボールの光があなたを優しく迎えてくれるでしょう。

10月はライブハウス初心者にもおすすめのクリトリック ・リスのワンマンが名古屋と東京であるので是非!

  • 10/17(木)名古屋・吹上鑪ら場
    【クリトリック・リス 着座ワンマン】    
  • 10/29(火)東京・西永福JAM
    【クリトリック・リス 生誕3時間ワンマン】

*   *   *

ライブ情報

◯ 11/4(月・祝) 東京・池袋「ブクロ放題2024」
◯ 11/5(火) 大阪・梅田BANGBOO「天下一不毛会」
◯ 11/9(土) 大阪・心斎橋サーキットフェス「STORMY DUDES FESTA」
◯ 11/10(日・昼) 愛知・尾張旭さもと館「宴会旅館フェス2024」
◯ 11/10(日・夜) 京都DEWEY
◯ 11/15(金) 愛知・名古屋R.A.D【OLEDICKFOGGYツーマン】
◯ 11/16(土) 南堀江SOCORE FACTORY
◯ 11/17(日・昼) 大阪・難波Mele
◯ 11/17(日・夜)愛知・大阪・名古屋新栄HEARTLAND
◯ 11/19(火) 東京・高円寺HIGH
◯ 11/23(土) 高崎ジャマーズ
◯ 11/24(日・昼) 東京・渋谷ラママ
◯ 11/24(日・夜) 大阪・十三ガブ【しょんべんフェス】
◯ 11/26(火) 大阪・堺ファンダンゴ
◯ 11/30(土) 東京・四谷アウトブレイク
◯ 12/1(日) 埼玉・熊谷モルタルレコード【後藤まりこツーマン】
◯ 12/3(火) 東京・渋谷ラママ
◯ 12/7(土) 東京・下北沢ライブサーキット「下北沢にて」
◯ 12/9(月) 宮城・仙台フライングサン【※クリトリック・リス ワンマン】
◯ 12/10(火) 大阪・北堀江club vijon
◯ 12/13(金) 福岡・博多ライブハウス秘密【※クリトリック・リス ワンマン】
◯ 12/18(水) 名古屋・今池ハックフィン【※クリトリック・リス ワンマン】
◯ 12/20(金) 東京・新代田フィーバー【※クリトリック・リス ワンマン】
◯ 12/22(日) 沖縄・宮古島グッドラック
◯ 12/25(水) 大阪・堺ファンダンゴ 【※クリトリック・リス ワンマン】

チケット:フォーム予約

メディア出演

茨城放送ミッドナイトクレイジーラジオ 毎週土曜日22~23時 放送中

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おっさんだって、やりたいよ!

中年サラリーマンが酔った勢いで初ライブ、その後脱サラし各地のライブハウスやフェスのサブステージを湧かして回る。パンツ一丁で人生を歌う「サブステージの王様」、クリトリック・リスことスギムのエッセイ連載スタート!

バックナンバー

スギム(クリトリック・リス)

ソロ音楽ユニット「クリトリック・リス」として活動中。

音楽経験のまったくなかった中年サラリーマンが酔った勢いで、行きつけのバーの常連客達とバンドを組むが、初ライブ当日に他のメンバー全員がドタキャン。やけくそになりパンツ一丁で楽器を持たずに行った即興パフォーマンスが、コミカルでありながらなぜか感動してしまうと話題となる。42歳で脱サラして以降は、全国のライブハウスをドサ回りしながら生活している。

X(Twitter): @sugi_mu
ライブスケジュール&予約: クリトリック・リス ライブ 前売り予約フォーム

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