1. Home
  2. 生き方
  3. 歌詞には書けない愛の話
  4. 私は誰なのか、毎朝絶望で目覚める

歌詞には書けない愛の話

2024.10.03 公開 ポスト

私は誰なのか、毎朝絶望で目覚めるほのかりん(シンガーソングライター)

「りんちゃんは、めちゃくちゃ寂しがり屋なんだね」
池尻大橋のバーで、マスターに言われた一言がずっと刺さって抜けない。日が経つにつれ、氷が溶けるようにじわじわと私の心を湿らせる。

理解してくれたことが嬉しかったのか、見つけてくれたことが嬉しかったのか分からないけど、私は人間関係が依存的になってしまうので、それからマスターの店に行くのが怖くなってしまって行けてない。もっと私を見つけられてしまったら、もっと溶けてしまう気がして。

 

私はひとりぼっちの夜よりも、目覚めて快晴の青空を見た時の方が絶望する。一人の夜は誰かとお揃いだけど、青空の下でひとりなのは私だけ置いてかれている気がしてしまう。

……どこかに出かけなきゃ。なにかをしなくちゃ。急いで目的を見つけないと。

どこかに出かけなきゃ。どこに行きたいんだっけ。どこに行ったら、私は喜ぶんだっけ。

なにかをしなくちゃ。なにをしたいんだっけ。なにをしたら、私は満たされるんだっけ。

好きなことがわからない。わたしは誰なんだっけ。どこで生きてていいんだっけ……

この思考に、毎朝目覚めてすぐ、抗う間もなく落ちていく。昔書いたふわふわという曲に「眠れない夜見た星空より、青空が涙を誘い込む」という歌詞がある。この曲を書いたのは2018年で、この6年考えてることずっと変わってない。

どうしても、この世で寂しさを感じてしまう。

寂しいのは嫌だから、どうにかして逃げ出したいのに、やりたいことがわからない。好きなことがわからない。

♯   ♯   ♯

若い頃はやらなくてはならないことをやればまだ人間として生きられていた。いや、ただ前に進んでいると勘違いしていたのかもしれない。

今は果たして人間として生きられているのか。目の前の仕事だけして、ウーバーを頼み、クソだけ生み出し、家から一歩も出ない。

久しぶりに外に出たと思ったら、人前でヘラヘラして無駄に傷ついたり、疲れたりして帰る日々。

人に会うと余計に自分が誰だかわからなくなる。

愛されたいが為に、ひっくり返って腹を見せて尻尾を振ってしまうから。この、バカデカい漠然とした寂しさの話は、あまり人にわかってもらえない。

良くて「そんなことは誰しも感じることだし、思うことで必然的なものだ」と言われるくらいだ。

ハァーーーー!?!?!こっちは真剣に悩んでるんですけどー♪しばくぞ☆!

これだから人に悩みを話すのは嫌いだ。昔何度かお世話になった占い師にこの話をしたところ、「あなたは40歳位まで自分探しが続きます」と言われた。「こ、これをあと10何年もしなければならないの……!?」とまた絶望した。

〽   〽   〽

私が11歳の頃から身を沈めている、この芸能界という世界では特に「自分は誰なのか」ということをしっかりと理解していなければいけない。と、最近よく思う。

10代の頃は、やれと言われたことをひたすら全力でやるというエネルギーだけで稼働していた。

求められることをどれだけ返せるかが私の中で大事で、「自分」に必要を感じなかった(恥ずかしいがカメレオン俳優と言われたかったのもあるテヘ)。

だが、今はやはり「何をしたいのか」を問われている気がする。

音楽に関しても、こういうエッセイを書くにしても、生きるにしても、「お前は誰で、何をしたいのか」を答えられないものは、金が出たぞ!と聞いて鉱山に向かうだけで、いたずらに身体と心を擦り減らしていくのだ。

やりたくないことばかりが増えて、やりたいことが余計にわからなくなってしまった。

今歩んでる道は本当に正しいのか?これから選ぼうとしている道は本当にやりたいことなのか?間違った道ではないか?最短ルートか?正規ルートか?

最早、道を選ぶのも億劫なのだ。

♡   ♡   ♡

散々自分探しをしてきて、未だに自分が誰なのかは把握できないが、一つ決めたことがある。

「自分がして欲しいことを、まず他人にしてあげる」ってことをモットーにして生きてきたが、これをやめることにした。貰ったから返してやろうという義理堅い人間はめちゃくちゃ少ない。ただの奉仕活動になってしまうことに気がついた。

そもそもこれって、してほしいからしてやるっていう下心が丸見えだし。

代わりに「自分がして欲しいことを、自分にしてあげる」ことを大事にしようと思った。昔先輩たちが口を揃えて「自分を大切にしなさい」と言っていた。

その度に、自分を大切にするという意味が全然わからなかったけど、今はこういうことだったのかなと思う。

自分探しの過程で、自分が誰かわからない状態で歌詞を書いても仕方がないのでは?というフェーズに陥って全然歌詞を書けない時期があったんだけど、やっぱり誰に相談しても解決しなかった。

結局、私が言って欲しかったことを自分に投げかけてあげた時、そのフェーズを抜け出せることができた。

前に進めていなくても、そこで足踏みをしていようとも、それも私なのだ。

今悩んでることも、今しか悩めないことなのだから、そのままを歌詞にしてやる。

次の新曲も、いつも通り等身大の私です。

お楽しみに。

{ この記事をシェアする }

歌詞には書けない愛の話

シンガーソングライターとして活動するほのかりん。歌という表現を超えて、一人の女性として、心のうちをさらけだす。表現者として新たな挑戦となるエッセイ、新連載!

バックナンバー

ほのかりん シンガーソングライター

神奈川県出身。幼少の頃からモデル/タレントとして活躍。現在はシンガーソングライターとして活動中。女の子の心に突き刺さる鋭い言葉と親しみやすくもドラマチックな曲調でティーンを中心に支持を集めている。

この記事を読んだ人へのおすすめ

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP