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うかうか手帖

2024.11.09 公開 ポスト

ホテルオリジナルのフレンチトースト益田ミリ(イラストレーター)

東京から横浜旅。

開港カレーを食べ、ロープウェーに乗り、オリジナルカップヌードルを作ったあとはのんびり歩いて中華街へ。夕飯に水餃子を食べる。宿泊先は中華街にも近く、山下公園のすぐ目の前「ホテルニューグランド」。1927年開業のクラシックホテルである。

日本クラッシクホテルの会には現在9つのホテルが名を連ねており、「ホテルニューグランド」もそのひとつ。

「ホテルニューグランド」の一階には「シーガーディアンII」というバーがあった。

大人になったとはいえ、お酒に弱いわたしにとってバーというところはハードル高め。しかし、宿泊先のホテルのバー、となるとハードルはさほど高くなく、なんなら低め。宿泊客には割引がある場合も多く、「宿泊してるし、ちょっと寄ってみました」みたいな顔で入っていける。お会計もその場では払わず「お部屋付けでお願いします」とかなんとか。

廊下から見るよりバーの中は広かった。小部屋のように間仕切りがあり、すべてが見渡せない感じが妙に落ち着く。古い洋館の書斎みたいな重厚感である。

ヨコハマ、という名のカクテルがあった。ちっこいカクテル・グラスで飲むやつだ。ノンアルにもできるとのこと。季節の果物のカクテルは巨峰のフローズンで、わたしはそれをノンアルで。

バー体験を楽しんだ後は部屋に戻ってのんびりテレビ。使い捨てのスリッパのクオリティが高すぎて恐縮する。もう、ふっかふか! 手頃な部屋を予約したけれど、海や観覧車もなんとか見え、洋食の朝食会場になっていたレストラン「ル・ノルマンディ」からはベイブリッジが見渡せた。

ホテルオリジナルのフレンチトーストを選んでみた。フレンチトーストにベーコンとチーズがサンドしてあった。チーズはトロトロ。甘じょっぱさがクセになる。

 

11時、チェックアウト。ホテルから歩いてすぐの「横浜人形の家」へと向かう。ホテルにあったチラシで知って行ってみたのだが、なかなかの見応えだった。

丁寧に作り込まれたドールハウスが展示されていた。

ミニチュアの家具、ミニチュアの食器。ミニチュアの食べ物。

ずーっと見ていられるくらい楽しい。説明書きによれば、ドールハウスは16世紀後半のドイツとオランダで始まり、その後、イギリスやアメリカに広まったという。

日本のこけしや、世界各国から集められた人形たち。ショーケースの中は平和だった。みな仲良く並んでいた。

さようなら。

人形たちに別れをつげる。楽しくて思いのほか長居したので喉がカラカラ。すぐ近くのマクドナルドに寄れば、ここにも人形が。

久しぶりに見るドナルド人形である。

彼は海を背にしてベンチに座り、マクドナルドの店内を見ていた。せっかくなのでドナルドと向かい合ってアイスコーヒーを飲む。ドナルドをまじまじと眺めた。笑っているようで笑っていない、何か言いたげな表情だった。

ドナルドの向こうに山下公園をランニングしている人々が見えた。もうすぐ秋が訪れようとしていた。

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うかうか手帖

ハレの日も、そうじゃない日も。

イラストレーターの益田ミリさんが、何気ない日常の中にささやかな幸せや発見を見つけて綴る「うかうか手帖」。

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益田ミリ イラストレーター

1969年大阪府生まれ。イラストレーター。主な著書に、漫画『すーちゃん』『僕の姉ちゃん』『沢村さん家のこんな毎日』『週末、森で』『きみの隣りで』『今日の人生』『泣き虫チエ子さん』『こはる日記』『お茶の時間』『マリコ、うまくいくよ』などがある。また、エッセイに『女という生きもの』『美しいものを見に行くツアーひとり参加』『しあわせしりとり』『永遠のおでかけ』『かわいい見聞録』や、小説に『一度だけ』『五年前の忘れ物』など、ジャンルを超えて活躍する。

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