『夢みるかかとにご飯つぶ』でエッセイストデビューした清繭子の、どちらかといえば〈ご飯つぶ〉寄りな日々。
ママだってカラオケで新曲を歌いたい
時々、近所の友達と朝8時半に集まって、2時間だけカラオケをする。なんと朝だと室料が50円/30分なのだ。
子どもを産んでから、音楽シーンについていけなくなった。理由は色々ある。イヤフォンをしていたら子どもの声が聴こえないから。テレワークで通勤がなくなったから。テレビのチャンネル権が私にないから。一人の静かな時間がないから。
だから歌うのは、もっぱら一昔前の歌だ。どの曲にも当時の恋愛やら人間関係やらの甘酸っぱいエピソードがあるけれど、それも今の自分からは遠いことなのだな、と少しさみしい。歌になるようなドラマティックな出来事は私にはもう起こらない。
だけど、この間、私にも「新曲」があることに気づいた。
保育園からの帰り道、桃色の夕陽を「きれいだねえ」と子乗せ自転車を走らせながら、子どもと一緒に「にじ」という童謡を歌った。この歌を私は、子どもから教わった。ちょっと切なくて、だけど希望のある、しみじみといい歌だ。
そうそう、「おかあさんといっしょ」の「ぼよよん行進曲」もいい歌なんだよな。「いるよ」の作詞が谷川俊太郎で、作曲が細野晴臣でびっくりした。
そういえば、友達が「子どもに教えてもらった」という若いバンドの若い歌を歌っていた。子どもが大きくなったら、そういうことも増えるのかもしれない。それでいつか一緒にライブに行ったりしてさ。そこはほら、大人の財力と行動力でさ。
うん、これからのミュージックライフもわるくない。
夢みるかかとにご飯つぶ
好書好日連載「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」が話題の清繭子さん、初エッセイ『夢みるかかとにご飯つぶ』刊行記念の特設ページです。
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