『夢みるかかとにご飯つぶ』でエッセイストデビューした清繭子の、どちらかといえば〈ご飯つぶ〉寄りな日々。
痛み度7は、正当な患者ですか?
前回書いた通り、苦渋の決断で救急車を呼ぶと、10分も経たないうちに救急車が到着。救急隊員が家に入り、心拍数や血圧、瞳孔などを確認。担架にのせられ、救急車へと運ばれた。これで病院で見てもらえる……と安心したのもつかの間、救急隊員が車内で受け入れ先を探すも、連続で断られる。
やっぱりお腹の痛みなんか、大したことないと思われてるんじゃないだろうか。このままたらい回しにされるのか――。
救急隊員が「病院から、死ぬほどの痛みを10として、今どのくらいですか? って聞いてます」と私に尋ねる。
ど、どうしよう、10というほどではない。でも10と言わないと、「じゃ、ダメです」って断られる? けど、ほかに10の人がいるとしたら、その人に譲るべきだし、やっぱりウソはつけない……。
「な、7です」正直に言った。
それを救急隊員はまた病院へ伝え、やりとりが続いている。やっぱり7じゃダメなの……? また不安に火がついて、同時に痛みが増してくる。
「すびばせん……。め、迷惑かけたくなかったんですけど……、我慢しようと思ったんですけどっ、で、できなぐで……」涙があふれてくる。
すると救急隊員のおじさんは「よく頑張りましたよ。15時から痛かったんですよね。ご自身でも探そうと頑張ってくださったんですよね、本当によく我慢しましたね、呼んで下さってよかったですよ。絶対病院見つけますからね」と優しく言ってくれた。
もっと涙が出てきた。
おじさんが約束してくれたとおり、その後受け入れてくれる病院が見つかり、無事に運ばれた。
車椅子で診察室へ運ばれ、当直のサバサバとした先生が「じゃあ、見てみるね」と内診、血液検査と尿検査をしてくれた。おそらくミレーナを入れた際になんらかのばい菌が入り、増殖して炎症を起こしたのだろうということだった。
「まれにそういうことがあるの。アンラッキーだったと思うしかない。せっかく入れたけれどこのままひどくなるようだったら、治療は中止でミレーナも取らないと」ということだった。トホホ……。
でも、私がネットで調べて怖がっていた卵管捻転や卵巣破裂なんてことにはなっていなくてホッとした。座薬の痛み止めをされ、これで帰されるのかなと思ったら、「ここから悪化する可能性もあるし、入院したほうがいい」とのこと。その瞬間、思わず尋ねていた。
「じゃあ、私、救急車呼んでよかったんですよね?」
「ええ、よかったですよ」
そこでようやく安心して正当な患者になれた気がした。
(つづく)
夢みるかかとにご飯つぶ
好書好日連載「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」が話題の清繭子さん、初エッセイ『夢みるかかとにご飯つぶ』刊行記念の特設ページです。
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