鯨井あめさんの最新刊『白紙を歩く』(10月23日発売)は、天才ランナーの風香(ふうか)と小説家志望の類(るい)が織りなす青春友情小説です。
性格も好きなことも正反対な2人の女子高生を、大人気イラストレーターの丹地陽子さんの装画とともにご紹介します。また、ストーリーのカギとなる小説もご紹介。ぜひお楽しみください。
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登場人物紹介
定本風香(さだもと・ふうか)
高校2年生。身長170cm。健康的な肌とすらっとした佇まい。
校内で知らない者はいない陸上部のエース。スポーツ推薦で高校に入学した。本人に野望はなく、「優勝して嬉しい」「2位だから悔しい」という感情はない。飽き症で集中力がないことにコンプレックスを持っており、読書家な類に憧れている。「変わってるね」と言われることが多いが、風香はピンときていない。
明戸類(あけど・るい)
高校2年生。くるくるの巻き毛にフレーム付きの眼鏡が特徴。
本の虫で小説家を目指している。自分に甘く、好きなこと以外は何もしたくない性格。「やらなくてもいいけどやった方がいいこと」は迷わず「やらない」ことを選択する。父の転勤で幼い頃から転校を繰り返していたため、友達の作り方が分からない。小説に救われた経験から、「小説は万能。物語は人を救う」と信じている。運動が大の苦手で、校内マラソン大会が苦痛。
あらすじ
「あなたをモデルに、小説を書いてもいい?」
ケガをきっかけに自分には“走る理由”がないことに気付いた陸上部のエース、定本風香。「物語は人を救う」と信じている小説家志望の明戸類。梅雨明けの司書室で2人は出会った。
付かず離れずの距離感を保ちながら同じ時間を過ごしていくうちに「自分と陸上」「自分と小説」に真剣に向き合うようになっていく風香と類。性格も好きなことも正反対。だけど、君と出会わなければ気付けなかったことがある。
ハッピーでもバッドでもない、でも決して無駄にはできない青春がここに“在る”。
作中に登場する重要な小説
小説現代長編新人賞受賞作『晴れ、時々くらげを呼ぶ』(講談社)など、作中に小説を取り入れることを得意とする鯨井さん。今作にも「類が風香におすすめする小説」として、時代を超えて愛される2作品が登場します。読んだことがある方もない方も、ぜひ『白紙を歩く』とともにチェックしてみてください。
友情を、青春を、愛を描く。太宰は、21世紀を生きる僕たちの心に迫る。
恋をしたのだ。そんなことは、全くはじめてであった――。青年の独白から始まる「ダス・ゲマイネ」。かばんひとつさげて、その峠を訪れた。私は、富士に化かされた(「富嶽百景」)。朝、目を覚ましてから寝床に入るまで、少女の心理を鮮やかに捉える「女生徒」。そして、命を賭けた友情をきりりと描いた永遠の名編「走れメロス」。九つの物語が万華鏡のようにきらめく短編集。
大切なことは、目に見えないんだよ――幸せになる秘密を知った王子さまが、すべての人々に贈る奇蹟のプレゼント。
童話として訳された「星の王子さま」は、大人へ捧げられた作品だった。仏語の原作に最も近い新訳で再生する永遠の名作。
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類がハッピーエンドを書けない理由とは。そして、類は風香を救えるのか。10月23日発売の書籍で、その答えを見つけてみてください。
白紙を歩く
天才ランナーと小説家志望。人生の分岐点で交差する2人の女子高生の友情物語。
ただ、走っていた。ただ、書いていた。君に出会うまでは――。
立ち止まった時間も、言い合った時間も、無力さを感じた時間も。無駄だと感じていたすべての時間を掬い上げる長編小説。