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夢みるかかとにご飯つぶ

2024.10.22 公開 ポスト

【夢ごは日誌】「となりのトトロ」のお母さんの気持ち清繭子

夢みるかかとにご飯つぶ』でエッセイストデビューした清繭子の、どちらかといえば〈ご飯つぶ〉寄りな日々。

「となりのトトロ」のお母さんの気持ち

母親の入院といって思い出すのは「となりのトトロ」だ。

入院中の母親のお見舞いにサツキとメイがやってくる。あのお母さんは幼いメイよりもサツキを先にかまってあげる。色々事情を察せる年齢であるお姉ちゃんのほうが心細いから。

さて、このたび私も期せずして入院する母となり、翌日、子どもたちが夫に連れられてさっそくお見舞いにきてくれた。

12歳以下は病棟の立ち入りが禁止されているため、渡り廊下にソファが置かれていてそこで会えることになっている。

看護師さんに呼ばれて点滴スタンドをゴロゴロさせながら渡り廊下へ向かうと、夫と子どもたちがマスクをして、「ママー」と手を振っていた。

半日ぶりに会う子どもたちはちょっと緊張した面持ちで、とても可愛かった。ああ、とてもとても会いたかったなあと自分の気持ちに気づく。

下の子がお手紙をくれた。青い封筒に「まま」と書いてあってびっくりした。最近、絵の周りにひらがなっぽい線をよく書いていたけれど、もうちゃんと文字として認識できていたなんて。

上の子は、「ママ、いつ退院する?」と聞く。「火曜日だと思うよ」というと、「ふーん」と言ったまま、そわそわと下を見ている。もともと照れ屋さんなのだ。トトロのお母さんを思い出して、上の子に「抱っこしてもいい?」と聞いて、抱っこさせてもらった。下の子が「わたしもー!」とすぐやってきて、三人でぎゅうっとお団子になった。

その後、退院が一日延びることになった。火曜日の夕方、「ママ、いるー?」と元気いっぱいに学校から帰ってきた上の子は、夫から「退院明日になったんだって」と言われて、玄関で突っ伏して号泣したのだそうだ。

夫からのLINEで知って、まだまだ泣くほど好きでいてくれることに、病室で一人にやにやしてしまった。案外トトロに出てくるお母さんも、そうだったのかもな。

想ってくれてありがとう。

関連書籍

清繭子『夢みるかかとにご飯つぶ』

母になっても、四十になっても、 まだ「何者か」になりたいんだ 私に期待していたいんだ 二児の母、会社をやめ、小説家を目指す。無謀かつ明るい生活。 「好書好日」(朝日新聞ブックサイト)の連載、「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」が話題のライターが、エッセイストになるまでのお話。

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夢みるかかとにご飯つぶ

好書好日連載「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」が話題の清繭子さん、初エッセイ『夢みるかかとにご飯つぶ』刊行記念の特設ページです。

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清繭子

エッセイスト。1982年生まれ、大阪府出身。早稲田大学政治経済学部卒。

出版社で雑誌、まんが、絵本等の編集に携わったのち、小説家を目指して、フリーのエディター、ライターに。ブックサイト「好書好日」にて、「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」を連載。連載のスピンオフとして綴っていたnoteの記事「子どもを産んだ人はいい小説が書けない」が話題に。本作「夢みるかかとにご飯つぶ」でエッセイストデビュー。

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