ここ数ヶ月、自身が関わっている舞台作品が毎月本番を迎えていた。
有難いことに例年より忙しくさせていただいた数ヶ月を終え、今は来年の上演作品をいつもよりゆっくりと執筆している。
少し前から今月11月はゆったりと仕事をできそうだなと思っていた。なので私は今月に引っ越しをすることを決めていた。
特に家の契約更新月などではないが、少し手狭に感じてきたので引っ越すことに決めたのだ。あと、SNSで流れてくる可愛い犬の動画で犬を飼いたい欲が爆発した為ペット可の物件で住みたいという想いもある。ほぼ、それが引っ越す理由だ。
犬を飼いたいから引っ越すのだ。手狭に感じたからというのは、管理会社に答える引っ越しの理由だ。本当は犬。犬と一緒に暮らしたいのだ。
また犬を飼った折には、写真でも載っけるので存分に可愛いと言っていただきたい。お願いいたします。
私は犬と新居で過ごしている姿を想像する日々を過ごしている。散歩をしたり、膝の上に乗っけて執筆をしている自分を想像している。すでに癒されている。
ただ気をつけなければいけないと思っていることがすでにある。犬に私の心のすべてを全振りしてはならないということだ。
お分かりの通り、ここまで書いた数十行はとてもつまらない。
ただ35歳の独身男が「犬飼いたくて引っ越しするよ~」と書いてるだけだ。見てられない。
作品についてや役者について書かずに、自分の現状と欲についてだけ書くとこうもつまらないエッセイになってしまうのかと自分自身驚き、幻滅している。
仕事がギチギチに詰まっていないから、感覚が鋭さを失ってゆるい文を書いているというわけではない。まだ見ぬ犬に心を踊らせ、戯れることを想像してニヤついて妄想平和ボケをしているだけだ。
これらのことを踏まえて、私は犬にすべてを捧げてはならないと感じた。すべてというのは、本当にすべて。時間も思考も感情も何もかも。気をつけないと、私は犬に沼ってしまう。
もちろん、たくさんの愛を持って接し共に多くの時間を過ごして生きていく。きっと学ぶことも多いだろう。犬と生きると毎日心が動き、見えなかった物事が見え、感じなかった不満や違和感といった様々な感情と出会うだろう。命を共に育むとは奇跡だ。尊い時間がくることにドキドキしている。
が、沼ってはいけない。餌代を稼ぐ為にも良い塩梅で人間をしようと思う。
話を引っ越しに戻す。
今月末に現在の家を退去することは決まっているが、私はまだ次の家が決まっていない。
「はあ!?」と思われた方も多いのではないだろうか。私も「はあ……」である。
犬との塩梅を考えている場合ではないのである。まだ見ぬ犬を膝に乗せて執筆どころか、私が座る床がない状況なのである。連日、まだ見ぬ床を探し回っている。
あと数日でこの家を退去しなければならないが、なかなか見つからない。ペット可を条件に加えるとグッと物件数が減るのである。
現在探している物件の家賃は、当初に考えていた家賃よりもはるかに高くなっており、犬の餌どころか私がご飯を食べられなくなってしまう。そんな無茶苦茶なことになりたくない。
引き続きいい塩梅で家を探す。
この記事が公開される頃には住む家が見つかっていますように……。
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私は演劇に沼っている
脚本家、演出家として活動中の私オム(わたしおむ)。昨年末に行われた「演劇ドラフトグランプリ2023」では、脚本・演出を担当した「こいの壕」が優勝し、いま注目を集めている演劇人の一人である。
21歳で大阪から上京し、ふとしたきっかけで足を踏み入れた演劇の世界にどっぷりハマってしまった私オムが、執筆と舞台稽古漬けの日々を綴る新連載スタート!