誰かを待つ時間、その人が来たときの第一声を考えたり、そのあとの時間に思いを馳せたり、あるいはメールチェック、SNS、携帯ゲームなど、過ごし方はさまざま。
そんな「待つ時間」にそっと寄り添う音楽をモチーフに、DJ、作詞、音楽演出など幅広い活動をしているカワムラユキさんに言葉を綴っていただきます。
たりないもを数え始めるのは、充分に満たされている証なのか
食うや食わずで彷徨った真夜中にみなぎった生命の熱、忘れかけたわけじゃないのに
鼠径部に温かくなった湯たんぽを押し当てて、魂の在処を確認してみたり
ほつれたカーペットの端を指で弄んで、今夜の約束を断ってしまったり
己の怠惰な習性は一過性のものなのか、それとも感じることに貧乏性なのか
心の振り子はメトロノームのように、行儀良くは動かなくて様にならない
勤勉な誰かが直接的な言葉で君を責めたりはしてくれない
賑やかな街の波動、例えば渋谷のスクランブル交差点みたいな、あのざわめきが焦りを追い立てる
生と死から遠く離れすぎて、もしかして密かに近づいてきている気配がして、あらゆる邪気を必要に追い払う
ゆっくりと呼吸に神経を研ぎ澄まして、手にして失った可能性の数だけを指で
塵になって、僕は誰かの空気になり変わって、悪魔でも天使でもない存在に変化する
イメージは運命の外にあると、思い描くことから解放されるように、ただ言葉を紡いでいたい
カルメン・マキ『想い出にサヨナラ ~カルメン・マキ'70~』(1970年発売、2016年CD化、SUPER FUJI DISCS)収録
渋谷で君を待つ間に
誰かを待つ時間、あなたはどんな風に過ごすでしょうか。
その人が来たときの第一声を考えたり、そのあとの時間に思いを馳せたり、あるいはメールチェック、SNS、携帯ゲームなど、過ごし方はさまざま。
この連載では、そんな「待つ時間」にそっと寄り添う音楽を、DJ、作詞、音楽演出など幅広い活動をしているカワムラユキさんに毎回紹介していただきます。
- バックナンバー
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- ただ言葉を紡いでいたい - カルメン・マ...
- 純真無垢なあの感触を抱けることを想像して...
- ゾンビを何度も生き返らせて - Chap...
- 心だけは処女航海のイメージで - Suc...
- それでも新しく生まれ変わるのならば - ...
- 僕はイニシャルの導きだけを頼りに - M...
- 目も眩みそうな優しさに魅了されて - H...
- 都会でしか生きられないと思い込んでいた僕...
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- あるはずのない楽園を追い求めるばかりに ...
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