昔別れた男の捨て台詞で「男に寄生するしか出来ないくせに」と言われた。
別れ際が惨めな男は本当に嫌だな。ちゃんと好きだった男だったけど、その一言で「プライドを傷つけられた元カノに少しでも傷をつけ返してやろうとしてくるダセェ奴」に格下げだ。
何故こんな話をしたかというと、最近、私が住んでいるマンションに新しい人が越してきたことがきっかけだ。
ある日仕事から帰ってきたら、駐車場でヴィンテージのトヨタから降りてきて挨拶をされた。広いつばのハットを被った彼女はアパレル系のインフルエンサーで、昔裏垢でフォローしていたのですぐに気付いた。
このマンションには、私がフォローしているインフルエンサーが他にも2人住んでいる。住んでからたまたま知ったとはいえ、なかなか気まずい。
ポストを確認する時、エレベーターを待つ時、ゴミ捨てに行く時、「あなたがインフルエンサーだなんて全く知らないし、私はフォローもしておりません」という顔で挨拶をする。早く引っ越してくれねえかな。
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まあそんな話はおいといて、またインフルエンサーが引っ越して気まずいという話をとある会で小ネタとして挟んだら、そこにいた男がこう言ってきた。
「あ~、その子知ってる。何で稼いでるのか全く分からないよね。案件っていっても収入はたかが知れてるしどうせ男に寄生してるんじゃない?」
えーーーーーー!?!?私も同じマンションに住んでるんですけどーーー!!遠回しに私にも男に寄生してんだろ?って言ってますー!?
その女を攻撃するふりをして私を刺す作戦!?新しい技すぎる!もしかして私のこと嫌いですかー!?ってびっくりしちゃって。笑
多分、その彼にはなんの悪気もなく感想を述べただけなんだろう。でも、男の人は女と一緒に暮らしたりすることを寄生と思ってしまうのかなあ、と素直に思った。
♡ ♡ ♡
というわけで昔の男に捨て台詞を言われたことを思い出したという話だが、そんな言葉を吐き捨てられても女は痛くも痒くもない。でも、ひとつだけショックを受けたことは、私はお前を割と愛して尽くしてやったというのに、お前は寄生されていると思っていたのかということだ。
男っていうのは、俺はここまでしてやったんだと飲み会でベラベラ喋る癖に、自分がされた優しさを受け止めることができる奴が少なすぎるな。まあお互い様かもしれない。私もそいつの優しさを思い出せなかった。
私は私の家に男が転がり込んできて「マジでいつ帰るんだよコイツ」、「すんげーシャワー出しっぱなしにするなあ」、「めちゃくちゃ冷蔵庫の酒飲むじゃん」とは思っても、寄生されてるなんて思ったことがなかった。だってお互い好きで一緒にいるんだから。
「トイレットペーパーは少なくなったら変えろ」とか、「麦茶を2cmだけ残して冷蔵庫に入れるな」と文句は言っても、「お前は寄生してる分際なんだから」とは言わないよ。
♯ ♯ ♯
百歩譲って、私は男に寄生したことがあると思う。家賃は払ってもらっていたけど、完璧ではないが家のことは大体やったし、そいつが俺の家に一緒に住もうって言ってきたんだから、寄生女だとは簡単に認められない。
寄生だと文句を垂れるのであれば、最初から一緒に住もうなんて言わなきゃ良い話だ。まあ、出て行かれたことにムカついてるんだろうけどね。
前のエッセイで結婚願望がないという話をしたが、これも原因のひとつだと思う。一緒にいるとお互いに感謝が無くなってしまうのが怖い。
私は小さな家事や適当なパスタを作ってもずっと感謝をされたいし、彼がすこし家事を手伝ってくれた時は、ゴミ袋つけ変えるまでやれやとは思っても、「ゴミ捨て行ってくれてありがとう」って言いたい。夫婦って、少しずつそういうのがなくなっていくんでしょ。
寄生する、寄生されると言っているうちは、半同棲を含めた”一緒に暮らす”という行為はただのままごとでしかない。お父さん役のただの子供で、お母さん役を求めているだけだ。
でもそれもそれでいい。このまま未来に進む前に早めにヤベー奴だと分かって良かったと飲み込める。
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上記で”男は”と主語を大きくしてしまっているけど、ちゃんとお互い感謝をして過ごしている夫婦を知っているので、全体に言っている訳ではないので許してほしい。
私を寄生女と言った元カレの今の彼女は寄生女じゃないのかな~。
あー、どうせなら石油王に寄生させてくれ!
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歌詞には書けない愛の話
シンガーソングライターとして活動するほのかりん。歌という表現を超えて、一人の女性として、心のうちをさらけだす。表現者として新たな挑戦となるエッセイ、新連載!