ポルトガルの街の見所のひとつがアズレージョ。ポルトガルの装飾タイルである。建物の壁に様々な色や柄のタイルが使われている。ポルトの繁華街に建つクレリゴス教会近くのスタバの壁もまた、古いアズレージョだった。
ポルトの玄関口、サン・ポルト駅はポルトの歴史をアズレージョで綴ったすてきな駅だ。世界で最も美しい駅のひとつだそうで、
「うわーっ」
構内に入った瞬間、口を開けてうっとりする観光客であふれている。
「世界で最も◯◯」というフレーズは観光資源になるのだなぁと、同じくポルトの街の「世界で最も美しい書店」のひとつ「レロ書店」を訪れて思ったわけだが、この旅では「ユーラシア大陸最西端のロカ岬」(→最も西)も観光ツアーに入っていたので、やはり「最も◯◯」は集客につながるのであった。
サン・ポルト駅のアズレージョは17~18世紀にオランダで流行したデルフトタイルで、中国や日本の磁器が元になっているのだとか。藍色を薄めたようなすっきりしたブルーの絵のタイルが四方の壁に貼られている。駅は1916年に完成し、補修をしつつ観光名所としても、もちろん駅としても機能している。
その駅の売店で水を買おうとしたら、
「冷たいのがあるから待ってて!」(ポルトガル語だがジェスチャーでわかった)
お店の女性が走って倉庫に行き、冷たい水を手に走って戻ってきてくれた。
親切で朗らか。
今回の旅でわたしが感じたポルトガルの人々の印象である。
自由行動の夜、地下鉄を出た後にホテルまでの道に迷い、
「なんか怖い、どうしよう」
人気のない路地で右往左往していると、
「あら、なに、どうしたの?」
二階の窓からおばあさん。上から指さしで道案内してくれたのだった。
ところで、わたしはポルトで食べてみたいものがあった。ポルトのB級グルメ「フランセジーニャ」である。ポルトガル版クロックムッシュらしいが、写真を見るかぎりわたしが知っているクロックムッシュとは全然ちがう。
気軽なポルト料理の店にフランセジーニャを発見。カウンターで注文し、待つこと約10分。
薄い食パンに焼いた豚肉、ソーセージ、ハムをサンドし、それにチーズをたっぷりのせて焼き上げたもの、それがフランセジーニャだった。ちょいピリ辛のオレンジ色のソースがかかっている。店によってステーキがサンドしてあるなどといろいろあるようだが、わたしが食べたのは薄切りポーク。大量のフライドポテトが添えられていた。
フランセジーニャはデカかった。フォークとナイフでパクリ。濃厚チーズといろんなお肉が口の中で混ざり合う。濃い味でかーなーりジャンクだが、それもまたB級グルメの醍醐味。1400円ほどだっただろうか。カロリーのことは考えずにもりもり食べた。
つづく
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ハレの日も、そうじゃない日も。
イラストレーターの益田ミリさんが、何気ない日常の中にささやかな幸せや発見を見つけて綴る「うかうか手帖」。