現在、私が脚本を担当したテレビドラマ「0.5D」(BS日テレほか)が放送中である。
最近の私の楽しみは毎週水曜日の23時30分にお酒を飲みながら「0.5D」を観ることである。SNSでエゴサをして、視聴者の反応にドキドキしながら様々な考察を楽しんでいる。完全に展開が読まれてしまっている投稿にゲンナリする時もあるが、楽しんで頂いている投稿を見つけてホッとする。ちなみに「0.5D」とは、半分童貞という意味である。
自分が書いた作品をこのように観るのは初めてだ。舞台作品を呑みながら観劇するなんてできないし(できなくはないだろうが、そんな演劇人になりたくない)、リアルタイムで観客の反応を知ることなど不可能だ(不可能ではないのだろうが、本番中に「どう?」なんて聞く演劇人は追放されろ)。
舞台は本番終わりに役者と酒を飲みながら、今日はどうだったこうだったを言い合い、観に来てくれた関係者からの感想に浮かれたり、しょんぼりしたりして、帰り道にひとりコソコソとエゴサする。それが演劇の楽しみ方だと私は思う。
「0.5D」の私の楽しみ方は他にもある。プロデューサー、監督を筆頭に映像のプロフェッショナルのスタッフが様々な手法で自分の書いたものをひとつの映像作品に仕上げてくれるということだ。
これまでに担当は脚本だけで演出は他の方という舞台作品は何度か経験をしたが、映像作品では初めて。自分が書いたセリフが映像としては不必要だと判断されて、カットや変更をされているがそれも楽しいのである。そして展開や魅せ方なども素晴らしく変貌していることに興奮を覚えて、学ばせていただいている。
私は自分の脚本をカットされたりすることに然程抵抗がない。自分が演出する時も、不必要であればズバッと切る。そのセリフを書いた想いや苦しみは、その瞬間には忘れている。というより、考えないようにしている。脚本家個人の想いや苦しみなど観る人には関係ないし、いらない。役にとって大切な想いのセリフであれば守る選択も考えないといけないが、それを凌駕するカットするべき理由が何かあるのだ。現場には現場でしか生まれない事象がある。
だからこそ、自分が書いたものを自分でない人が演出や監督をしているのを観るのが楽しくて、刺激的なのだ。ましてや経験のないテレビドラマという映像作品では尚更だ。
少し話が逸れるが、このエッセイで毎回記事の頭に載るタイトルのような見出しは編集の方が決めて付け加えてくれている。私は毎月それも楽しみにしている。自分が書いたものがどう捉えられて、どのようにリリースされるのか…と、人の手が加えられえることにワクワクとしている。
テレビドラマに話を戻す。カットされたり修正をされることを良いものだと考えている私だが、その分、ちょっとした自分が個人的に好きなふざけたセリフなどが残っているとすごく嬉しい。テレビで自分が書いたおふざけが流れてる~とニヤニヤとしている。エゴサしてもそのおふざけに関しては何も書かれていない。まあ、それはそれで…。
まだ絶賛放送中で終わっていないが、またテレビドラマに挑戦したい。自身の良さや悪さを再認識できた幸せな執筆期間であった。そう何度も巡ってくるチャンスではないと思うが、その時が来るまで私は演劇に沼っている。
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私は演劇に沼っている
脚本家、演出家として活動中の私オム(わたしおむ)。昨年末に行われた「演劇ドラフトグランプリ2023」では、脚本・演出を担当した「こいの壕」が優勝し、いま注目を集めている演劇人の一人である。
21歳で大阪から上京し、ふとしたきっかけで足を踏み入れた演劇の世界にどっぷりハマってしまった私オムが、執筆と舞台稽古漬けの日々を綴る新連載スタート!