今年から諸事情でテレビを少し見るようになったのだが、それまで見ている番組と言えばレギュラーで人生の楽園と相葉マナブ、そしてわざわざ見る特番は「芸能人格付けチェック」と「プロ野球戦力外通告」そして「SASUKE」ぐらいのものであった。
昨日、SASUKEとプロ野球戦力外通告が同日に放送された。
これだけでも盆と正月なのだが、さらにその日はクリスマスでもあり、月と太陽が重なった上に謎の暗黒惑星がかぶさってきたような状態である。
ここまでいくと完全な凶兆であり、蝕とか起こる前触れと見た方が良いだろう。
だが逆に終末が近いなら、今という時を大いに楽しむべきである、私もお母さんにもらったシャンメリーを飲みながら、地球最後のクリスマス映像を視聴することにした。。
SASUKEとは、多分最初は障害物競走に技術と資本をどれだけつぎ込めば人体、人格、人生を破壊することができるか、という実験番組としてはじまったと思われる。
ともかく約100人の挑戦者が超難易度のアスレチックに挑む競技番組と思ってくれればよい。
その歴史は長く、始まってからすでに四半世紀、大会回数は40回を超えている。
私はその全てを見ているわけではなく、放送日に見れたら見るという、ライトSASUKE勢なのだが、「継続的に離れることなく追い続けているジャンル」という意味でSASUKEは最長と言ってもいい。
実際、今年たまたま見たM-1は、99%が知らない芸人さんであり、新鮮そのものだったが、SASUKEは知っている人だらけな上「あのサスケくんがもう33歳で結婚!?」など、親戚の子どもが急にでかくなった現象を味わうほど身内感覚なのだ。
ちなみに知っている1%はみちおさんだ、ああいう「いざとなったらここにいる全員殺せばいい」みたいな佇まいには憧れる。
私は飽きっぽいため、一つのジャンルを長く追えたことがあまりないのだが、SASUKEを見ていると「ジャンルを長期間追うことの良さ」が良くわかる。
SASUKEは見るからにヤバい障害物競走に運動に自信ネキやニキが挑むという、初見の未就学児でも楽しめる内容である。
しかし、SASUKEは昔から続けて見ていた方がより楽しめるジャンルなのだ、初見でも全然面白いが、シリーズを履修していた方がより楽しめるというのはコンテンツとして理想的である。
SASUKEには「体育会系をムキにさせる」という不思議な力があるのか、リピート率が異常に高く、おのずと有力選手はイツメンになっていき、上位陣は「SASUKEオールスターズ」とまで呼ばれるようになる。
当然視聴者的にも「あの選手を応援したい」という「推し」ができてくるのだが、さらに「選手同士の関係性」も出てくるのだ。
「関係性」というのは、一部のオタクにとっては主食と言って良い存在である。
何回も出場していることにより、SASUKEの選手同士が仲良くなっており、競技の間に選手同士がエールを送り合ったり、時に軽口をたたき合う姿が映されるのだ。
現在のSASUKEは芸能人など、有名人参加者も多いのだが、もとは一般人参加者が多く、今でも上位陣は本業は会社員などの一般人が多い。
本来なら接点のない芸能人と一般の人がSASUKEという絆で結ばれ「同じ部活の人」という雰囲気で「あそこはキツイわ」と語り合ったり、時には並走までして応援している絵面の良さみは長くみていないとわからない。
カップリングではなく「キャラ同士のワチャワチャが好き」で「オールキャラギャグ本(大体オールキャラは出てない)」を手に取ってしまう人にはSASUKEは刺さるのではないかと思う。
そして、SASUKEが長く続いたことにより「選手の老化」という現象も起こる、かつてオールスターズと呼ばれた有力選手も50才前後の初老と化している。
かつて完全制覇に近かった男たちが加齢に勝てず、1ラウンド目で落ちてしまうのを見るのは、昔を知っている者からするとつらい。
しかし、周囲が「もう無理だろう」と思ったところで、初老が数年ぶりの1ラウンド突破を見せたりするので、最近では中高年をチアする番組としても機能している。
そして、過去選手の衰退という苦い現実だけでなく毎回新しい才能の出現も起こっており、かつての有力選手の息子がまた有力選手になる、というもはやファイヤーエムブレム状態なのだ。
そして最近では「弟子」という存在も普通に受け入れられている。
ここではずせないのがミスターSASUKE、山田勝己さんの存在だろう。
山田さんと言えば「職業SASUKE」そして、引退を決断するも「俺にはSASUKEしかないんです」と号泣撤回して今も現役を続けている。
これは完全に懺悔だが、私はSASUKEと山田さんのことを、冷笑的に面白コンテンツとして見ていたことがある。
山田さんが弟子集団「黒虎」を結成し、SASUKEに挑んだ時も最初は全員1ラウンド敗退し、正直番組的にもギャグっぽく扱われていた感が否めない。
しかし「黒虎」への入団希望者はどうやら後を絶たないようである。
そして、今回はついに「山田さんが好きすぎて同じ高校に入った」という強火の山田担が3ラウンドまで行くという結果まで残している。
山田さんも来年には還暦、正直、選手としての実力はすでに弟子の方が上だろう、しかし、彼の生きざまに惹かれる若者は多く「黒虎への入団試験はSASUKE予選よりも難しい」という謎の逆転現象まで起こっている。
SASUKEを見るのは楽しいのだが、最近のSASUKEと黒虎を見ると、かつての自分が恥ずかしく、今まで山田さんについて触れた私の文章を全部消してくれという見悶えが起こるようになってしまった。
相手は前か後かは不明だが、とにかく動いている、対してそれを冷笑している人間は完全に停滞なのだ、将来そんな自分が恥ずかしくなるだけなので、相手のためではなく自分のために人を冷笑すべきではない。
すでに番組内でも山田さんはリスペクト寄りの対象として写されている。
だが、それでも山田さんが出てくるとちょっと面白い、そして「職業SASUKE」と「SASUKEしかない」は今でも面白いというのが彼のスゴイところである。
カレー沢薫の廃人日記 ~オタク沼地獄~
- バックナンバー
-
- SASUKEに学ぶ、「冷笑」とは己が停滞...
- 祝映画化!井之頭五郎の類まれなる才能につ...
- 30年越しに知って報われたスーファミ版グ...
- ようやく子猫の話をしなくなったと思ったら...
- 子キャット様への未練から考える推しの熱愛...
- 突然の子キャット様との3日間で気づいた自...
- 突然我が家に「子キャット様」がやってきた
- オタクの黒歴史は、自分自身が黒歴史だと認...
- 昭和のアニメ視聴スタイルで子ども時代の自...
- 編集者という概念を憎み続けてる漫画家がリ...
- 夫のガンプラ捨て嫁案件に対してのファイナ...
- 「オタクの汚部屋」が普通の汚部屋と一線を...
- 推しに「来てくれ」というだけではなく「来...
- 午前9時の布団から「自分推し」について力...
- 久しぶりに見ているテレビで気になった三次...
- 生涯の推しであるおキャット様の推し「ちゅ...
- バズった「推し活」noteから考える二次...
- 「推し」に何かあった時のアレは餅まきであ...
- この世界には人生に鳥山明がある人間があま...
- 映画「忍たま乱太郎」から考える「初恋の推...
- もっと見る