『夢みるかかとにご飯つぶ』でエッセイストデビューした清繭子の、どちらかといえば〈ご飯つぶ〉寄りな日々。
子どもを恥ずかしいと思ってしまった。
友だちのクリスマスパーティに下の子を連れていった。
赤ちゃんが一人いるほかは、みんな大人で、優しくもてなしてくれる。
だけどうちの子は照れ屋で、かまわれるとドキドキして殻に閉じこもってしまうタイプ。話しかけられても返事をしなかったり、隠れたり。塩対応すぎて、親としてもどかしい。それでも、友だちが根気強く話しかけてくれたおかげで、少しずつ心を開いていたのだけれど……。
お昼寝してなかったのもあって、19時半ごろ機嫌が限界に。
「帰りたい」「つまらない」の連呼で周りも困った空気になって、「じゃあ帰ろう」と言えば、それも子どもはイヤだという。プレゼント交換で自分に当たったプレゼントを「これじゃない」といい、自分が持ってきたプレゼントを欲しいとごねる。
赤ちゃんは始終ご機嫌でニコニコしているのに、うちの子だけ駄々っ子。
一瞬、子どものことを「恥ずかしい」と思ってしまった。「子育てうまくいってない親だと思われたくない」と思った。
ちがうちがう、それはちがう、と懸命に打ち消す。
私は私を評価されるために、この子を育てているわけじゃない。
わかるのだ。機嫌よくいたいし、仲良くしたいし、楽しいいい子だと思われたいのに、うまく出来なくて、悔しいんだよね。だから、帰りたいけど帰りたくないんだよね。
私は、あなたがいい子で、楽しくて可愛い子だということが、伝わらないのが悔しい。でもその悔しさは、あなた自身が一番感じていて、あなたが自分で乗り越えなきゃいけないことなんだろう。
私ができることはダメ出しじゃなくって、代弁でもなくて、あなたがみんなの前でいいところを発揮できなくったって、あなたは変わらずいい子で、楽しくて可愛い子だってことを、あなたに伝えることなんだ。
ふたりきりになった帰り道、子どもはそれまでを取り返すかのように無邪気に振る舞った。そうさせたのは私だと思った。
あなたはあなたのままでいい、と真から伝えることは難しい。
せめて、いつものクイズを出す。
「ママのたからものちゃんはだあれ」
子どもははにかんで、自分の名を言った。
毎日、毎日、伝え続けるね。
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夢みるかかとにご飯つぶ
好書好日連載「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」が話題の清繭子さん、初エッセイ『夢みるかかとにご飯つぶ』刊行記念の特設ページです。
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