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あぁ、だから一人はいやなんだ。

2024.12.30 公開 ポスト

第238回 おとほど2024いとうあさこ

ふてほど。今年「新語・流行語大賞」の『年間大賞』をとった、皆様ご存じ、ドラマ「不適切にもほどがある!」の略称。私の今年の年末は、言うなれば“おとほど”。“音楽にもほどがある! ”な年の瀬を過ごしました。2024年12月後半、“大好きな音楽浴びまくりチャンス”大集合だったのです。

まずはサザンオールスターズ。今年のサザン最後の夏フェス、ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024 in HITACHINAKA。ちょうど山田ジャパンの公演と重なり、参加できず。まあどのみち行けたとしても、チケット当たったかわかりませんが。で、当日は日本各地の映画館でライブ・ビューイングも行われたんですが、先日そのアンコール上映があったんです。即行チケットを申し込み、当選。映画のスクリーンを介してではありますが、とうとう本当に行きたくて行きたくて仕方なかったライブを観られることに。ただわたくし、ライブ・ビューイングたるもの初参戦。「みんな歌うのか?」「踊るのか?」「グッズのTシャツ着たり、タオル首に巻いたりするのか?」などなど、“未知”だらけ。いろいろ迷ったあげく、服は普通のトレーナーにGパン。カバンは見る人が見たらわかる、サザンの今年のグッズのメッシュトートバッグにペットボトルホルダーをつけて。で、バッグの中にTシャツ&タオルを忍ばせて、いつでも“大ファンあさこ”に早変わり出来るよう、準備万端で映画館へ。

映画館の入っているビルの前に到着。1日1回&期間限定のアンコール上映なので、看板とかがあるわけではないのもあって、“サザン感”はまだわからず。エレベーターで映画館のある4階へ。「サザンのライブ・ビューイングアンコール上映はこちらです!」とエレベーターが開いたとたん、係のお兄さんの声が聞こえた。小さなロビーには同年代、もしくは少し上の世代の、特にご夫婦でいらしてる方が多そうに見えた。「あれ? なんかちょっと、落ち着いているな。」座席に座るとその気持ちは更に大きくなった。「全然サザンのTシャツとか着てない。」「ライブ前なのに(正確には“ビューイング前”ですが)なんか普通の話しているんですけど。」「あの人、大きなポップコーン買っている。絶対立つ気ないじゃん。」そのテンションの低さにちょっとイラッ。そして開演時間。客電が落ちる。みんな、座ったまま。まあ、でもこれはそういうものだ。言っても映画館なのだから。私はもうソワソワが止まらない。大歓声の中、ステージ上に出てきたサザン。それだけで本当のライブさながら、涙が勝手に溢れてくる。Tシャツこそ着替えていませんが、あっという間に“大ファンあさこ”完成。1曲目『女呼んでブギ』が始まったら、心の中で「わーっ!!!」と叫びながら、大号泣。ああ、うれしい! 幸せ! うれしい!

ただここで反省。大反省。始まる前にみんながテンション低いと思って、勝手にイライラしちゃってたけど、違う違う。テンション、全然低くなかったのよ。前の席のおじさまは、私からは白髪(はくはつ)の頭がちょっと見えているだけだったのですが、それが小さく右へ左へ揺れている。リズムに乗っているの。ご夫婦でいらしていた隣の席の奥様も『いとしのエリー』の時、泣いていらして。後ろのご夫婦は当日フェスに参戦していたようで、「あの日遠すぎて見えなかった所が全部見える!」と嬉しそうな声で話していて。そうよ、そうなのよ。喜び方、楽しみ方なんて人それぞれで。もちろんそもそもが人の勝手なんだし。ああ、あさこのバカ。バカバカバカ。しかも結局最後の『勝手にシンドバッド』では、結構皆さん「今何時!」って言っていたし。終わって明かりがついた時の興奮度合いは、ライブにも負けない熱さ、めっちゃありました。いやあ、素晴らしかった。すごかった。最高だった。スクリーンでこうなら、生で観た方なんか、とんでもなかったろうな。たまらない、極上の100分間でした。

そしてお次はマッチさん。明治座にて行われた「Thank you veryマッチde SHOW ギンギラ学園物語」。一部が学園もののお芝居。出演者も原田伸郎さん、小堺さん、川崎麻世さん、中村繁之さん、西村知美さん、松居直美さん、浅香唯さん、西田ひかるさん。このラインナップだけでもうすご過ぎて笑っちゃう。そこへ、ダイノジさん、友近も加われば、そりゃあ面白くないわけがない。そんなお芝居の後、30分休憩があるのですが、年末の疲れか興奮し過ぎか、ちょっとフラフラしていたもんで果汁10%のリンゴジュースを購入。ゴミ箱の横で一気飲みしていたんですね。でもそういう時に限って「いとうさんですよね?」みたいな。ただただ苦笑いで会釈。って言うかよくわかったな。ボロボロ過ぎて、逆に目をひいたのか? お恥ずかしゅう。そして二部はその学校の“卒業公演”という設定のまま、みんなでマッチさんの曲を歌う、という。しかもシークレットでヨッちゃんこと野村義男さんも出ていらして。瞬時に“あの頃”に戻った、本当に夢のような時間でした。

そして今。これを書いている今。実は葉加瀬太郎さんのライブ帰り。わたくし、葉加瀬さんのバイオリンが大好きで。歌詞がないのに、まるで言葉が聞こえてくるような。そんな圧倒的な音を聴きにここ数年、年末になると葉加瀬さんのライブに行っております。ただ今年は夏の終わり頃、葉加瀬さんが左顔面麻痺との報道が。でもMCで「安静が大事と言われましたが、大好きな仲間と大好きな音楽をしていた方が僕には寝ているよりずっといい」とライブする事を決めた、とおっしゃっていました。いやぁ、ものすごいエネルギーの演奏でした。いつもももちろん素晴らしいのだけれど、今年のすごさはまた格別。ただただ胸にきまくりで。葉加瀬さんのご健康を切に切に祈りつつ、来年もこの素晴らしい演奏を聴きに来られるよう、自分もまた1年間頑張ろう、と心から思いました。

そんなこんなで年末、駆け込むように音楽に山ほどパワーいただきました。今年の疲れ、今年のうちに。充電完了。皆々様も、どうぞよいお年をお迎えくださいませませです。来年もよろしくお願いいたします。

【本日の乾杯】レトルトのエビチリ。こんもりしているのは、下に大量の白髪ネギを。エビチリの熱で“ちょっとしんなりさせよう”大作戦。大作戦、大成功。紹興酒、といきたいところですが、ウチにはないので冷たいビールで乾杯。

関連書籍

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。3』

海への恐怖を感じた、初めての遠泳。4人で襷を繋いだ「24時間駅伝」。お見合い旅inマカオ。“初”キスシーンに、“初”サウナ。ドラクエウォークで初めての高尾山。接続できずに大騒ぎのリモート飲み会。拍子抜けだった大腸検査。ブームに乗って、のんびり「おばキャン」、のつもりが……。いくつになってもあさこの毎日は初めてだらけ。

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。2』

セブ旅行で買った、ワガママボディにぴったりのビキニ。いとこ12人が数十年(?)ぶりに全員集合して飲み倒した「いとこ会」。47歳、6年ぶりの引っ越しの、譲れない条件。気づいたら号泣していた「ボヘミアン・ラプソディ」の“胸アツ応援上映”。人間ドックの検査結果の◯◯という一言。ただただ一生懸命生きる“あちこち衰えあさこ”の毎日。

いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。』

ぎっくり腰で一人倒れていた寒くて痛い夜。いつの間にか母と同じ飲み方をしてる「日本酒ロック」。緊張の海外ロケでの一人トランジット。22歳から10年住んだアパートの大家さんを訪問。20年ぶりに新調した喪服で出席したお葬式。正直者で、我が強くて、気が弱い。そんなあさこの“寂しい”だか“楽しい”だかよくわからないけど、一生懸命な毎日。

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