2025年も「初老入門」をよろしくお願いいたします。
おかげ様で夫も猫たちも元気です。モンゴルマンは腕白盛りで、うんこしたあとのテンションがやばいです。
新刊『だったら、あなたもフェミニストじゃない?』が1月22日に発売になります。
7人の豪華ゲスト陣とジェンダーやフェミニズムについて語った対談集で、書き下ろしコラムも7本あります。
対談のタイトルはこちら。
「男同士でケアし合うこと、自分で自分をケアできること」武田砂鉄
「物心がついた時にはフェミニストだった」楠本まき
「それって女性はいつもだよ、と言われてハッとしました」津田大介
「物言う女がブス呼ばわりされるだけのことじゃん」瀧波ユカリ
「人と違う意見があること自体に価値がある」竹田ダニエル
「私が感じてきた生きづらさは自分のせいじゃない」藤井サチ
「自分を大切にするってどういうこと?」渡辺満里奈
書下ろしコラムのタイトルはこちら。
「パンツを買うのは誰?」
「私の中にいる少女」
「フェミ男子の作り方」
「黒歴史は恥だが役に立つ」
「この子たちは貝なのかしら?」
「フェミニズム効果」
「女に生まれてよかった」
笑って学べる一冊になってますので、ぜひご一読いただけますと幸いです。
ではいつもの文体に戻ります。
去年の冬、初老フレンドと温泉宿に泊まった。翌朝、友人に「夜中に2回トイレに行ってなかった?」と聞くと「いや3回行ったよ」とおっしゃる。
頻尿具合は人それぞれだが、私も毎朝5時ごろに尿意で目覚める。
20代の友人がうちに泊まったとき、朝まで起きずに熟睡する姿を見て「これが若さか……」と感動した。
自分もかつては尿をためる機能が高かったはずだが、前世のように遠い記憶である。
という話を婦人科医の友人にすると「膀胱力は鍛えられる」とのこと。
「トイレは我慢しちゃダメと思ってる人が多いけど、多少は我慢した方がいいの。尿意を感じてすぐトイレに行くと膀胱を甘やかして尿をためる力が落ちるのよ」と教えてもらったので、今年の抱負は「膀胱力を鍛える」に決まった。
私が真面目な顔をしていたら「おしっこ我慢してるのかな」と思ってほしい。
とはいえ、おしっこを我慢するのも限界がある。
韓国のデモを見て「みんなトイレはどうするんだろう」と思った。何万人もの市民が集まっていたが、駅やコンビニのトイレも激混みになるんじゃないか。
もし日本でああいう事態が起きたら「今行かんでどうする!」と己を両手ビンタして駆けつけたい。高機能の尿漏れパンツを準備するべきかもしれない。
韓国の市民は「家で寝てたい連合」「怒れる更年期の女たち」など様々な旗を掲げていたが、私も友人たちと「尿漏れパンツ履いてきた組合」という旗を掲げて参加したい。大人用オムツの方が安心だろうか。
今回のデモには女性が多く参加しているそうだ。ユン大統領は女性差別的な政策を掲げて、男性たちの支持を獲得した。それに対して女たちの怒りが爆発しているという。
日本も「30超えたら子宮摘出」でおなじみ日本保守党が躍進して、滋賀医科大生の性暴力事件が逆転無罪になるなど、ミソジニー(女性蔑視)とバックラッシュ(反動)が止まらない。
2021年の元旦に私はこんなラップを詠んだ(全文は『フェミニズムに出会って長生きしたくなった』収録)
冗談じゃねえわ 今は令和
我慢も欺瞞もいらねんだわ
忍耐は限界 タイムズアップ!
貴様の棺桶、準備はOK?
貴様は老害、CHANGE or DIE
私たちはもっともっと怒っていい。おしっこは我慢しても、怒りは我慢しなくていい。
じゃないとナメられるから。「こいつには何やってもいい」とやりたい放題されてしまうから。
理不尽に対して「自分はこんな目に遭っていい人間じゃない」と怒れるのは、まっとうな自尊心がある証拠なのだ。だから日々怒っている人は自分を誇ってほしい。
まっとうな自尊心を育てるコツは、自分の「イヤ」という感情を大切にすることだ。
私たちは「女の子は感じよく、お行儀よく、いつもニコニコ愛想よく、セクハラされても笑顔でかわせ、空気を読んでわきまえろ」と刷り込まれてきた。
そのためイヤでもイヤと言えない女性が多い。怒ることに慣れていない女性も多い。
だからまずは自分の「イヤ」に敏感になろう。反射的に我慢してしまうクセ、諦めてしまうクセ、笑顔を返すクセを封印しよう。
そしてイヤなものはイヤと言う練習をしよう。そこからじょじょにブラッシュアップしてほしい。
「イヤです」「やめてください」と言っても「同意があった可能性は払拭できない」とか言われるヘルジャパンでは「イヤじゃボケ!!」「やめんかいコラ!!」と言い返す練習が必要だと思う。
直接言えなくても、まずは心の中で罵倒するだけでもいい。すると心がちょっと強くなるから。
ちなみに私はガラの悪い人が好きで、『虎に翼』ではヨネさんが最推しである。歴代朝ドラ主人公で最推しは『カーネーション』の糸子である。糸子が岸和田弁でキレまくる姿を見るとスッキリする。
とはいえ、イヤでもイヤと言えない場面や関係性はよくある。
様々なシチュエーションでどうやって自分を守るか? という知恵を『モヤる言葉、ヤバイ人から心を守る言葉の護身術』に詰め込んだ。
本書を読んだ方から「防御力と瞬発力が高まった」「自分も他人も守れるようになった」と感想が寄せられた。
知識が増えると自分だけじゃなく他人も守れるようになる。第三者として「それって〇〇ですよね?」と注意できるようになるから。
以下、暮らしに役立つジェンダー知識として参考にしてほしい。
(1)トーンポリシング(tone policing)
声を上げる人に対して、その内容ではなく話し方や態度を批判すること。
たとえば「性差別をやめろ」「性加害するな」と訴える女性に対して「そんな言い方じゃダメだ」「もっとこんなやり方をしたら?」と説教するおじさんはあるあるだ。
ヘルジャパンでは女が意見を主張するだけで「攻撃的」「口が悪い」と叩かれる。フェミニストに「そんなに怒らなくても」「もっと優しく丁寧に説明したら?」とか言うてくる人も多い。
でも差別される側が怒るのは当然だろう。足を踏まれてきた側が「足をどけていただけませんか?」と丁寧に言っても聞いてもらえなければ「痛いんだよ! 足をどけろよ!」と怒りたくなるだろう。
それに対して「そんなやり方じゃ聞いてもらえないよ」と言うのは、相手の口を塞ぐ行為になる。
もしトーンポリシングをされたら「あなたは性差別や性加害に反対ですか?」と質問返ししてみよう。それでイエスと言われたら「だったら被害者じゃなく加害者にやめろと言ってください」と返すのがおすすめだ。
もしくは「やかましわボケ、トーンポリシングやめろカス!!」と罵倒していいと思う。
(2)ワタバウティズム(Whataboutism)
Aの問題を話しているのに、Bの問題を持ち出して論点をずらし、相手を黙らせようとすること。
「チカンや性暴力をなくそう」→「でも冤罪もあるよね」「枕営業する女もいるだろ」
「セクハラするな」→「女だってセクハラするだろ」「男の被害は無視するのか?」
「女性差別をやめろ」→「男性差別だってあるよね」「〇〇差別はどうなんだ?」
こういう返しをする人たちは、普段からBの問題について批判や活動をしているわけじゃなく、相手に言い返す時のカウンターでしか言わない。つまり口を塞ぎたいだけなのだ。
もしワタバウティズムをされたら「今そんな話してませんよね、なぜ論点をずらすんですか?」と質問返しするか、「だったらBの問題に声を上げてアクションしたらどうですか?」と返すのがおすすめだ。
もしくは「石丸構文www」「ひろゆきに憧れてるんですかー? 笑」とバカにしていいと思う。
(3)マンスプレイニング(man-splaining)
主に男性が女性に対して、上から目線で説明や説教をすること。
ジェンダーの講演にはマンスプおじさんがよく出没する。
質疑応答タイムに手を挙げて「ジェンダーとはどうのこうの~」とえんえん演説して「ちょっとそのへんで」と止めに入ると「じゃああと5分だけ」と言われて、まだ5分もしゃべるの?! とびっくりする。
参加者の女性に向かって「あなたたちが政治家になればいい! なぜ立候補しないんだ!」と橋下徹みたいな説教をかますおじさんもいる。
この手の迷惑おじさんのせいで質疑応答タイムを設けるのをやめた、という男女共同参画センターも多い。
彼らは「女はものを知らないから賢い自分が教えてあげよう」と思っているバカである。そういうバカを封印するお札(ふだ)があればいいのに。
マンスプおじさんに遭遇したら「その演説を動画に撮ってYouTubeにあげたらどうですか? 4人ぐらいは見てくれるかも」と勧めるか、「出たマンスプおじさん! 逃げろ~~」と妖怪扱いするといいだろう。
鼻くそをほじり、指についた鼻くそをしげしげ見つめて「お前の話は鼻くそ以下やぞ」とアピールするのも素敵だ。
(4)シーライオニング(sealioning)
しつこく質問を繰り返して相手を疲弊させること。粘着系のクソリパーが好む行為。
たとえばセクハラについて発信すると「セクハラの定義は? その根拠は? それを証明するデータは?」と質問をかぶせて、面倒くさいから無視すると「議論から逃げるんですか」とドヤるまでがパターンである。
この手の丁寧に説明して俺を納得させてみろマンに時間を割くのは無駄なので「ググレカス」と返そう。
強火の返しができない場合は「興味があるなら勉強したらどうですか? この本とかおすすめですよ」と本を紹介しよう。
そこで「本を読むのは面倒くさい」と言われたら「てめえが一番面倒くせえんだよ!!」とキレていい。
逆にシーライオニングで返すのもおすすめだ。
「その定義は? 根拠は? 文献は? データは? エビデンスは?」とネチネチ質問を繰り返して、相手がしどろもどろになったら「ちょっと何言ってるかわからない」とサンドウィッチマン顔をキメよう。
字数がオーバーしたため、続きは次回書きます。
次回はマンタラプト(man-terrupt)ヒピート(he-peat)ヒムパシー(him-pathy)マンファレンス(man-ference)マネル(man-el)マンフル(man-hlu)を紹介します。
さて、皆さん年末に大掃除はしましたか? 私は面倒くさいのでしてません。
あなたが家の大掃除をしているときに、同居人から「もっとこんなやり方したら?」「ベランダも汚れてるよね」「掃除は道具選びがどうのこうの」「なぜこの時期にやるの? その根拠は?」とか言われたら「ほなお前がやれやカス!!」と頭にくるだろう。
私たちはみんなこの社会に暮らす住人なのだ。
この社会を少しでもマシな場所にするため、みずから声を上げて行動する人たちがいる。
それに対して、他人任せで難癖つけてくる人には「だったら自分がやれ!!」と怒っていいのだ。
韓国のデモでは何万人もの市民が「民主主義を壊すな!」と怒りの声をあげていた。あれだけ人が集まるのは「自分がこの社会を守るんだ」という主権者意識が強いからだろう。
1980年の光州事件では、軍や警察が民主化を求める市民を撃ち殺した。日本も政治批判しただけで逮捕され拷問され殺される時代があった。参政権を求めた女性たちも厳しい弾圧を受けた。
「自由と権利をよこせ!!」と怒って声を上げた先人たちのおかげで現在がある。
あなたはこの社会を守りたいですか? 自由と権利を奪われたくないですか?
そう聞かれたら、多くの人がイエスと答えるだろう。
だったら「怒るのは良くないこと」という呪いを手放そう。従順な奴隷にされて、権力者のやりたい放題を許すのはやめよう。
そして他人任せにせず、みずから声を上げよう。一人一人が自分にできることをしよう。
2025年の開運ワードは「怒」である(たった今私が決めた)
日々怒りすぎて奥歯が割れそうな友たちよ、2025年も元気にバチギレていきましょう!
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