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勝手に!裏ゲーテ 街場の旨いメシとBar

2025.02.18 公開 ポスト

#59

良いお店の条件とは? 都内ラーメン編相場英雄

<使用機材>Fujifilm X100V,RicohGr3

唐突で恐縮だが、良い飲食店の条件とはなんだろう?

〈美味しいモノを安価で提供〉〈お店の隅々までピカピカ〉〈スタッフのサービスが行き届いている〉

こんなポイントがすぐに返ってきそうだ。長年全国、あるいは海外で飲み食いを続けてきた身として、もう一つの要素を加えたい。

〈子連れ客に優しいお店〉

これが私の最も意識する点なのだ。

こんなことを指摘すると、〈高級寿司屋のカウンターはどうする? 〉〈予約の取りにくい超人気フレンチで子連れなど論外〉……的な批判がきそうなので、あらかじめお断りしておく。私が挙げる飲食店とは、あくまで町場の食堂的な、極めてカジュアルなお店についてである(当たり前すぎるので、ファミレスは除く)。

なぜこんなことを書いたかといえば、私担当の複数社の編集さんたちに小さなお子さんがいるからだ。彼らは絶賛子育て中で、安心できる飲食店をいつも探している。

電車やバス、あるいは公共交通機関の待合スペースで、ベビーカーで移動している若いママ、パパを目にする。だが、彼らに対して心無い舌打ちや、迷惑げな視線を向ける人たちもいることに気づく。

声を大にして言いたい。舌打ちしたあなたも、かつてはベビーカーのお世話になっていたはず。要はお互いさま。仕事や学業でイライラしていても、小さな子連れのママ、パパたちに優しく接することができない人たちを、私は心から軽蔑する。

 

閑話休題。

昨年オープンしてたちまち人気店になった小さなラーメン店がある。ある日、開店待ちのために待っていると、手書きのポスターに目が向かった(写真を参照してね)。

西武池袋線江古田駅、北口至近にあるお店。この手書きの文字を見ただけでも、店主やスタッフの人柄が見えるでしょ?

人気ラーチューバーが来店した上に、ラーメン業界で著名な媒体に掲載されたことから、店前は常に行列だ。

「パパ、ラーメン食べたい」

並び中に、たまたま通りかかった小さな女の子が言った。若いパパは足を止め、店の様子をうかがい始めた。その際、先の手書きメッセージを見つけ、安堵の息を吐いた。

「よし、入ってみようか」

このお店でお子さん連れの若いママやパパの姿を頻繁に目にするたび、私は思う。

〈ああ、良い店だなあ〉

江古田総合ゲージツ大学が近いので、家族連れのほか学生さんも多数。 正統派の横浜家系ラーメン。子供も女性もおじいちゃんも大好き、あっさり テイスト。いつものように店名は明かさず。でもさ、丼見てごらん。屋号書いてあるから。
家系ラーメンは、オーダー時にカスタマイズ可能。最初は全部普通でお店オリジナルの味を楽しむことをオススメ

二五年前に倅が生まれたとき、私も同じ経験をした。

仕事終わりに保育園に行き、倅をピックアップする。記者業務で疲労困憊なときは、地元の飲食店に頻繁に立ち寄った。町中華やラーメン、トンカツ屋、洋食屋さんは快く子連れの客を迎えてくれた。仕事、育児、家事で若い親たちは疲れ切っている。店主さんたちはいずれも子育てを終えた強者たちで、若き日の我々親子を温かい目で見守ってくれた。だから倅が巣立った今、子連れの若いパパママを見ると、心から応援したくなるのだ。

昨年3月末に、惜しまれながら閉店した仕事場近くのラーメン店もその一つだった。乳児だった倅を左手に抱き、片手でラーメンを食べ続けた。

昨年3月、惜しまれながら閉店した落合の名店。地域の人たちに愛されたラーメン店。

閉業間際にお邪魔した際、店主から聞いた。私のような家族連れが多数いて、抱っこされていた子供達がいつの間にか恋人を連れてくる、あるいは新しい家族と来店するケースが多かったとか。

〈地域の皆さんに愛してもらって幸せでした〉とは店主。

いえいえ、あなたのような店主さんがいたから、我々は何度も助けられたのです。ありがとう。

昨年閉店した名店の一杯(芳香醤油)。もう一度食いたい(大涙)。

 

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食い意地と物欲は右に出るものがいない作家・相場英雄が教える、とっておきの街場メシ&気取らないのに光るBar。高いカネを出さずとも世の中に旨いものはある!

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相場英雄

1967年新潟県生まれ。元時事通信社記者。主な著書に『震える牛』(小学館文庫)、『血の轍』、『KID』(ともに幻冬舎文庫)、『トップリーグ』  『トップリーグ2/アフターアワーズ』(ともにハルキ文庫)。近著は『血の雫』(幻冬舎文庫)、『レッドネック』(ハルキ文庫)、『マンモスの抜け殻』(文藝春秋)、『覇王の轍』(小学館)、『心眼』(実業之日本社)、『サドンデス』(幻冬舎)、『イグジット』(小学館文庫)『ゼロ打ち』(角川春樹事務)、『マンモスの抜け殻』(文春文庫)。『フェイク・フィクサー』(小学館ストーリーボックス連載中)、『ブラックスワン』(小説幻冬連載中)。

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