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武器になる教養30min.by 幻冬舎新書

2025.01.31 公開 ポスト

日本人にかけられた魔法を解いた? 「ユニクロ」がもたらした2つの功績とは武器になる教養30min.編集部

日本人の「国民服」として、すっかり定着したユニクロ。私たちはなぜ、ユニクロを選ぶのでしょうか? そして、ユニクロがもたらした「2つの功績」とは……。話題のロングセラー『おしゃれ嫌い 私たちがユニクロを選ぶ本当の理由』の著者で、甲南女子大学教授の米澤泉さんにうかがいました。

*   *   *

ユニクロが日本人の意識を転換させた

──ユニクロが「おしゃれ」において果たした役割とは、どんなものだと思いますか?

2つあると思います。1つは、ユニクロが日本人の意識を転換させたことです。ユニクロがポピュラーになる以前、80年代はDCブランドブームが起き、お金をかけて個性的な服を着ることに多くの人が夢中になっていました。

その後のバブルの時代では、ますます服の値段が上がり、インポートものなどきらびやかな服を求めるようになっていきました。

 

当時の人々は、おしゃれはエネルギーがいる特別なことで、金銭的にもお金をかけないといけないと思っていました。ところが、ユニクロがその魔法を解いたのです。

ユニクロの服はすごく機能的で、デザインもどんどん洗練されています。「ユニクロで十分だよね」と、人々の意識を転換させたのは大きな功績だと思います。

 

もう1つの功績は、日本人のファッションのレベルを底上げしたことです。今、街を歩いていて、センスが悪いなと感じる人ってあまり見かけませんよね。日本人全体のセンスがよくなっていると思うんです。

 

──ユニクロのベーシックな服を着ていれば、おかしなことにはなりませんね。

上から下までユニクロでも、きちんとコーディネートすればキマるようになっています。パンツの形なども、シーズンごとによく考えられてつくられているので、古いパンツをはくより、ユニクロの新しいパンツを買ってはくほうが今っぽい雰囲気になると思います。

 

──『おしゃれ嫌い』では、人々はおしゃれよりも、本当は「暮らし」のほうが好きだったのではないかと指摘されています。

かつては、服で自己表現しないといけないという強迫観念みたいなものがあったと思います。本来、それほどファッションやおしゃれが好きではなかった人も、とりあえず高いブランドの服を買って、袖を通していたのではないでしょうか。

そのため、衣食住の「衣」にたくさんのお金がかかっていました。何万円もするDCブランドの服を着ているハウスマヌカンが、家ではカップラーメンをすすっているという笑い話もあったほどです。

 

ところがバブルが崩壊し、経済が低迷していくにつれ、こうした行動はカッコ悪いと多くの人が考えるようになりました

さらに、2011年に東日本大震災が起こり、ふつうの暮らしができることのありがたさを実感するようになりました。

それを機に、ファッション雑誌でも「ていねいな暮らし」とか、「地球に優しい」といったテーマを積極的に取り上げるようになりました。こうした流れに、うまくユニクロがマッチしたのではないでしょうか。

今や世界で愛される「Jファッション」に

──ジェンダーレス化も、最近の流れの1つですよね。

UTと呼ばれるTシャツがわかりやすい例で、ユニクロではメンズとレディースが分かれていません。XSからXLまで、サイズ展開にバリエーションがあって、ぴったりのサイズを着てもいいし、ツーサイズくらい上のサイズを着てもいい。

あえてジェンダーレスと言わなくても、当然のようにそうなっているのがいいところだなと思っています。

 

また、「リラックスフィット」もユニクロが広めたものだと思います。ゆったり着るのが、今の気分とマッチしているのでしょう。

 

──流行はくり返すと言いますが、またもとに戻ることはあるのでしょうか。

多少、タイトなサイズ感になったり、スカートの長さが変わったりすることはあるかもしれませんが、バブル時代のような極度なボディコンシャスや、高いヒールの流行は、もう戻ってこないと思っています。

ハイヒールからスニーカーへ移行するのは簡単でも、スニーカーを履き慣れている人が、急にハイヒールを履く生活をするのは無理があると思います。

 

──ユニクロはまさに日本人の「国民服」と言えそうです。

音楽の世界で言うと、Jポップは今、世界中の人たちに聴かれていますよね。ユニクロも今、日本のファッションとして世界中で愛されているので、そういう意味では、ユニクロは「Jファッション」と言えるのではないかと思っています。

80年代は、YMOのようなとんがった音楽が世界で受け入れられていました。それはファッションで言うと、コムデギャルソンやヨウジヤマモトに相当すると思うんです。実際、YMOのメンバーだった坂本龍一さんは、こうしたブランドを好んで着ていました。

 

ところが、90年代以降は、坂本さんもナチュラル志向になり、『ソトコト』やユニクロが出しているフリーマガジン『ライフウェアマガジン』に登場するなどまさにユニクロは、世界中で気軽に聴かれているJポップのように、世界中で気軽に着られているJファッションになりつつあるのかなと思います。

 

※本記事は、 Amazonオーディブル『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』より、〈【前編】米澤泉と語る「『おしゃれ嫌い 私たちがユニクロを選ぶ本当の理由』から学ぶファッションの力」〉の内容を一部抜粋、再構成したものです。

 Amazonオーディブル『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』はこちら

書籍『おしゃれ嫌い 私たちがユニクロを選ぶ本当の理由』はこちら

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AIの台頭やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進化で、世界は急速な変化を遂げています。新型コロナ・パンデミックによって、そのスピードはさらに加速しました。生き方・働き方を変えることは、多かれ少なかれ不安を伴うもの。その不安を克服し「変化」を楽しむために、大きな力になってくれるのが「教養」。

『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』は、“変化を生き抜く武器になる、さらに人生を面白くしてくれる多彩な「教養」を、30分で身につけられる”をコンセプトにしたAmazonオーディブルのオリジナルPodcast番組です。

幻冬舎新書新刊の著者をゲストにお招きし、内容をダイジェストでご紹介するとともに、とっておきの執筆秘話や、著者の勉強法・読書法などについてお話しいただきます。

この連載では『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』の中から気になる部分をピックアップ! ダイジェストにしてお届けします。

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武器になる教養30min.編集部

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『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』は“変化を生き抜く武器になる、さらに人生を面白くしてくれる多彩な「教養」を、30分で身につけられる”をコンセプトにした番組です。

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