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女80歳の壁

2025.02.02 公開 ポスト

和田秀樹が教える、簡単で最強の“長寿の秘訣”は「好き勝手に生きること」和田秀樹

体力も気力も70代とは全然違う「80歳」の壁。その壁をラクして超えて、寿命をのばす――その秘訣がつまった『80歳の壁』は、2022年の年間ベストセラーにもなりました。そんな「壁シリーズ」の最新刊『女80歳の壁』が出版されました。

「夫の世話・介護からくるストレスや負荷」「骨粗しょう症による骨折で歩けなくなる」など、ぶ厚い障害を乗り超え、高齢期を楽しみ尽くすための生活習慣を詳細に解説した一冊。本書から、一部をご紹介します。

*   *   *

大往生 スタートラインは 60代

前項の‟人間の医療と尊厳”の問題は、そのまま大往生にもつながります。

大往生も終末期医療も、死ぬ間際の話ではなく、60代ぐらいから始まっていると思うからです。「今後はどう生きるか」を選択するのが60代だと思うのです。

寿命は多少短くなるかもしれないが、我慢をせず、納得しながら生きるか?

寿命は少し延びるかもしれないが、あれこれ我慢しながら生きるか?

“腹をくくる”という言い方がしっくりくるかもしれませんね。

60代で腹をくくる――。

早い人なら40代、50代で腹をくくってもいいかもしれません。70代なら迷わず、80代ならさっさと腹をくくるべきです。

と言われても、自分の命に関わることなので、容易には決断できませんよね。

なので、長年、高齢者医療に携わった者からのアドバイスを記しておきます。

例えば、40~50代の場合、「医者の言うことを聞いても、確率的にわずかに長生きできるかもしれない」という程度です。よくて4~5年の違いでしょう。でもこの年代は子供のいる人も多いので「医師の指示に従う」という選択をしがちです。私も、子供が成人するまでは元気に働くのが親の責任、と思っていましたから。いまでは娘たちも結婚し、お役御免になったので、好きに生きています(笑)。

60代は、「医療的なケア」より「精神的な安定」のほうが、長生きの確率は高くなると思います。我慢してストレス状態で生きるより、やりたいことをして好きに生きたほうが病気になりにくい。病気になっても治りやすいのです。

70~80代は、医者の言うことを聞いても、寿命は変わりません。よくても数か月から1~2年の違いでしょう。でも、この間に元気でいられる保証はありません。病院のベッドに寝たきり、ということもあり得るわけです。

長生きは ‟正しい”よりも 楽しいを

前にもお話ししましたが、日本は「がんで死ぬ国」です。

がんを撃退するには、免疫力を上げなければなりません。それなのに、わざわざ免疫力を下げるような暮らしをしているのです。

肉はダメ、塩分はダメ、お酒もたばこもダメ、と楽しみが奪われたら、免疫力は落ちるばかり。結果的に、がんになりやすい体になってしまいます。

肉食も、味の濃い食事も、お酒もたばこも、心臓病のリスクを上げる、という“負の一面”があります。でも、全面的に悪いわけではありません。幸福感を高めて免疫力を上げるという“正の一面”もあるのです。

つまり、どちらを選択しながら生きるのか、という問題です。

極端に言えば、「医者の指示を聞いてがんで死ぬ」か、「好きに生きて心臓病で死ぬ」か、という問題でもあるのです。

あるいは、「医者の言うことを聞いて、わずかに長生きする」か、「好きに生きて、わずかに早死にする」か、ということでもあります。

本当にそうなるかは、わかりません。なぜなら、日本では、大規模比較調査をしたことがないからです。「かもしれない」というレベルの話でしかないのです。

医者は正しいことを言う、と思うのは早計です。もちろん、あえてウソを言ってるわけでもありません。ただ"不完全な情報”を信じて医療を行っているにすぎないのです。それは心に留めておいていいと思います。

どちらを選ぶにしても、不完全な情報しかないのですから、自分で決めるしかありません。言い方は悪いですが‟一か八か”です。

それなら「好きに生きるほうがいいのでは?」というのが私の提案です。私が正しいとは言いません。ただ、私の話に分があるとするなら、高齢者医療の現場に35年もいることでしょう。経験上から言うと、節制してしょぼくれて生きている人より、好きに生きている人のほうが、元気に長生きしているのです。

死の瞬間 苦しくはない 安らかだ

日本人ほど‟健康オタク”の多い国は、世界にも例がありません。「死」から目を背けているため、死をひどく恐れてしまっているからだと思います。

そこでひとつ、死について、知っておいてほしいことがあります。

それは、死ぬ瞬間は苦しくない、ということです。

人間は、最期の段階になると意識が低下して、眠りに落ちるように死んでいきます。意識がないので、痛くも苦しくもないのです。

がんの人が、苦痛に顔をゆがめて死んでいく、という話をきいたことがあるでしょう。たしかに、痛くて苦しいがんもあります。がんのできた場所が悪く、神経に触れていたりすると痛いし、気道を押していたりすると苦しくなります。

しかし、すべてのがんが、痛くて苦しいわけではありません。

そして、痛みは(やわ)らげることができます。例えば、医療用のモルヒネを使うことで痛みはほぼ感じなくなります。量を増やすことが可能なので、痛みが強い場合も大丈夫です。また、ブロック注射も痛みには有効です。

私の勤めていた高齢者専門の浴風会病院では、亡くなった方を年間100例くらい解剖させていただいていました。すると、85歳以上の方のほぼ全員にがんが見つかります。ですが、生前に「自分ががんだ」と知っていた人は、その3分の1ほどです。残りの3分の2は、がんを患っていることを知らずに亡くなっていくわけです。

つまり、痛みや苦しさを知らずに死んでいくのです。

まさに「知らぬが仏」ですよね。がんとわかってしまったら、ただ苦しむだけの治療を受けることになっていたかもしれません。もちろん「治療は受けない」と選択すれば、その必要はありません。

でも「受けるべきか、受けないべきか」と迷いが生じますし、受けない選択をしても痛みや苦しさがでたら「ああ、やっぱり受けたほうがよかった」と後悔が生まれます。なので、知らずに死んでいけるなら、それが最高だと思います。

関連書籍

和田秀樹『女80歳の壁』

「夫の世話・介護からくるストレスや負荷」「骨粗しょう症による骨折で歩けなくなる」「家族を亡くしたさみしさでうつになる」など、「女80歳の壁」はぶ厚い障害だ。 このような壁を、80歳以上でいきいきしている「幸齢女子」はどう乗り超えているのか? その最強の方法は、とにかく肉を食べること、好きなことだけをして生きること。 「夫と子供は無視していい」「女性・男性ホルモンの両方を補充する」「カツラもしわ取りもOK」等々、壁を乗り超え、高齢期を楽しみ尽くすための生活習慣を詳細に解説。 人生を最後まで充実させたい女性必読の一冊。

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和田秀樹

一九六〇年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、三十年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。『80歳の壁』『70歳の正解』『マスクを外す日のために』『バカとは何か』『感情バカ』(すべて幻冬舎新書)など著書多数。

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