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女80歳の壁

2025.02.07 公開 ポスト

和田秀樹流・幸せ術「“体に悪い”ものほど、人間を幸せにする効果がある」和田秀樹

体力も気力も70代とは全然違う「80歳」の壁。その壁をラクして超えて、寿命をのばす――その秘訣がつまった『80歳の壁』は、2022年の年間ベストセラーにもなりました。そんな「壁シリーズ」の最新刊『女80歳の壁』が出版されました。

「夫の世話・介護からくるストレスや負荷」「骨粗しょう症による骨折で歩けなくなる」など、ぶ厚い障害を乗り超え、高齢期を楽しみ尽くすための生活習慣を詳細に解説した一冊。本書から、一部をご紹介します。

*   *   *

楽しみを 削って命 削るバカ

私がこれまで診察してきた患者さんの数は、およそ6000人くらいでしょうか。介護や直接お会いした人なども併せると1万人以上になります。

経験から言えるのは、最期に「後悔しない」とか「まあ幸せだった」と言える人のほうが、安らかな最期の期間を過ごされている、ということです。

医師の指示を鵜吞(うの)みにして、食べたいものも我慢して、お酒も飲めず、たばこもやめさせられる。幸齢者にとって、楽しみが削られていくことは、命を削る行為と言えます。免疫力が著しく低下し、生命力が弱まるのです。

よくある光景ですが、血圧の高い幸齢男性が、お酒を飲もうとしたり、おつまみに醬油をかけようとすると、奥さんから止められます。ご主人を心配してのことですが、これが逆に命を縮めているわけです。

若い世代なら、塩分やコレステロールは"健康の敵”になるかもしれません。でも、60歳を過ぎたら"敵”は変わると考えましょう。

幸齢者にとって、最大の敵は、楽しみを奪われることです。

「危ないから動いちゃダメ」「これは食べちゃダメ」と、行動を制限されればされるほど、体も心も弱まっていきます。免疫力も弱まります。人間本来のさまざまな"生命力”が発揮されにくくなってしまうのです。

肉食女子! コレステロールは 味方です

大往生を阻害するのは医者――。これまで私は、何度もそう話してきました。

幸齢期に入ってからではありません。むしろ50代、60代から始まる話です。検査データが「正常値」から外れると、薬を出し、お酒やたばこをやめさせ、塩分やコレステロールを控えさせる。そうした医師の行為は無意味どころか、むしろ健康を遠ざける"非健康のすすめ”だとさえ思っています。

不思議ですが、じつは「体に悪い」と言われているものほど、人間を幸せにする効果があります。例えば、その代表がコレステロールです。

お肉を食べると、思わず幸せな気持ちになりませんか?

それはお肉がおいしくて、うれしいからだけではありません。お肉には、トリプトファンという成分が入っているからです。

トリプトファンは人間の健康維持に欠かせない、必須アミノ酸の一種です。これが"幸福感”をつくり出すのです。

セロトニンという言葉を聞いたことがあるでしょう。別名「幸せホルモン」。その名の通り、ストレスを和らげたり、やる気を高めたりする効果があります。このセロトニンを脳に運ぶ働きを担っているのが、コレステロールなのです。「コレステロールは害悪」と思われていますが、それは大きな誤りです。実際に幸齢者は、コレステロールの摂取量が少ないと、元気がなくなり、早死にする傾向があることがわかっています。

コレステロールについては、後ほど詳しく話しますが、ここではまず、コレステロールは「幸せ」と「元気」と「長生き」には欠かせない成分であることを知っておいてほしいと思います。

塩分も 減らしすぎれば 死に至る

塩分も、健康に悪いとばかりは言えません。

じつは、幸齢者のなかには、塩分が足りず「低ナトリウム血症」になる人が多くいます。年齢が高くなるほど、その傾向は強まります。

人間には、ある程度の塩分が必要なことは、ご存じですね。低ナトリウム血症とは、血液中の塩分濃度が薄くなってしまう状態です。症状としては、意識が朦朧(もうろう)とする、言葉が不明瞭になる、頭痛、嘔吐、痙攣(けいれん)などが挙げられます。

高齢ドライバーの事故が問題になりますが、原因は「認知機能の低下」だけでなく、低ナトリウム血症が関係しているのではないか、と私は疑っています。

実際、歩行中に突然倒れ、救急で運ばれてくる幸齢者のなかには、低ナトリウム血症の人が多数います。運転中に起こることは、十分に考えられるのです。

人間の体はとてもよくできていて、必要な成分が不足すると補おうとします。「しょっぱいものを食べたい」と思うのも、その一環です。

つまり、体が塩分を欲しているわけです。

ところが、医者から「塩分は控えて」と言われていると我慢してしまう。家族も「しょっぱいものはダメよ」と減塩を徹底する。その結果、低ナトリウム血症の状態になりやすくなってしまうのです。

ちなみに国際的な大規模調査では、1日10~15gの食塩を摂る人が、一番死亡率が低いことがわかっています。ところが厚生労働省の基準では、女性の塩分摂取量はたったの6・5g未満なのです。

血圧を 下げて近づく 認知症

血圧や血糖値も「高いとダメ」と思われがちですが、そうとも言えません。

一般論から言っても、高いほうが頭はしゃきっとします。幸齢者ばかりではなく、子供にも言えることです。朝食を抜く子供の成績が悪いのは、糖分不足、つまり血糖値が低いからなのです。

血管の壁が厚くなっている幸齢者なら、余計にそうですよね。

細い管の中に十分な血液を通そうと思うなら、勢いをよくしないといけない。血圧を高くする必要があるのです。

血圧が低いと、血流は滞ってしまいます。結果、脳の隅々まで栄養や酸素が行き届かず、働きが鈍ってしまうわけです。

なので、幸齢者は血圧が高いほうがいい。

私は「当時87歳の現役デイトレーダー」に話を聞いたことがあります。1日で数千万円もの株取引を可能にしているのは、頭の働きがよいからです。

ちなみに、お会いした時に見せていただいた血圧は242㎜Hgと、かなり高めです。頭脳明晰で頭がくるくるフル回転しているのは、話しているとよくわかります。ご本人はこう言っています。

「血圧高くても、なんの問題もない。せやけど低くするのは大問題や。ボーッとして頭が働かなくなる。そんな状態で、株なんてできひんがな(笑)」と。

関連書籍

和田秀樹『女80歳の壁』

「夫の世話・介護からくるストレスや負荷」「骨粗しょう症による骨折で歩けなくなる」「家族を亡くしたさみしさでうつになる」など、「女80歳の壁」はぶ厚い障害だ。 このような壁を、80歳以上でいきいきしている「幸齢女子」はどう乗り超えているのか? その最強の方法は、とにかく肉を食べること、好きなことだけをして生きること。 「夫と子供は無視していい」「女性・男性ホルモンの両方を補充する」「カツラもしわ取りもOK」等々、壁を乗り超え、高齢期を楽しみ尽くすための生活習慣を詳細に解説。 人生を最後まで充実させたい女性必読の一冊。

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和田秀樹

一九六〇年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、三十年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。『80歳の壁』『70歳の正解』『マスクを外す日のために』『バカとは何か』『感情バカ』(すべて幻冬舎新書)など著書多数。

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