1. Home
  2. 社会・教養
  3. 武器になる教養30min.by 幻冬舎新書
  4. 日本人が知らない占領期の「3つの闇」…今...

武器になる教養30min.by 幻冬舎新書

2025.03.14 公開 ポスト

日本人が知らない占領期の「3つの闇」…今も続く「対米従属」のルーツがここにある武器になる教養30min.編集部

戦後80年を迎える今年、戦争と平和について考える機運が高まっています。しかし、みなさんは「占領期」のことをどれくらいご存じでしょうか? 1945年から52年まで、アメリカを中心とする連合国軍の占領下に置かれ、敗戦国としての屈辱を味わった日本……。『占領期日本 三つの闇 検閲・公職追放・疑獄』の著者、斉藤勝久さんが、占領期とはどのような時代だったのか、連合国軍によって何が行なわれていたのか、わかりやすく解説します。

*   *   *

占領期とはどのような時代だったのか

──日本は終戦後、7年間、連合国の占領下にありました。一体、どのような時代だったのでしょうか?

日本は戦争に負け、アメリカを中心としたGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)という組織によって占領されました。日本の歴史上、異国に支配されるというのは初めての経験でした。

昭和天皇は終戦の玉音放送で、「耐え難きを耐え、忍び難きを忍び」という言葉を使っています。これから始まる異国の支配に耐え忍んでほしい、と。それくらい苦しい時代でした。

 

──日本が独立国ではない時代があったということですね。

独立国ではないということは、日本政府の決定よりもGHQの決定が優先するということです。GHQの許可がなければ、外交もふくめて自由にできなかった。日本人にとっては、屈辱の時代だったわけです。

 

──GHQはどのような改革を行なったのでしょうか。

GHQが目指したのは、軍国主義の解体と民主化でした。

前者については、連合国側にとって日本軍は、中国に攻め入ったり、アジアの南方に進出したりと、非常に危険な存在でした。そこで、日本から武力を取り上げ、非武装化させること。さらに、戦争を起こした責任者を、戦争犯罪人として裁判にかけ、厳しい処分をくだすことを行ないました。

 

後者については、古い憲法を変えて、新しい憲法を制定しました。たとえば戦前までは、女性は選挙に参加することができませんでした。そこで、女性にも男性と同じ選挙権を与え、立候補もできるようにしました。教育制度も改革し、現在の「6・3・3制」を確立しました。

経済面では、それまで大きな財閥が日本の経済界を牛耳っていました。そこで財閥解体を行ない、一部に権力が集中がしないようにしました。また、農地解放といって、自分の農地を持っていない農家が、ちゃんと自分の農地を持てるようにしました。

GHQはこうした改革を行なうことで、日本を少しずつ変えていくことを狙っていました。

 

──日本はGHQの改革によって平和で民主的な国になったという、明るいイメージを持っている人もいると思います。しかし今回の本では、明るい面ばかりではなかったと指摘されています。具体的に、「3つの闇」とは何なのでしょうか?

1つめは、「検閲」です。日本国憲法には、検閲してはならないとはっきり書かれています。ところが、そのお手本になったアメリカが、ひそかに検閲をしていたんです。しかも、戦前の日本よりもさらに厳しい検閲が行なわれていました。

2つめは、「公職追放」です。公職追放と言うと、軍国主義に協力していた人が追放されたと思っている人も多いでしょう。しかし実際は、GHQが日本を支配するにあたって不都合な人、日本人から見たら明らかに平和主義だと思える人も追放されていました。

3つめは、「疑獄」です。経済復興のためのお金がGHQに流れたり、政府が倒れるような疑獄事件なのにうやむやのまま終わったり、当時はそんなことが続いていました。

 

これらをひと言で表すとしたら、「闇」という言葉になるだろうと考え、『占領期日本 三つの闇』というタイトルにしました。

秘密裏に行なわれていた厳しい検閲

──GHQによる検閲は、具体的にどんなことが行なわれていたのですか?

GHQの組織の1つに、CCD(民間検閲局)という秘密機関がありました。彼らは英語ができる日本人をたくさん集め、みなさんもご存知の東京駅前にある東京中央郵便局を拠点に、大規模な検閲を行なっていました

この本を書くにあたって大変お世話になった、検閲研究の第一人者である山本武利先生の調べによると、終戦の翌月から4年あまりの間に、郵便は約2億通、電報は約1億3600万通が開封され、電話は約80万回が盗聴されていたそうです。

こうした検閲は、すべて秘密裏に行なわれていました。そのため、ほとんどの日本人は、検閲を受けていたことも、検閲のための機関があったことも知りませんでした

 

──新聞やラジオなどのメディアも、検閲されていたそうですね。

当時、新聞は最大のメディアでしたが、広告もふくめ、紙面に載るものはすべて事前にGHQの検閲を受けなければなりませんでした。場合によっては、マッカーサー自身が判断をくだしたこともあったようです。

マッカーサーは当時、アメリカ大統領の候補になるかもしれないと言われていました。そのため、日本から自分の変なうわさを流されては困るということで、メディアに対してものすごく神経を使っていました

GHQによる日本占領はうまく行っている。そう思わせるために、批判的な記事は一切出させないようにしていました。

 

──本の中に出てくる言葉を使えば、まさに「敗戦国の悲哀」ですね。

日本国憲法第21条2項には、「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない」と定められています。新憲法作りを主導したアメリカが、みずから条文に反することをやっていたわけです。

それに対して、日本人は何も言うことができなかった。まさに「耐え難きを耐え、忍び難きを忍び」という時代だったんです。

 

※本記事は、 Amazonオーディブル『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』より、〈【前編】斉藤勝久と語る「『占領期日本 三つの闇 検閲・公職追放・疑獄』から学ぶ過去を知り今を知ること」〉の内容を一部抜粋、再構成したものです。

 

 Amazonオーディブル『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』はこちら

書籍『占領期日本 三つの闇 検閲・公職追放・疑獄』はこちら

{ この記事をシェアする }

武器になる教養30min.by 幻冬舎新書

AIの台頭やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進化で、世界は急速な変化を遂げています。新型コロナ・パンデミックによって、そのスピードはさらに加速しました。生き方・働き方を変えることは、多かれ少なかれ不安を伴うもの。その不安を克服し「変化」を楽しむために、大きな力になってくれるのが「教養」。

『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』は、“変化を生き抜く武器になる、さらに人生を面白くしてくれる多彩な「教養」を、30分で身につけられる”をコンセプトにしたAmazonオーディブルのオリジナルPodcast番組です。

幻冬舎新書新刊の著者をゲストにお招きし、内容をダイジェストでご紹介するとともに、とっておきの執筆秘話や、著者の勉強法・読書法などについてお話しいただきます。

この連載では『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』の中から気になる部分をピックアップ! ダイジェストにしてお届けします。

番組はこちらから『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書

バックナンバー

武器になる教養30min.編集部

AmazonオーディブルのオリジナルPodcast番組『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』を制作する編集部です。

『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』は“変化を生き抜く武器になる、さらに人生を面白くしてくれる多彩な「教養」を、30分で身につけられる”をコンセプトにした番組です。

番組はこちらから『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP