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前回、断捨離の先生と一緒に、趣味と推しの良さみが高じすぎて部屋が狭くなったオタクの部屋を片付ける『オタクの断捨離』という本を出した話をした。
何故そこに私が呼ばれたのか、最後まで解明されることなく終わるので、ミステリ好きにはお勧めできない一作だが、多分オタク、そして片付けられないサイドの人間として呼ばれたのだと思う。
正直私はオタクを名乗るにはおこがましいレベルの活動量と知識しか持ってないのだが「オタクへの偏見を擬人化すると私になる」という意味では確かにオタクと言えなくもない。
だが、オタクと言っていいかは微妙なのに対し「片付けられない」の部分は堂々と代表ヅラができる。
正直、作中に出て来たオタクたちの部屋は私に言わせると児戯に等しく、ダイエット企画の出場者が全員BMI18以下であるような茶番みさえあったが、逆に私レベルをそろえてしまうと、センシティブ判定により出版が困難になってしまう。
しかも私の部屋はオタクだから汚いわけではない、むしろ推しのグッズは皆無であり99%がゴミなのだ。
しかも残りの1%は「私」なので、ほぼ100%ゴミといっていい、むしろこの部屋の掃除工程その(1)が「部屋主を仕留める」であり、それがなされない限りこの部屋が片付くことはない。
どちらかというとコラボ先は断捨離ではなく特殊清掃なのだが、おそらく特殊清掃側から見ると私の方が児戯になってしまう。ふんどしに短し、前張りに長しみたいな存在なのだ。
逆に言えばそういう人間だから推しのグッズ的なものはほぼ持っていないと言える。
作中でも、オタクなら推しの物を集めるだけではなく、大切に扱っているはずであり、粗末に扱うぐらいなら整理しろという話は再三出てくる。
逆に私は、粗末に扱うと分かっているから最初から持たないといえる。
そういうと「達観してますね」と言われることもある。
確かに、そう言いながらろくろを回している部屋が、モノどころか窓もなく、コンクリート打ちっぱなしの部屋にろくろだけがあるという、前衛芸術ならある種の観に達していると思う。
しかし私の部屋にはろくろはないし、あったとしても探し出すのに時を要する状態であった。
これは達観というより諦観、もっと言えば絶望なのだ。
確かに、大切にできないなら最初から手にしない方がいいだろう、だがそれは彼女の手作り料理を前に「どうせウンコになるから食わない」と言って、カロリーメイトのフルーツ味を食い出すようなものだ。
推しの立ち絵アクスタが何故か床に常住坐臥という結果になろうとも、最初は愛でるつもりで購入したというならまだ人生に潤いがある。
オタクでなくても部屋が汚い人間は「どうせ」という感覚をもっていることが多く、発想が極端な場合が多い。
「どうせ片付けてもまた汚れるし、そもそも部屋が汚くても死なない」
これが私含む、多くの不整頓の民が持っている汚部屋極論だが、我ながら何言っても無駄感がすごく、これを聞いた整頓の民の体力ゲージが80%削られて赤くなっているのが見える。
それを言ったらおしまいなことを言っている奴を説得するのは困難である、我々は森で、そちらは床の見える部屋でルンバと暮らすのが一番だ、ヤックノレに乗って会いに行く必要もない、蹄が汚れる。
しかし、昔から汚くても死なないし死ななければOKという思想を持ち、ダンゴムシとか食ってたタイプなら放っといていいのだが、突然宗旨替えをしてしまった人がいるなら少し注意してあげてほしい。
極論はヤケクソとも言える、尻どころかウンコに火がつくレベルで忙しく、疲弊してしまっている時にもなりがちなのだ。
人は疲弊すると、いろんなことがどうでもよくなり、今まで好きだったものに関心がなくなったり、部屋が汚くなったり、風呂に入れなくなるというのはよくある話だ。
今までちゃんとしていた人の身だしなみが急に乱れ、今にもダンゴムシを食い出しそうになっていたら、メンタルの病(ビョウ)や難(ナダ)を疑ってあげてほしい。
そういう意味ではオタクは異変に気付いてもらいやすいタイプとも言える。
アクスタに対し「これの原価知っている」と言い出したら注意信号だ。
例え人から見て汚くても「好きなものに囲まれていたい」という気持ちがある限りはまだ大丈夫なのである。
ちなみに私は、昔からダンゴムシを食ってるタイプなので、心配はいらない。
カレー沢薫の廃人日記 ~オタク沼地獄~
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