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アルパカ通信 幻冬舎部

2025.03.01 公開 ポスト

井上荒野『しずかなパレード』/真下みこと『春はまた来る』-“春の読書スイッチ”を入れてくれる!小説2作アルパカ内田(ブックジャーナリスト)/コグマ部長

幻冬舎営業部 コグマ部長からオススメ返し
真下みこと『春はまた来る

名門大理工学部に通う順子は、大学二年の春、高校の同級生で女子大に通う紗奈と再会する。高校時代は話したこともなかった二人の間に不思議と友情が芽生える。インカレサークルで「高学歴」男子と交流する紗奈が、ある日性被害に遭い――。

一方、こちらはまもなく始まる新学期シーズンにふさわしい作品。

一流大学の理工学部生の順子は2年の春、高校の同級生で女子大に通う紗奈と再会した。高校時代からキラキラした存在でヒエラルキーの「上」にいた紗奈と、勉強は出来たものの地味で「下」だった順子。まったく違うタイプの二人だったが、紗奈が順子の大学のインカレサークルに入ったことがきっかけで、互いの距離が縮まっていく。そんなある日、順子のもとに混乱した様子の紗奈から電話が。サークルの先輩との「宅飲み」の際にレイプされたという。

本作は、紗奈が受けた性被害という重い題材を主軸に進むが、著者の巧みな筆が描くのはその側面ばかりではない。高校時代に順子がされた美醜を物差しにした残酷なランク付け、紗奈のような女子大生を見下す一流大学生と、その一方で高学歴男子をちょろいと笑う女子大生、事件をないものにしようとするサークルの空気……。この物語を構成するそれぞれに昏い連帯があり、その反対側との間に分断がある現実も浮き彫りにしていくのだ。

言うまでもなく、性被害は一生の傷を残す。読者は(男女に関係なく)自分が当事者だったら、と思わずにいられない。いま大注目の著者から、この作品が生まれたことを喜びたい。そして、もう一つ、著者がこのポジティブなタイトルに込めたであろう深い意味を、ぜひ多くの人に感じとってほしい。

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アルパカ通信 幻冬舎部

元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。

幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!

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アルパカ内田 ブックジャーナリスト

内田剛(うちだたけし)。ブックジャーナリスト。約30年の書店勤務を経て2020年2月よりフリーランスに。NPO法人本屋大賞実行委員理事で創立メンバーのひとり。文芸書をメインに各種媒体でのレビュー、学校や図書館でのPOP講習会などを行なっている。これまでに作成したPOPは6000枚以上で著書に『POP王の本!』『全国学校図書館POPコンテスト公式本 オススメ本POPの作り方(全2巻)』あり。無類のアルパカ好き。
Twitter @office_alpaka

コグマ部長

太田和美(おおたかずみ)。幻冬舎営業本部で販売促進を担当。本はミステリからノンフィクションまでノンジャンルで読みまくる。アルパカ内田(内田剛)さんとは同学年。巨人ファン。
Twitter @kogumabuchou

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