ロザンの菅広文さんの書いた『京大芸人』と、シリーズ第2弾の『京大少年』は、累計20万部を突破する大ベストセラーです。
京大卒のインテリ芸人としてクイズ番組などで活躍しているロザンの宇治原史規さんは、独自の合理的な勉強法を編み出し、それを生かして京大合格を果たしました。その方法について、相方の菅広文さんが『京大芸人』で紹介しているのは、ご存知の方も多いでしょう。
そして、この度、シリーズ第3弾が刊行されることになりました。その名も『京大芸人式日本史』。「日本史を学ぶコツは物語のように教科書を読むことだ」という持論を持っている宇治原さん。そんな彼の方法論を生かして、菅さんは「読みやすい日本史の物語」を新たに作ることにしたのです。笑って学べるオリジナリティにあふれた日本史小説。果たして、この作品はどうやって生まれたのでしょうか?
(インタビュアー:ラリー遠田)
――現代史の部分を書いていたときのお話の続きです。“物語として”この本を書いているときに、印象的だったことはありますか?
菅 第二次世界大戦のあたりを書いているときとかは「あかんあかん! 負ける負ける! その感じで行ったら、日本負けるよ!」って思ってましたね(笑)。第一次世界大戦のときとかは、おお、日本すごいな、そういうやり方していくんや、って思ってたんですけど。第二次世界大戦になって、「いやいやいや、なんでそんなことすんの!? 負けるに決まってるやん!」って。
――そうやって気持ちを込めるというのが、「物語として日本史を読む」っていうことなのかもしれないですね。
菅 何となく思ったんですけど、日本史の語句をなかなか覚えられない人がいるのって、最後に日本が負けるからじゃないかな、って。
宇治原 おお~(感心したように)。
菅 普通のドラマでも何でも、結末がハッピーエンドやったら何回も読みたくなるけど、バッドエンドやったらあんまり読みたくないっていうのはあるじゃないですか。それに近いのかなっていうのは思いましたね。そこのところは、僕も書いていてどんどんテンション下がっていきましたから。
今の教科書だと多少違うんでしょうけどね。今の教科書では、戦後に復興していって、負けたけど今はこうなってます、っていうところまで扱っていますからね。僕らが習った頃は、戦後のところがそこまで分厚くなかったと思うんですよ。
宇治原 今は小泉(純一郎)さんぐらいまで教科書に入ってきてるからね。
――物語の後半では、宇治原さんがクイズに答えるというシーンが印象的でした。
菅 これは、我ながら「よう思いついたな」と思いましたね(笑)。宇治原さんが歴代の賢い人とクイズ対決をするっていう。クイズ形式だと語句の説明にもなるし、一石二鳥でした。
――この本の最後に、全体の流れを振り返るまとめがありますよね。
菅 「土地は誰のものですか?」のところですね。
僕もそんなにちゃんと分かっているわけではないですけど、日本史って「土地は誰のものなんですか」っていうことをずーっと言ってるだけなのかな、って思ったんですよ。その1本の軸に気づいてから、書きやすくなりました。
――菅さんはこれまでにも本を書かれていますが、今までの著書とは違って、実際に体験したエピソードではないので、自分で創作する苦労があったのではないでしょうか。
菅 まあ、確かに創作になるところは結構多かったですね。でも、普段から自分でネタも作っているんで、そこの苦労はあんまりなかったです。
でも、「土地は誰のものなんですか」っていう軸については、これがぶれたらちょっと気持ち悪いなあっていうのがあったんで、その軸の中でどう面白くするか、っていうところは考えましたね。他のところがいくら面白く書けるとしても、軸がずれていたらスピンオフみたいになってしまうので。そこは意識しながらやってました。
――菅さん自身は、この本を書くことで、ご自分でも日本史の内容がどんどん頭に入ってくるという感じはありましたか?
菅 ありましたね。めちゃくちゃありました。語句を覚えているかどうかでは自信ないですけど、全体的な流れはスッと頭に入ったかなというのがありますね。
――もともと菅さんは、日本史は得意だったんですか?
菅 結構好きなほうやったんですけど、この本を書くために教科書や参考書などを読み返したら、ああ、そうか、そういうことやったんや、っていうのは結構ありました。
読み返しながら、日本史が覚えにくい要因って、「天皇」なのかな、って思いましたね。日本史では、基本的に天皇に対してどうするかということがずっと書かれているから。それって、日本人にとっては結構触れにくいところじゃないですか。
天皇が実権を握っているのか、天皇を守っているほうが実権を握っているのか、とか。そこも覚えにくい要因なのかな、とは思いましたね。
宇治原 ……これ、すごい話ですよ。さっきの土地の話と今話した天皇の話って、大学の教授が講義でやってもいいような内容ですよ。中学・高校の勉強では、その辺をすっ飛ばしてしまいがちなんですけど。
菅 高校の頃もたぶん、先生はちゃんと教えてくれてたとは思うんです。でも、こっちはつい、戦っているところとか、格好いいほうにばかり目が行ってしまうので。
――宇治原さんは菅さんの今のお話を聞いて、「ようやく日本史の本質をつかんできたな」と思われたんでしょうか?
宇治原 いやいや、そんな偉そうな感想じゃないですけど(笑)。でも、今言ってたことはすごいことですよ。日本がなんで特殊なのかっていうことの根本がそこだと思うんですよね。日本史を深く勉強しようとするとそこにたどり着く。
普通、天下を取ってる人がいて、それに成り代わろうとした場合に、この天下を取ってる人を殺してしまう、っていうのが全世界共通のやり方なんです。でも、日本では、トップにいる天皇を殺したりはせずに、その取り合いをする。そこが日本史の根本なんですよね。
――逆に言うと、そこを理解すると日本史の流れが見えてくる、というか。
宇治原 そうだと思いますよ。
第3回につづく
大阪でもサイン会開催決定!!
ロザン菅広文『京大芸人式日本史』刊行記念 特別インタビュー・集中連載の記事をもっと読む
ロザン菅広文『京大芸人式日本史』刊行記念 特別インタビュー・集中連載
高学歴芸人コンビ・ロザンの菅広文さんが書いた大ベストセラー『京大芸人』には、宇治原さんの独特の勉強法について書かれています。「日本史は、物語のように一気に読めば、絶対に頭に忘れない」というのが、宇治原さんの論。ところが、そんな面白い日本史の本などありません。そこで、菅さんが、笑って学べる、爆笑日本史物語を作りました! さて、この本がどんないきさつで、どんな思いで書かれたのか、発売直前の集中連載です。