
「健康診断結果は気にしない」「毎日の晩酌は欠かさない」「お金はためるより使う」……。ホリスティック医学の第一人者で現役医師の帯津良一先生が実践する、人生100年時代を楽しく健やかに老いるコツとは。新刊『ときめいて大往生』より、一部をお届けします。
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後悔を引きずらない
先日若い知人から「20代や30代のときに、もっとこうしておけばよかったという後悔や反省はありますか?」と聞かれました。
私がその問いを受けて、真っ先に思い浮かんだのは語学の勉強です。
医者になってから、外国へ行く機会が増えました。英語でスピーチするなんてこともわずかながらやっています。ですが、あまり得意ではないので、事前に英語の原稿を用意して、それを見ながらしゃべっています。
そんなときには、もっと語学の勉強をしておけばよかったなと思ったりはします。学生時代、私は空手部だったのですが、稽古が終わると必ずみんなで近くの雀荘へ行って麻雀をしていました。1時間半ぐらいやって、その後はトリスバーへ行って飲んで帰るんです。麻雀で500円勝つと、トリスのハイボールが当時1杯50円でしたから、ちょっとは何か飲まなきゃいけない気がして楽しくやっていました。でも、いざ働き盛りになって外国へ行くことが増えてきたときに、「あぁ、あの遊んでいた時間を語学の勉強にあてりゃよかった」って後悔するんです。
中国医学に興味を抱いて中国へ行き始めたころは、中国語を習おうと思ったこともありました。張り切ってリンガフォン(学習教材カセット)を買ったのですが、もっとやるべき大事なことがあるような気がして、3日でやめてしまいました。
若いころを振り返れば、いくらでも反省や後悔は出てきます。でも、それができなかったというのは、結局自分に向いていなかったということでしょう。その分、好きなことをしてときめきを集めたと思えば、それでよしです。
腹を立てるのをやめてみる
「先生はいつもニコニコしていますね。怒ることはないんですか?」と、よく聞かれます。
まったく腹が立たないわけではありませんが、私はよほどのことがない限り「しょうがない」で済ませることにしてるんです。
失礼なことや不義理なことをされても「しょうがない」で済ませてしまえば腹は立ちません。
例えば、挨拶したのに無視されたとか、いいことをしたのにお礼がないとか、そういうことはまったく気になりません。自分の人生や世の中に影響はないからです。
自分にとって譲れないことを否定されたら抗議してもいいでしょうが、これは譲れないということはそんなにあるものではありません。
だから、「そういうこともあるだろう。しょうがない」で終わりにする。
そうすれば、ストレスもトラブルも最小限に抑えることができます。
ある意味、私は「我関せず」なのかもしれません。
そんな私の資質を言い当てたのが、40代のころに勤めていた都立駒込病院の看護師さんたちです。
私が怒ったり、大声をあげたりしないという理由から、彼女たちは私を「ほとけの帯っちゃん」と呼び始めました。実にありがたい呼び名です。
ところが、3~4年したら私の呼び名が変わりました。
「ほっとけの帯っちゃん」
なんでも気にせず放っておくだけだという意味です。
この「ほっとけ」の度合いは、年を重ねるにつれて高まっているように感じます。その理由はおそらく、何事にも熟成していく過程があるように、人生の中にもほどよいタイミングというものがあることに気付いたからだと思います。
何事にもタイミングがあると思えば、思い通りにいかないことがあってもイライラせず、「今は熟成中なんだ」と気持ちを切り替えることができます。
こうして私は、「ほとけの帯っちゃん」から「ほっとけの帯っちゃん」になったのでした。
ときめいて大往生

ホリスティック医学の第一人者が教えるごきげんに長生きする秘訣とは。新刊『ときめいて大往生』より、試し読み記事をお届けします。