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金融地獄を生き抜け 世界一簡単なお金リテラシーこれだけ

2025.04.10 公開 ポスト

「仕組債」は絶対買うな! 銀行がすすめる高リスク商品の恐怖とは?我妻佳祐

業界が隠したがる「本当に安全なお金の守り方」とは? 金融庁を経て現在は保険・金融コンサルタントとして活躍する我妻佳祐さんが、投資初心者~中級者向けにさまざまな罠から身を守る術を伝授する幻冬舎新書『金融地獄を生き抜け 世界一簡単なお金リテラシーこれだけ』。本書より一部を抜粋してお届けします。

「銀行への預金」は国が保証する金融サービス

なによりもリスクの低い金融サービスは何でしょうか。

それは「銀行」への預金です。信用金庫や信用組合、農協や漁協への貯金も同じと思ってください。ほとんどの人がすでに銀行口座を持っているので、使い方を説明するまでもないでしょう。あまりにも身近なサービスで、誰もが当たり前のように利用しているので、「金融商品」にお金を出しているという意識もないと思います。給料の振り込み、光熱費やクレジットカードの支払いなど、銀行口座はお金を出し入れする財布のようなもの。それらの決済をいちいち現金の手渡しでやっていたら大変なことになりますから、銀行とは便利なものです。

かつては銀行でお金を引き出すためには預金通帳と印鑑いんかんが必要でしたが、いまではキャッシュカードと暗証番号で引き出せますし、最近はスマホで引き出せる銀行も出てきました。ATMがコンビニに置いてある時代です。みなさんにとってもっとも身近な金融サービスが銀行のATMであることは間違いないでしょう。個人的に、ATMは史上もっとも成功したフィンテック(FinTech=金融サービスと情報技術が結びついた革新的なさまざまな動き)だと思っています。

しかしこれも金融商品である以上、ただの財布や金庫とは違います。普通預金でも定期預金でも、それぞれ決まった預金金利があり、時間が経てば利息がつく。前にもお話ししたとおり、のちほど紹介する投資商品とは比べものにならないほど銀行預金の利子が少ないことを知るのが、「金融リテラシー」を高めるための第一歩です。

 

つまり、銀行にはいくらお金を預けても、いまの時代はまったくといっていいほど儲かりません。その代わり、表面上、リスクもないのが銀行預金の特徴です。

もちろん、リスクはゼロではありません。前にもお話ししましたが、銀行そのものが破綻するリスクはあります。

しかしその場合でも、1000万円までの預金(とその利息)は国の制度で保証されているので安心です。ちょっとした富裕層でも、近所のいくつかの銀行や信用金庫などに分けて預ければそれぞれの残高が1000万円を超えないようにすることは難しくないでしょう(それでも安心できないほど預金のある人は、「貯蓄から投資へ」の切り替えをすべきだと思います)。銀行は金融サービスの基本であり、社会や経済を安定させるために欠かせないものなので、政府としても多くの人々に安心して利用してもらう必要があるのです。

銀行がすすめるハイリスクな商品

ただし、リスクがほとんどないのは「銀行預金」であって、「銀行の金融商品」がすべて安全というわけではありません。銀行は預金以外にも、さまざまな金融商品を扱っています。その中にはリスクの高いものもあるので、「銀行がすすめるのだから安全だろう」という思い込みは避けなければいけません。

その典型例が、一般的に「仕組債しくみさい」と呼ばれる投資商品です。非常に複雑な「仕組み」を持つ「債券」なので、そもそも投資初心者はまず理解できないでしょう。

あえて簡単にいうなら「オプションやスワップなどのデリバティブ(金融派生商品)が組み込まれた債券」──となるのですが、これだけではチンプンカンプンで「ちっとも簡単じゃない」と苦笑する人が大半だと思います。詳しく知りたければ「仕組債」でネット検索してみてもいいとは思いますが、見たことも聞いたこともない難しい専門用語が飛び交い、ぱっと見ただけでは意味のよくわからないグラフなども出てくるので、たいていの人は「無理」とあきらめて閉じることになるでしょう。

でも、それでかまいません。きわめてハイリスクな商品ですから、初心者は理解しようとしなくてよいのでスルーしてください。日頃から「オプション」「スワップ」「デリバティブ」といった専門用語にんでいるタイプの人が、あくまでも「趣味」としてやるべきものです。

 

ところが実際には、そのリスクを十分に説明せずに仕組債を販売する銀行や証券会社が少なくありません。そのため、個人だけでなく地方自治体や大学などが大きな損失を出すケースが相次ぎ、社会問題になっています。

それを受けて、金融庁は2010年に監督を強化。仕組債の販売にあたっては、最悪のシナリオを想定した損失額を顧客が理解できるように説明しなければいけない──といった内容の文書を示しています。

念のためにいっておきますが、仕組債を販売すること自体は、法律違反ではありません。問題なのは、あくまでも「きちんと説明せずに販売すること」です。

 

ならばきちんと説明してから売ればよいのですが、いまも仕組債で損失を出した人たちからの苦情はなくなりません。2023年には、証券取引等監視しようけんとりひきとうかんし委員会いいんかいが金融庁に対して、リスクをきちんと説明せずに仕組債を販売した地方銀行や証券会社の行政処分を求めました。「おいしい儲け話」を巧妙にすすめてくるのは、詐欺グループだけではないのです。

いまは銀行も左うちわで経営ができる時代ではないので、高い手数料が取れる仕組債などの商品を売らざるを得ないのかもしれませんが、やはりルールは守ってもらわなければいけません。

最近でも、地銀の名門である銀行ぎんこうでの不適切な販売が問題になりました。聞いたこともない、みるからに怪しい会社なら警戒心も起こるでしょうが、千葉銀行のような社会的信用の高い企業ですら、そのようなリスクの高い商品を紹介してくる可能性があるということです。一瞬たりとも油断はできません。

 

先ほど「リスクの低いものから紹介する」といったばかりなのに、いきなり仕組債という危ない商品の話になってしまいました。戸惑った人もいるでしょうが、投資は、どこにどんな落とし穴があるかわからないので、油断は禁物です。もっともリスクの低い金融商品である預金と、非常にリスクの高い部類の金融商品である仕組債同じ銀行で扱われているのです。

仕組債以外にも、銀行はいろいろな投資商品を扱いますから、とにかく普通預金・定期預金以外は何らかのリスクがあるものと思って、しっかりとした説明を受けましょう(仕組債と同様の性質を持つ「仕組預金」という預金もあるので本当に油断は禁物です)。どんなリスクがあるのかを丁寧に説明しないようなら、そんな銀行は信用してはいけません。

普通預金や定期預金のような「よく知っている銀行のサービス」以外の、銀行が扱う投資商品については、「○○銀行」という看板とは関係のない別のものだと考えましょう。金融トラブルでよくあるケースが「銀行がすすめてくる商品だったので安全なものだと思った」というものです。銀行預金は安心して使えるものだとしても、銀行に気を許してはいけません。

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この続きは幻冬舎新書『金融地獄を生き抜け 世界一簡単なお金リテラシーこれだけ』でお楽しみください。

関連書籍

我妻佳祐『金融地獄を生き抜け 世界一簡単なお金リテラシーこれだけ』

銀行預金はどんどん目減りする、投資はインデックスファンドだけにしろ、生命保険は共済がいちばん、老後対策はNISAとiDeCoで十分…etc. 金融庁のお役人の「本音」がすべて書かれた“真っ当なスキャンダル本” !――橘玲(作家)

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我妻佳祐

マネックスライフセトルメント代表取締役社長。1981年生まれ、山形県米沢市出身。99年、京都大学理学部数学科入学。2006年、京都大学大学院理学研究科修士課程にて生命保険の研究で修士号を取得する。同年、金融庁に入庁。保険、証券、企業会計、銀行等、幅広く金融行政に関わる。14年、京都大学大学院理学研究科博士後期課程を修了し、生命保険の研究で博士号を取得。19年に金融庁を退官。その後、アクセンチュア等のコンサルティング会社勤務を経て、21年に生命保険の買取サービスを提供する株式会社ライフシオンを設立。24年よりマネックスグループ株式会社傘下のマネックスライフセトルメント株式会社にて引き続き生命保険の買取サービスを提供するとともに、光通信グループ保険事業のアドバイザリーなど、保険・金融コンサルタントとしても活動中。

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