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いつもひらめいている人の頭の中

2025.03.26 公開 ポスト

1%のひらめきで99%の努力が無駄に? エジソンの名言の真意と実践法島青志

冴えた営業トーク、魅力的な新商品の企画書、ピンチの際のうまい言い訳……「優秀だな」「頭がいいな」と羨望の眼差しを向けてしまうあの人は、どうしてキラリと光る「ひらめき」を連発することができるのか。「ひらめき」のメカニズムと誰でも実践可能なメソッドを解説する『いつもひらめいている人の頭の中』(幻冬舎新書)より、一部抜粋してお届けします。

*    *    *

日本経済が弱くなったのは「ひらめき」が失われたから?

最近は元気がないと言われていますが、かつては日本も多くの革新的な商品を生み出してきました。

特に1980年代から2000年頃にかけては、数多くの「ひらめき」からたくさんの世界的なヒット商品が生まれた時代だったのです。

今でこそ音楽は、スマートフォンで気軽に楽しむことが当たり前になっていますが、少し前までは応接間のソファに座ってスピーカーで聴く、あるいは部屋のラジカセで聴くのが普通でした。

そんな常識を打ち破ったのが、ソニーの「ウォークマン」です。それまで音楽は家の中で楽しむものだったのに対し、ウォークマンは「いつでも、どこでも音楽を楽しめる」という全く新しい体験を提供しました。

この製品がもたらした体験が、世界中の人々のライフスタイルを大きく変えました。スティーブ・ジョブズもこのウォークマンに深く感銘を受けた一人です。

ジョブズは常々「ソニーには私たちが学ぶべきことがたくさんある」と語っていて、ソニーの製品デザインや技術力から多くの影響を受けたことを公言していました。「iPod」や「iPhone」を生み出したのも、ソニーへの憧れが背景にあったとされています。

ウォークマン以外にも、ソニーが開発したものには「CD」や「ハンディカム」「プレイステーション」、そして「トリニトロンカラーテレビ」などがあります。

自宅で映像や映画を観るのに欠かせない「DVD」も、ソニーが開発したDAT(Digital Audio Tape)を基にした映像のデジタル処理技術から生まれました。

他の会社の例では、任天堂が開発した「ファミリーコンピュータ(ファミコン)」は、現代のビデオゲームやスマホゲームの原点となり、これもまた日本のひらめきが生んだ世界的な成功例です。

環境への配慮が求められる中、電気自動車(EV)の先駆けとなった「ハイブリッドカー」もトヨタが開発して世界中でヒットしました。また今のスマートフォンの原型となる「iモード」もNTTドコモによって生み出され、携帯電話によるインターネット利用が世に広がるきっかけをつくりました。

こうした日本発の革新的な製品は、2000年頃までは次々と誕生していました。しかし、21世紀に入ってからは、日本発の画期的な製品がほとんど見られなくなってしまいました。
日本経済の勢いが衰えた一因には、この「ひらめき」や「革新的なアイデア」が出なくなったのが関係しているのかもしれません。

これからの日本にとって最も必要なのは、かつてのような「ひらめき」を再び取り戻し、日本発のアイデアを生み出すことではないでしょうか。

1%のひらめきがあれば99%の努力は不要

発明家トーマス・エジソンの有名な言葉「1%のひらめきと99%の努力」。

この言葉は、「努力が才能に勝る」という解釈で語られることが多いようです。しかし、エジソンが本当に伝えたかったことは、少し違っていたと言われています。

エジソンが言いたかったのは、「ひらめき」がなければ、その後のどんな努力も成果に結びつかないということです。

逆に言えば1%のひらめきがあれば、残りの99%の努力が無駄になることは避けられるということ。

もちろんエジソン自身、粘り強く努力を重ねた人でした。毎日長時間働き続け、電球のフィラメント材料を見つけるために1万回以上の実験を繰り返したという逸話は、彼がどれほど努力したかという象徴的なエピソードです。でもただ努力しただけではなく、最初の「ひらめき」があったからこそ、その努力が実を結んだのですね。

ひらめきは、ただ待っているだけでは生まれません。しかし少しの工夫や視点の転換で、誰にでも訪れるものです。そのひらめきを得るためには、私たち自身が自分の可能性を閉じ込めないことが大切です。

創造力の限界は誰でも超えることができる

「ひらめき」は、誰にでも可能であると述べました。

具体的に言えば、脳の仕組みを理解することで、ひらめきや創造力を誰もが手に入れることができます。なぜならどちらも、私たちに備わっている基本的な機能だからです。

私たちは今からおよそ40億年前に、原始の海で生まれて以来、創造と進化を続けてきました。この長い進化の過程で、創造という力は私たちの遺伝子に組み込まれています。創造する力やひらめく力は、特別な才能ではなく、むしろ私たちにとって当たり前のものなのです。

創造性やひらめきがどのように生まれるのか、そのメカニズムは100年以上にわたる研究で徐々に明らかになってきています。このメカニズムを理解することで、誰でもひらめきを感じ、創造力を発揮できるようになるでしょう。

あなたが「ひらめきは難しい」とか「自分には限界がある」と思ってしまうのは、あなた自身がその限界をつくり出しているからにほかなりません。

脳には、限られた範囲の情報しか認識しない仕組みがあります。これを「バイアス」と呼びますが、この仕組み自体は私たちが物事に注意を払ったり、危険を回避するためなど自分自身を守るために必要なものです。

しかしこのバイアスによって、脳は無意識に多くの情報を見落としてしまっているのも事実です。
ハーバード大学の附属病院で行われた有名な実験があります。この病院に勤める25名の医師に、肺のCTスキャン画像を見せて、がん細胞があるかどうか診察をしてもらいました。実はその画像には、平均的ながん細胞の約50倍の大きさのゴリラの画像が写っていたのですが、25人のうち21人の医師たちはこのゴリラに気づきませんでした。視線は何度もゴリラの上を通過していたにもかかわらずです。

「肺の中にゴリラがいるはずがない」というバイアスが、見えるものも見えなくしていたのです。

このように、脳は自分が信じる常識の範囲内だけで答えを探そうとして、それ以外のことは見過ごしてしまうことがあります。

もっと身近な、私たち誰もが経験している例として「カクテルパーティ効果」がありますね。

パーティ会場のような、多くの人が話しているにぎやかな場所では、周囲の声は耳に入っているものの、その内容はほとんど意識されません。しかし後ろから誰かに自分の名前を呼ばれた瞬間、はっとして振り返ったという経験があるでしょう。

こういうのも脳が自分にとって重要な情報だけを選び取り、余計な(と脳が判断した)情報は捨て去ってしまう仕組みがあるからです。

このように脳は無意識のうちに「情報の関所」を設けて、必要だと感じたものだけを通過させています。

しかし時として、この関所が創造力やひらめきを妨げることがあります。「肺の中のゴリラ」のような、「世紀の大発見」や「イノベーション」を私たちが実際に目にしていても、「そんなことはありえない」とわざわざ目を閉じてしまうのです。

つまり私たちは自分の脳にリミッターをかけてしまっているのです。

新しいアイデアを思いつくためには、このリミッターを外すことが大切です。そのことが、私たちが創造力の限界を超える第一歩です。

*   *   *

この続きは幻冬舎新書『いつもひらめいている人の頭の中』でお楽しみください。

関連書籍

島青志『いつもひらめいている人の頭の中』

必死に考えると、ひらめかない。 「ひらめく力」は、誰もが平等に持っている基本的な能力だ。 しかし残念ながら、その力に自ら限界を設け、自身の創造性のなさやアイデア不足を嘆く人は多い。 そのリミッターは、ちょっとした意識の転換で簡単に外せて、その結果、誰でも存分にひらめきながら創造力を発揮できるようになる。 鍵となるのは、あなたの感情と美意識だ。 本書ではひらめきのメカニズムを4つのプロセスに分解し、今すぐ実践できるメソッドを、最新の脳科学研究や具体的事例とともに詳述。思考の枠を打ち破る、革新的なひらめき大全。

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いつもひらめいている人の頭の中

必死に考えると、ひらめかない。

「ひらめく力」は、誰もが平等に持っている基本的な能力だ。
しかし残念ながら、その力に自ら限界を設け、自身の創造性のなさやアイデア不足を嘆く人は多い。
そのリミッターは、ちょっとした意識の転換で簡単に外せて、その結果、誰でも存分にひらめきながら創造力を発揮できるようになる。
鍵となるのは、あなたの感情と美意識だ。
本書ではひらめきのメカニズムを4つのプロセスに分解し、今すぐ実践できるメソッドを、最新の脳科学研究や具体的事例とともに詳述。

思考の枠を打ち破る、革新的なひらめき大全『いつもひらめいている人の頭の中』(幻冬舎新書)より一部抜粋。

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島青志

イノベーションデザイナー。アート、デザイン、システム論を基盤に、経営理論や最新の脳科学研究を統合した「イノベーションデザイン」を研究し、企業コンサルティングや社員研修を通じて実践的なアプローチを提供するブルーロジック株式会社代表取締役。リゾートホテル業や会計事務所で接客や経営に携わった後、インターネット業界へ転身。インターネットベンチャーやネット広告会社で新規事業を数多く立ち上げ、2010年に独立。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究所研究員。著書に『熱狂顧客のつくり方』『ソーシャルメディアの達人が教えるリンクトイン仕事革命』。

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