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いつもひらめいている人の頭の中

2025.03.29 公開 ポスト

頑張るほど結果が遠のく? 脳科学でわかった成功者の「力を抜く技術」島青志

冴えた営業トーク、魅力的な新商品の企画書、ピンチの際のうまい言い訳……「優秀だな」「頭がいいな」と羨望の眼差しを向けてしまうあの人は、どうしてキラリと光る「ひらめき」を連発することができるのか。「ひらめき」のメカニズムと誰でも実践可能なメソッドを解説する『いつもひらめいている人の頭の中』(幻冬舎新書)より、一部抜粋してお届けします。

*    *    *

あなたのひらめきを邪魔しているもの

まず初めに、あなたのひらめきを邪魔している習慣や考え方についてお伝えします。

私たち誰もが、ひらめきや創造力がもっとあればいいのに……と願っていますよね。しかしそのために必要となる考え方には、私たちが常識だと思い込んできたことや教わってきたことに相反するようなものが、実はたくさんあります。

例えば、次のようなことです。

「一番になることを目指してはいけない」

「え? 今まで一番になることを目指せ! と教えられてきたんですけど」という声が聞こえてきますね。

「上司や先輩、顧客や現場の意見を採用してはいけない」

「そんなバカな! 逆じゃないか」と叫びたくなった方もいらっしゃるでしょう。

「自分の考えに自信を持ってはいけない」

「言っていることが滅茶苦茶だ! もうこんな本は読むのをやめよう」

いえいえ、ちょっとだけ待ってください。

私たちが今まで教えられてきたことが間違っていたと言うつもりはありません。「一番になること」も「周りの意見を聞く」のも「自分の考えに自信を持つ」ように教えられてきたことにも大切な理由がありました。

その理由とは「生き続けること」です。

私たち人間だけでなく、すべての命あるものの最大の関心事が、個体として「生き続けること」であり、「種族を維持し続けること」です。

「生存本能と種族維持本能の二大本能」とも言いますが、脳はこの2点を最も重視しています。

だから周囲との協調や周りに従うことはとても大事です。

反対に、今まで誰もやったことがないことというのは、危険を伴います。新しいことに挑んで命を落とした人の数は、今まで数え切れないでしょう。

だから、何か新しいことを創造するよりも、現状維持に徹し、強い者には従い、定められた枠組みの中で競争をする。これも個として生き続けるため、私たちの脳が編み出した知恵です。

しかしこれも行き過ぎると、必要なときに変わることができない、という弊害も起こります。

環境に順応しすぎると、その環境が変わったときに必要な対応ができなくなる。

ジュラ紀の温暖な環境に適応しすぎて巨大化した恐竜たちが、隕石の落下による環境変化であっさり滅んでしまったように、「変化できないものは滅びる」のもまた事実です。

私たちは常に現状維持と変化との間で揺れ動いています。

前提が変われば「正しいこと」も変わる。目的に応じて行動も変える。

普段は現状維持のための行動をしていてもいい。

でも「いざ鎌倉!」というときは行動も考え方も柔軟に変える。

Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)に富んだ、先が見えない「VUCA(ブーカ)の時代」にはそういう姿勢が求められます。

ノルマや苦労を自分に課してはいけない

本題に入りましょう。ひらめきや創造性を阻む原因の一つに、「ノルマや苦労を自分に課すこと」があります。例えば過度な残業や厳しい目標設定、常に完璧であろうとするプレッシャーなどが挙げられます。

このことを理解するにもまた、脳の仕組みを知ることが必要でしょう。

脳の働きを一言で説明すると、「インプットされた情報を処理してアウトプットすること」です。脳は情報を取り込み(インプット)、処理し(プロセッシング)、出力する(アウトプット)という流れで働きます。

目や耳から入った情報は、脳内の視覚野や聴覚野を経て、「A10 神経群」という部分を通過します。A10神経群は、インプットされた情報に感情を与える部位の総称です。

例えばA10神経群の一つである「扁桃核」は、目や耳から入る情報に対して、恐怖や不安などの感情が生じるところです。

「側坐核」は快感や報酬を求める行動や、意欲の向上に重要な役割を果たしています。  

「尾状核」は注意力や空間認識、言語理解、物事に感動することとか性的感情、恋愛感情にも関係しています。綺麗な女性を見て興奮している男性の脳を覗くことができたら、この尾状核が活性化しているのが見えるかもしれません。「視床下部」は、自律神経の調整を通じ、食事や性行動、睡眠など、行動への意欲を司ります。

これらのA10神経群は情報のゲートウェイとしての役割を果たしており、前頭葉に入る情報の取捨をそれぞれの部位が判断しているのです。

空港の入国管理や税関のようなものと考えるとわかりやすいかもしれません。入国管理や税関は、犯罪者や違法薬物など、その国にとって好ましくないものを排除する役割を持ちますよね。同様にA10神経群も、脳にとって価値があるかどうかを判断して情報を選別するのです。

その情報選別に関わるのが「感情」です。

感情はインプットされた情報に対して「好き」「嫌い」「快適」「不快」といったラベルを貼る役割を持っています。脳のゲートウェイを通って、その後の「処理」で活用される情報は、自分にとって好ましいもの、価値があると判断されたものになりますが、早い話が「好き」「快適」というラベルが貼られた情報のことです。

一方で、過度な残業や強いプレッシャーのある締め切り、自己犠牲を伴う過剰な努力は、A10神経群によって「嫌い」や「不快」というラベルが貼られます。

これは、脳がそれらを 「排除すべきもの」 と判断しているサインです。不快な情報が蓄積されると、ストレスを引き起こし、場合によってはPTSD(心的外傷後ストレス障害)の原因となることもあります。

そのため、ノルマや苦労を伴ってインプットされた情報は、ひらめきや創造性といったアウトプットにはつながりにくいのです。

ひらめきや創造性のためには、自分にノルマや苦労を課すのではなく、心地よい気持ちで情報を受け入れられる環境をつくることが大切になるのですね。

例えば、リラックスできる音楽を流したり、自分が楽しめる場所で作業をしたりすることは、心地よい環境をつくる手助けになります。楽しいと感じる情報や活動に意識を向けることで、脳はより積極的に情報を取り込み、活用することができるようになるのです。

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この続きは幻冬舎新書『いつもひらめいている人の頭の中』でお楽しみください。

関連書籍

島青志『いつもひらめいている人の頭の中』

必死に考えると、ひらめかない。 「ひらめく力」は、誰もが平等に持っている基本的な能力だ。 しかし残念ながら、その力に自ら限界を設け、自身の創造性のなさやアイデア不足を嘆く人は多い。 そのリミッターは、ちょっとした意識の転換で簡単に外せて、その結果、誰でも存分にひらめきながら創造力を発揮できるようになる。 鍵となるのは、あなたの感情と美意識だ。 本書ではひらめきのメカニズムを4つのプロセスに分解し、今すぐ実践できるメソッドを、最新の脳科学研究や具体的事例とともに詳述。思考の枠を打ち破る、革新的なひらめき大全。

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いつもひらめいている人の頭の中

必死に考えると、ひらめかない。

「ひらめく力」は、誰もが平等に持っている基本的な能力だ。
しかし残念ながら、その力に自ら限界を設け、自身の創造性のなさやアイデア不足を嘆く人は多い。
そのリミッターは、ちょっとした意識の転換で簡単に外せて、その結果、誰でも存分にひらめきながら創造力を発揮できるようになる。
鍵となるのは、あなたの感情と美意識だ。
本書ではひらめきのメカニズムを4つのプロセスに分解し、今すぐ実践できるメソッドを、最新の脳科学研究や具体的事例とともに詳述。

思考の枠を打ち破る、革新的なひらめき大全『いつもひらめいている人の頭の中』(幻冬舎新書)より一部抜粋。

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島青志

イノベーションデザイナー。アート、デザイン、システム論を基盤に、経営理論や最新の脳科学研究を統合した「イノベーションデザイン」を研究し、企業コンサルティングや社員研修を通じて実践的なアプローチを提供するブルーロジック株式会社代表取締役。リゾートホテル業や会計事務所で接客や経営に携わった後、インターネット業界へ転身。インターネットベンチャーやネット広告会社で新規事業を数多く立ち上げ、2010年に独立。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究所研究員。著書に『熱狂顧客のつくり方』『ソーシャルメディアの達人が教えるリンクトイン仕事革命』。

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