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いつもひらめいている人の頭の中

2025.04.02 公開 ポスト

Airbnbもダイソンも実践 成功を生む「人間中心デザイン」思考法島青志

冴えた営業トーク、魅力的な新商品の企画書、ピンチの際のうまい言い訳……「優秀だな」「頭がいいな」と羨望の眼差しを向けてしまうあの人は、どうしてキラリと光る「ひらめき」を連発することができるのか。「ひらめき」のメカニズムと誰でも実践可能なメソッドを解説する『いつもひらめいている人の頭の中』(幻冬舎新書)より、一部抜粋してお届けします。

*    *    *

アルキメデスの「ユーレカ!」の瞬間を解明する

古代ギリシャの賢人、アルキメデスの「ユーレカ!(見つけたぞ!)」のエピソード、皆さんもご存じだと思います。

王様から依頼された、王冠を傷つけることなく純金かどうかを見極めるという難題に対し、答えを見つけた彼は、喜びのあまり裸で街を走り出したと言われています。

「ユーレカ!」の瞬間、アルキメデスの頭の中では、どのようなプロセスが進んでいたのでしょうか。

アルキメデスは王冠が純金であるかどうかを確かめるために、さまざまな方法を考え続けていました。金の性質についても徹底的に調べ、自身の知識を最大限に活用しながら問題に取り組んでいたことでしょう。

この段階では、問題解決に必要な情報をインプットして、解決手段を導こうとしています。しかしそう簡単に良いアイデアは見つかりません。

前にも述べたように、こういうときは一度その問題から離れ、脳をリラックスさせる必要があります。アルキメデスも、公衆浴場へ向かい、ゆったりとお湯に浸かりました。

そして「孵化のステップ」の状態になり、脳は意識的な考えから解放され、インプットされた情報同士が、無意識のうちに組み合わされていたことでしょう。

湯船に浸かっていたアルキメデスは、お湯があふれる様子を見た瞬間、問題の解決策を思いつきました。おそらく世界で最も知られている「ひらめき」の瞬間です。

彼の頭の中でさまざまな知識が一つに結びつき、まるでジグソーパズルの最後のピースがぴったりと嵌まったかのような感覚が彼を襲ったはずです。脳内のあらゆる神経が活性化し、ドーパミンが大量に分泌され、彼は喜びと多幸感に満たされました。

アテネ一の賢人と言われたアルキメデスが、服を着るのも忘れて街の中を裸で駆け出したほどですから、よほど強烈な体験だったのでしょう。

実際ひらめきが訪れる直前、脳はこのひらめきに全集中するため、視界などの神経回路も一瞬閉じられるそうです。それがひらめいた瞬間再び開くのですから、大げさでなく「閃光が走った」のだと考えられます。

良いひらめきを見逃さないデザイン思考

アルキメデスのような天才でなくても、誰にでもこういう瞬間は得られるものです。

ただし、ひらめきがすべて「良いひらめき」とは限りません。ひらめいたアイデアが役に立たないこともありますし、無数のアイデアをただ出すだけでは周囲を混乱させてしまうこともあります。

そこで重要なのが「良いひらめき」をすることです。つまり、状況に合った具体的で価値のあるひらめきを生み出すことが求められます。

このために役立つのが「デザイン思考」です。

デザイン思考は、ただ単にアイデアを生み出すだけでなく、そのアイデアを実現可能で、効果的なものにするプロセスを提供します。

デザイン思考の特徴は、人間中心のアプローチです。新しい商品やサービスの開発というと、既存の商品を分析・分解して、新しい技術や今までなかった機能を加えるというアプローチを思い浮かべるかもしれません。

デザイン思考では、その商品やサービスを使う「人」に注目します。対象となる人々のニーズを深く理解し、それに基づいた解決策を探求することがデザイン思考の基本です。

この本の冒頭で挙げたAirbnbも、イベント開催時のホテル不足で参加者も観光客も困り果てていたという問題があり、その人たちの困りごとにフォーカスしたことが、この世界的企業の出発点でした。

またダイソンの掃除機にもそれが言えます。従来の掃除機は、使っているうちにすぐに目詰まりを起こして吸う力が落ちてしまう。そのたびに紙パックを交換しなければいけない煩わしさ。そういう人の困りごとを解決したのがダイソンの掃除機の価値だと言えます。

インターネットのマッチング技術とか、サイクロン掃除機のテクノロジーとか、そういうものは大事ではない、ということではありません。

しかしどんなに凄い最先端技術であっても「使う人」にとって役立たなければ意味がないですよね。商品やサービスを使うことで、困りごとが解決をする。あるいはより快適で幸せな気分になる。人生がもっと良くなる。そのための商品やサービスの開発アプローチが「人間中心アプローチ」であり、デザイン思考が最も大切にしていることです。

このようにデザイン思考でアプローチすることで、単なる発想に終わらない具体的な解決策を生み出すことができます。

創造的なアイデアを出すだけではなく、それを実行に移し、価値を生み出すことができるのがデザイン思考の強みです。

デザイン思考の具体的な事例

デザイン思考がどのように役立つのかを理解するために、いくつかの具体例を見てみましょう。日本でも有名なシリコンバレーのデザイン会社IDEOは、デザイン思考を活用して多くの革新的な製品を開発してきました。よく知られている一つが、初代マッキントッシュ(マック)のマウスです。シンプルで直感的に使えるマウスのデザインは、パソコン操作の体験を大きく向上させました。

またデザイン思考で開発された製品として、途上国用の保育器の例も知られています。保育器は未熟児で生まれた赤ちゃんの命を救うものです。私自身早産で予定日より1ヶ月ほど早く生まれたので、出産直後は保育器に入れられていたと親から聞いたことがあります。

しかし保育器は高価ですし、そもそも電気のないところでは使えません。

発展途上国では年間数百万人もの赤ちゃんが、低体温症で命を落としていたといいます。そこで開発されたのが安価で電気がないところでも使える保育器です。電気で温める代わりに温水を使う仕組み。簡単に言えば赤ちゃん用の「湯たんぽ」ですね。

このシンプルな製品によって、多くの赤ちゃんの命が救われました。

世界を救うイノベーションは、最先端技術が必要なのではなく、「既存の知識の組み合わせ」による「人間中心デザイン」で実現できることがわかるかと思います。

*   *   *

この続きは幻冬舎新書『いつもひらめいている人の頭の中』でお楽しみください。

関連書籍

島青志『いつもひらめいている人の頭の中』

必死に考えると、ひらめかない。 「ひらめく力」は、誰もが平等に持っている基本的な能力だ。 しかし残念ながら、その力に自ら限界を設け、自身の創造性のなさやアイデア不足を嘆く人は多い。 そのリミッターは、ちょっとした意識の転換で簡単に外せて、その結果、誰でも存分にひらめきながら創造力を発揮できるようになる。 鍵となるのは、あなたの感情と美意識だ。 本書ではひらめきのメカニズムを4つのプロセスに分解し、今すぐ実践できるメソッドを、最新の脳科学研究や具体的事例とともに詳述。思考の枠を打ち破る、革新的なひらめき大全。

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いつもひらめいている人の頭の中

必死に考えると、ひらめかない。

「ひらめく力」は、誰もが平等に持っている基本的な能力だ。
しかし残念ながら、その力に自ら限界を設け、自身の創造性のなさやアイデア不足を嘆く人は多い。
そのリミッターは、ちょっとした意識の転換で簡単に外せて、その結果、誰でも存分にひらめきながら創造力を発揮できるようになる。
鍵となるのは、あなたの感情と美意識だ。
本書ではひらめきのメカニズムを4つのプロセスに分解し、今すぐ実践できるメソッドを、最新の脳科学研究や具体的事例とともに詳述。

思考の枠を打ち破る、革新的なひらめき大全『いつもひらめいている人の頭の中』(幻冬舎新書)より一部抜粋。

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島青志

イノベーションデザイナー。アート、デザイン、システム論を基盤に、経営理論や最新の脳科学研究を統合した「イノベーションデザイン」を研究し、企業コンサルティングや社員研修を通じて実践的なアプローチを提供するブルーロジック株式会社代表取締役。リゾートホテル業や会計事務所で接客や経営に携わった後、インターネット業界へ転身。インターネットベンチャーやネット広告会社で新規事業を数多く立ち上げ、2010年に独立。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究所研究員。著書に『熱狂顧客のつくり方』『ソーシャルメディアの達人が教えるリンクトイン仕事革命』。

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