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私は演劇に沼っている

2025.03.26 公開 ポスト

青春の次は何時代?「青」の次を色で教えてほしい私オム(脚本・演出家)

私は今、6月に上演される舞台「霧」を執筆している。

ご観劇いただいたお客様に、伝わればいいなというメッセージや感じていただきたい想いは決まっていて、クライマックスに描きたいことは決まっている。

そこまでのストーリーを紡いでいる段階である。

大好きな役者たちを想って書く台詞は楽しいし、ワクワクしている。しかし創作というのはもちろん苦しいし、良い感じで書けない自分がイヤになる。

来月のエッセイが更新される頃には、良いじゃん私と思って書き終わっていたい。来月にまだ「霧」を執筆しているなんて書いていたらマズい。それは締め切りを過ぎてしまっているということであり、大好きな役者たちに怒られる。怒られたくないので、頑張る。

今回の舞台「霧」は、ミュージシャンになることが夢だった男の物語である。

その男には周りも納得するほどの夢を諦める理由がたくさんあって、諦めた現在は幸せに生きているのだが、その男は夢を忘れられず……といった話である。

主人公の夢を忘れられない男を、俳優・赤澤燈(あかざわ・ともる)が演じてくれる。

同い年の彼を私は尊敬しており、今後も共にお芝居を創っていけると嬉しいなと思っている。私が40歳になれば彼も40歳。50歳になれば50歳。60歳になれば……と、おじいちゃんと呼ばれるときは、一緒におじいちゃんなのだ。彼とは今世ずっと同じ歳で、同じように世間の移り変わりを見ていく。

私はいま彼と、夢とやらなければならない事がある現実との狭間で生きる男の物語を創れることに興奮している。おじいちゃんと呼ばれる年になった時に、今作の話をあーだこーだ言い合う未来を楽しみに歳を重ねたい。

(執筆中の舞台「霧」の見せられる範囲のところ。
登場人物を書いているページ)

おじいちゃんになった頃、いま私が過ごしている時を青春時代と呼ぶのだろうか。

青いな、と笑って呼びそうである。

10代の学生時代に大人だるいなと言って過ごした青春と、30歳を過ぎて大人の顔をして過ごしている青春。おじいちゃんからしたら、大きな差はないんだろうなと思う。

しかし、いまの私は今を「青春だね。青いね」と言われると少し腹がたつ。様々なものを培って備えてきたつもりなのに、まだまだだなと言われているような感覚を覚える。

自分としては青の次のつもりでいる。しかし、青の次が何色なのかは分かっていない。

一般的に、青春時代の次は何時代というのだろう。

社会人時代?いやいや、学生時代の次なら分かるが、青春の次が社会人というのは納得がいかない。

色で示してくれ。青の次はなんだ。

青の次が何色なのか誰も明言できないのであれば、それはすなわち、まだみんな青いということだと私は考える。みんなまだ青春時代ということにしちゃう。

きっとそうだ。みんな青の次を知らないんだから、みんな青春時代を抜けられていないんだ。

まあでも、だからと言って何だという話である。

みんな青春時代だからなに?

今日も明日も仕事だし、税金は高いし、親の老後は配だし、ジムに通うのはめんどくさい。

青とか次とかどうでもいいから宝くじに当選したい。

今この瞬間の自分へのメリットを考えて必死に生きていくのだ。

青くて浅はかとおじいちゃんに言われるかもしれないけど、みんなそれでいいと思います。

自分の目の前の瞬間を大切に生きましょうね。それが青春なのかな。でも知らんがなって具合に。

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私は演劇に沼っている

脚本家、演出家として活動中の私オム(わたしおむ)。昨年末に行われた「演劇ドラフトグランプリ2023」では、脚本・演出を担当した「こいの壕」が優勝し、いま注目を集めている演劇人の一人である。

21歳で大阪から上京し、ふとしたきっかけで足を踏み入れた演劇の世界にどっぷりハマってしまった私オムが、執筆と舞台稽古漬けの日々を綴る新連載スタート!

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私オム 脚本・演出家

1989年生まれ。大阪府出身。代表作は女優の水野美紀氏との共同演出作品「されど、」や映画製作予定の「忘華~ぼけ~」や朗読劇「探偵ガリレオ」などがある。身近に感じる日常にドラマを生み出し、笑いを挟み込みながら会話劇で展開する作風は各テレビ局関係者からの評価も高い。また、10代の頃から国内や海外を放浪していた経験を持ち、様々な角度から人物を描き、人間の悩みや苦悩葛藤を経ての成長に至る描写を得意とする。近年では原作のある作品の脚本演出のオファーが相次いでいる中、自身のオリジナル作品の上演を定期的に行い、多くの関係者が観劇に訪れている。

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