
幻冬舎営業部 コグマ部長からオススメ返し
賀十つばさ『ドゥリトル先生のブックカフェ』

いる。常連客は不登校の小学生や定年退職
した男性……。自分の居場所が見つからない
彼らに、店主は美味しいコーヒーと焼きたての
スコーンと共に、絵本を処方する。
心が満たされるブックカフェ、本日開店!
一方こちらは、NHK でドラマ化され話題になった『バニラな毎日』の
著者最新刊。贅沢にも書き下ろし文庫として登場だ!
主人公の「ぼく」は作家で、ある日ひょんなことから妻の行動に不審を抱く。仕事に行くと偽って、毎週金曜は別の場所に出かけているようだ。夫が尾行すると、妻が訪ねていたのはあるブックカフェだと判明。後日、一人でそのカフェに客として「潜入」すると、店主は、父がイギリス人、母が日本人の男で、常連客からは「ドリトル先生」と呼ばれ親しまれていた。妻はこの男と? と妄想を膨らませるが、いつしか店主の人間的な魅力や店の空気に引き込まれ、今度は自分が妻に内緒でこの店に通うことに……。
この店の常連は小学生の女の子から老人まで多種多様。それぞれに問題を抱えているが、控えめな店主がそっと差し出す本に皆がいつしか癒されていく。作中に出てくる名作(『ドリトル先生航海記』や『長くつ下のピッピ』など多数)の知られざるエピソードも紹介されていて、読者は複数の物語を同時に楽しめる。妻はこのカフェでなにを? という一見シリアスな謎を、あふれんばかりの優しさと温かさで包みこんだ上質の作品だ。
さあ、次の休みにはこの文庫を手にして、近くのカフェでじっくり楽しんでほしい。
アルパカ通信 幻冬舎部

元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。
幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!
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